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テーマ:お勧めの本(5355)
カテゴリ:歴史・時代小説
・面白かった!しかも読みやすかった。ファンタジーというよりもやはり時代小説だと考えたい。たまたまTVブラタモリの法隆寺五重塔をテーマにした番組を見たばかりだったこともあって身近に感じた、大阪市天王寺にある五重塔の物語だ
・1400年前に朝鮮から来た3人の寺造工(てらつくるのみこと)が苦心して建立した四天王寺の五重塔はなんと地震で倒壊したことは一度もなかったにも関わらず、兵火雷火によって7度にわたって焼失倒壊した。その度に再建してきたのが寺造工の子孫である魂剛(金剛)組の一族だ。 ・現代と6つの時代、安土桃山時代、平安時代のはじめ、江戸時代の終わり、平安時代のなかば、江戸時代のはじめ、最後に聖徳太子の飛鳥時代。それぞれの時代にタイムスリップして五重塔建設に関わる人間ドラマとともに建設自体を見届ける連作短編集スタイル。 〇「あとお前、掃除の仕方下手くそやぞ」〇「かめへん。綺麗にさせるためだけに、掃除まかせたんやない。箒とチリトリもってたら、職人は余程露骨に盗み見せんかぎり、怒らへん」 ●掃除が下手とは汚れが残ってるということではなくて、うまく技を盗めってことだったのだと知る。職人の世界だなあと思う。現代ではどうなんだろうねと思ってしまう。少なくとも医師研修の世界ではダメな指導の例にされそうだな。(いいか悪いかではなくて・・・) 〇「きっと五重塔の原理は、一千年後もまた謎のままであろう。あるいは、二千年後でもそうかもしれない。この不倒の仏塔の真髄は、誰にも永遠に理解できぬかもしれない」 ・聖徳太子は3人の女性、巫女から日本最初の僧になった女性たちの合成象?彼女らが語った言葉である。五重塔のどの柱をも支えているわけではないのに地震に対して強い構造の鍵となっている心柱は最下層の地面から最上層まで貫いている。その心柱の謎は今でも解明されていないらしい。ってかなりロマンチックだなと思う。 ・著者の木下氏は建築学科卒の経歴を持つ人らしい。だから思い入れもあったのか、だから書けた作品なのかとか考えると、邪推かもしれないけど「なるほど」と思った。 ・表紙にも描かれているが、第4章で語り部となった猫は、聖徳太子の時代以来朝鮮から渡ってきて経典をネズミから守る任務を負ったものとして代々働いているという。わき役としてあちこちに登場していたのに気づけばちょっと面白い。 ・聖徳太子とスカイツリーのストラップなどの軽薄なツールなしでもというか、むしろなしで構成したほうが良かったように思う。著者としては試してみたかったのかなあ・・・ ・とりあえず読みやすくて面白い歴史小説にカテゴライズ、また別の作品も読んでみようと思った。めっちゃ感動するとかのめり込むというわけではないのだが、なんというかロマンがあって味もあるいい小説だったなと思う。
Last updated
2020.05.01 21:57:43
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