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テーマ:お勧めの本(7668)
カテゴリ:エンタメ・ノンフィクション分野の本
・今年はヘビ年である。ヘビ年だからといってヘビを飼うわけでもないし、ヘビを食べる機会が増えるわけでもないのだが、なんとなくヘビに縁を感じてしまう年である。そんなわけで『ヘビ学: 毒・鱗・脱皮・動きの秘密』という本を読んでみたのだが、これがまた驚きの連続だった。
・まず、ヘビの分類について。アオダイショウやヤマカガシといえば、日本ではそこそこ有名なヘビだが、彼らが「ナミヘビ科」に属することを初めて知った。「ナミヘビ」? そんなヘビの名前、聞いたことがない。ナミってなんだ、普通ってことなのか? ナミって言われると、どうもありがたみが薄い。せっかくカッコいいアオダイショウも、ちょっと「普通のヘビです」みたいな扱いになってしまう気がする。 ・次に、ヘビとトカゲの違いについて。普通なら「トカゲには足がある! ヘビにはない!」という単純な説明で済ませてしまいそうだが、どうもそうじゃないらしい。世の中には「足のないトカゲ」なんていう、なんともややこしい生き物がいるのだという。だったらもう、それはヘビなんじゃないのか? と思うが、そういうわけでもないらしい。 じゃあ何が違うのかというと、ヘビには瞼がない。だから目を閉じられない。ヘビは一生、目を開けっぱなしで生きているのだ。寝るときも目を開けたままらしい。そんなの、ものすごく目が乾きそうだが、そこはうまくできていて、透明な膜で守られているという。さらに驚くことに、ヘビには耳がない。鼓膜すらないので、基本的に音は聞こえていないのだ。たしかに、ヘビに向かって「おーい」と呼びかけても無視されるわけである。 ・そして、本書で最も衝撃だったのは、「ヘビはトカゲよりもエライ!」という事実である。普通、進化というのは足が生えて便利になったもの勝ちのように思う。しかし、ヘビの場合は逆だったのだ。トカゲが「足なんかもういらねえや!」と潔く捨てて進化したのがヘビなのだ。つまり、ヘビは不要なものを削ぎ落とした究極の存在なのだ。しかも、ただくねくねしているわけではない。ヘビがスムーズに動けるのは、体の側面の鱗と地面の摩擦をうまく利用しているからで、まるでベルトコンベアのような高度な仕組みを持っているのだという。なんだかヘビがますますカッコよく思えてきた。 ・さらに、ヘビ毒の話も実に興味深かった。ヘビの毒というと、フグのような神経毒で「噛まれたら即死!」みたいなイメージを持っていたのだが、実際は種類によって全然違うらしい。例えば、日本でおなじみのニホンマムシの毒は、筋肉細胞を壊し、最悪の場合、腎不全にまで至るのだという。地味に怖い。そしてヤマカガシの毒は、血栓を過剰に作らせる作用があるため、血が止まりにくくなるのだそうだ。しかもヤマカガシは「噛まれてもそんなに痛くない」ので油断しがちだという。そんな罠みたいな毒があるなんて、もう何も信用できない。 ・そんなこんなで、ヘビという生き物は、実に合理的かつ奥深い存在だった。足を捨て、耳を捨て、まぶたすら捨てて進化した究極の生命体。それがヘビなのだ。トカゲよりもエライのだ。こんなにエライ生き物なのだから、ヘビ年にちょっとくらい敬意を払ってもいいのかもしれない。とはいえ、やっぱり道端で遭遇したら全力で逃げるとは思うのだけれども。
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Last updated
2025.03.25 20:28:52
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