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テーマ:お勧めの本(7688)
カテゴリ:ミステリー小説
荻原浩さんの作品は外れなくいつも「うまいなあ〜」と唸らされる。舞台は“神森”と呼ばれる不思議な森。そこで起きたのは、ASD(自閉スペクトラム症)の少年・真人くんの「神隠し」事件。警察も地域も大騒ぎになる中、物語は真人くんがその森で過ごした“7日間”の謎が主題。
だけど、この物語の主役は彼だけじゃない。真人くんが偶然出会った、大人たちがまたそれぞれに問題を抱えていてむしろ群像劇だ たとえば—— ・美那:彼氏の死体を森に捨てに来た女性。事情はあれどインパクトがすごい。 ・拓馬:原始的生活を売りにするユーチューバー。森の中で理想と現実に苦しむ姿がなんとも…。 ・谷島:病気の娘のためにヤクザの金を持ち逃げして逃げ込んだ父親。泣ける。 ・理実:人生に疲れ、自殺するつもりで森に入った中学教師。思わず応援したくなるキャラ。 そんな彼らが、真人くんとの交流を通じて少しずつ変わっていく様子が、静かで、それでいてどこか可笑しい。森の中で共同生活のような時間を過ごすうち、誰もが「なんでこんなところにいるんだっけ?」という気持ちになっていく。それが面白い。 荻原さん独特の、ちょっととぼけたユーモアが全編に効いていて、テーマは重いはずなのに読後感はふわっと軽やか。一人ひとりのキャラクターがちゃんと生きていて、なんだかんだで「案外みんないい人だったな」と思えてしまう。 笑えて、ちょっと切なくて、でも最後には優しさが残る。荻原浩さんらしさがギュッと詰まった、群像劇の傑作でした。 ご訪問ありがとうございました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2025.04.23 20:42:22
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