本の森で呑んだくれ、活字の海で酔っ払い

2019/12/01(日)12:15

「サクリファイス | 近藤 史恵」(自転車レースの世界の人間ドラマを描いたミステリー小説)

スポーツする小説(9)

​ ​自転車レースの世界の人間ドラマとミステリー。自分も真剣なレースではないけどロードレースやヒルクライムの大会には出ていたことがあるけど、プロの世界はまるで別世界。そんな世界をこんなにもリアルに感じさせる小説だが、著者の近藤さんは直接、自転車レース観たり関わったりしたことがないらしい。すごい想像力と筆力だと思う。​サクリファイス/近藤史恵【1000円以上送料無料】楽天で購入 2018年10月10日読了 2018年秋、東北の山縦走の旅の友に初読みの近藤さん「サクリファイス」を選んだ。予想通り面白かったし読後感も悪くないし選んで正解だったかなと思う。予想以上ではなかったけど・・・と初期の感想で書いていたが、結局は次作の「エデン」も読んでハマってしまい全シリーズを読むことになった。 ○たぶん、みんなにもわかっている。伊庭は、勝つことを期待されて、レースに出場する。だが、ぼくは働くために行くのだと。○「馬鹿を言うな、と。俺たちはひとりで走ってるんじゃないんだぞ・・・非常にアシストを使い捨て、彼らの思いや勝利への夢を喰らいながら、俺たちは走ってるんだ。だから、それを汚す奴は許さない。自らの勝利を汚すことは、アシストたちの犠牲をも汚すことだ、と」●嫌な奴だと思っていた伊庭にだんだん共感できるようになってくる、エースの石尾に対する思いは特に中盤から最終章で大きく変わってくる。チームと個人、役割、責任・・・今考えてみれば、自転車レースの世界の話だけど、一般社会でも共通する話なのだなと気が付いた。だから広く読まれる作品になってるんだなと今更気が付いた。 ○あのとき、一瞬だけ、「行け」と言ってくれなかった石尾さんを恨んだ。○「あのステージ、泣けたぜ。リーダージャージを着た選手が、チームメイトのパンクを待って、アシストするなんて、こっちでもなかなか見られない」○アクシデントは必要だ。そのとき、どういう行動を取るかで、選手の真価が見える。彼はぼくがどう行動するか、サントス・カンタンに見せたのだ。●本当の真相は謎だが、石尾はチームのためを考えて数年前に事故を起こした?そして今回はチームの新星達の将来を守るために石尾は自爆したのだろうか。「サクリファイス」(犠牲)はエースのためにサポートするメンバーのことだと思っていたけど、実はエースがチームやチームのメンバーを守るために犠牲になるという話だったのかなと思える。 ●当然ながら次作「​エデン​」を読んでみたいと思っている。 近藤史恵さんの自転車レースシリーズ5部作(続編はあるのか?) 「サクリファイス」 ​「エデン」​ ​「サヴァイブ」​ ​「キアズマ」​ ​「スティグマータ」​

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