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本の森で呑んだくれ、活字の海で酔っ払い

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社会派小説

2020.11.02
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テーマ:お勧めの本(5293)
カテゴリ:社会派小説
・変な小説だった。中盤まで淡々と全然盛り上がることなく1人称で語られる。語っているのはどうも天皇の奥さん、つまり皇后さんだとわかり盛り上がるかと思いきやイマイチ。皇后がインターネットを通じて時の政府関係者にメールを送って「反乱」を起こしていよいよかなと思いきやイマイチ盛り上がらず、ついには天皇自身が「詔勅」として意見を表明するという「反乱」を起こすのだが・・・

・島田雅彦といえば、現実をモチーフにしてリアルな政治的小説を書く、どちらかと言えば左翼的というか国民目線に立った作家だと認識している。この作品もそんな作品だが、主人公が天皇家の皇后である点が画期的な発想、憲法を順守しようとする平和主義者の皇室と「マフィア」と表現される時の政府や官僚たちの構図ってリアルなのかな?と考えてしまった。確かに天皇家の人たちって人はよさそうだけど、そんなに聡明なのか? 俯瞰的に歴史や世界を見えているのか?小説なのにリアルな現実社会と比較してしまう。

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2020.10.30読了

〇ミセス・ネバーとミス・OK
●盗聴器まで仕掛けて監視している女官がミセス・ネバー、次女のジャスミンはミス・OK、彼女の手ほどきで「ダークネット」という場に怒りに満ちた本音を暴露するようになった皇后のハンドルネームが「スノードロップ」

〇不愉快な内奏
・抑止力に関する総理と天皇の対話が妙にリアル(総理は安部さんをモデルにしている感じ)
―その平和は抑止力によってですね、辛うじて保たれているので、日米同盟に依存しなければ、他国の侵略を受けてしまう恐れがあるわけであります。第3国と戦争になった場合は、同盟相手に味方するのは当然の義務でして、日本を守るためには他国との戦争にも参戦しなければならないということを肝に銘じていただきたいものです。(総理大臣)
―そんな戦争によって平和を維持するようなことは肝に銘じられません(皇后さん)
●総理の発言はまったくリアル、本当に皇后さんがこんな発言をしてくれたらいいな、面白いだろうなと思った。

・様々な人に語らせる歴史認識はおそらく著者の歴史認識なのだろうと思う
〇アメリカは国体のような曖昧なものにも、三種の神器のような物品にも興味はなかった。ただ、この国を永遠に自分たちの管理下におき、占領を続けられれば、それでよかった
〇「日露戦争によって、日本はその後の未来を買収されてしまった」という歴史認識・・
●これについては今まで知らなかったので調べてみる必要がありそうだと思った
〇今この国を牛耳っているのは、ホワイトハウスやCIAや「日本の心を守る会」や官邸の後ろ盾を得ている以外に何も取柄にない人々です。

・天皇がついに反乱を起こして書いた「詔勅」より
〇私は厳格に憲法を順守しているが、あなたたちは公然と憲法を憎み、軽視していることは明らかである。憲法を踏みにじる者に憲法改正の発議をする権利はなく、速やかに政権から退場し、最高法規を犯した罪を裁かれるべきである。あなた方は司法を自らの支配下に置いているつもりであるが、それも三権分立の原則に反する。
〇嘘をつくな、史実を語れ
●まさに著者が言いたいことを天皇に語らせたんだと思うが、実際に天皇さんがこんなことを考えていたとしたら世の中捨てたもんじゃないなと思えるな。

・あまり興奮したり盛り上がったりはしなかったけど、面白い作品だったと思う。かなり政治的にリアルな内容なので評価は分かれるのだろうなと思うが、あえて書いた作家島田さんの決意も感じたのだった。






Last updated  2020.11.03 19:45:53
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2020.06.13
テーマ:お勧めの本(5293)
カテゴリ:社会派小説
​​・小杉さんは「残り火」が良かった印象からBOOKOFFで買って長く積読しておいたこの本で2本作目で、何の前情報もなく読みだした。上巻は第二次世界大戦直前から終戦まで庶民の目線で書かれていた。
・ミステリーでもないのにページをめくる手が止まらない社会派小説だと思ったが、やはりミステリー小説でもあったし、新吉と和子、伊吹と道子の大人の純愛小説だったと言ってもいいのかもしれない。

2020.6.13読了


・親から勘当されてまで志した噺家の道だったのに、その実直さゆえに戦争政策に迎合する落語界が受け入れられずに挫折して紆余曲折の末に実家に帰った新吉、貧民窟で生活する父親と弟を捨てて芸者になって自分を育ててくれた訳ありの母親に育てられた大学生の伊吹、その2人の視線から交互に語られ、次第に二人の人生が交錯して合流していく。新吉がかつて心を通じていたが見捨ててしまった娼婦の和子や、東京大空襲の死者を弔う囚人で道子の遺品である万年筆を手にした森田からの視点の章もあり、下巻への興味と期待とともに不安も感じてきたのだった。

・3月9日東京大空襲のシーンが圧巻でとってもリアル!(といっても自分もみたことがないんだが)実際に経験している以上の臨場感とリアルさを感じた。

・小杉さんの作風と自分の相性なのかもしれないが、登場人物それぞれの心理描写などもとてもよく分かって共感できるし、ストーリー自体も無理がなくて自然に受け入れられる感じだった。全体としてもやはりリアルだなと思う。

・ミステリーでもないのにページをめくる手が止まらず上巻は一気読みだった。とは言え、悪人だと思っていた田尾が実は人間的な人だったと分かってきたのに「田尾はなぜ、誰に殺されたのか?」そして「伊吹の兄はなぜ自死したのか?」という謎を残して下巻に続く。やはりミステリーなのだろうか?社会派小説だよね。


2020.6.14読了

​・下巻第4章「遺志」は一転して戦後、新たに登場した弁護士皆瀬幸三郎という人物の視点から始まる。戦後を生きる新吉の視点からと交互に語られるが、伊吹が登場しないことに違和感を持ちながら読み進める。ページをめくる手が止まらず上巻同様一気読みだった。

・第5章「運命の糸」は、さらに時代が変わって平成12年の話。連続放火魔を追う刑事川口の視点から始まり、その容疑者を弁護することになった弁護士康一郎からの視点と交互に語られていき、実は康一郎は皆瀬幸三郎のひ孫にあたることがわかる。

・謎が謎のまま残っているのは、当然わかるだろうというか想像しろよってことなのか?

・敗戦が近いと知っていて、終戦後に備えて自らの利益確保に走った奴らとが戦後にのさばって利益や社会的地位を高めていった。伊吹の兄は事実を知りながら戦争に協力する記事を書いていた自分を許せなくて自死した。

・かなり第2次世界大戦について国際情勢や日本国内の政治情勢などがリアルに描かれているように思う。東京大空襲や沖縄戦、広島や長崎の原爆は避けることもできたはずで、避けられなかった責任は誰も取ってないじゃないかと読めてしまう。著者がそこまで語りたかったのかどうかは分からないが、問題意識は持っているのだろうと想像される。

〇庶民をばかにするんじゃない」
・何でもないようなラストシーンに泣けた。

・ところで「灰の男」というタイトルの意味は何?「灰の男」ってのは伊吹のことだと考えていいのだろうか?兄や道子の死を引きずって燃え尽きるでもなく灰のようになっても生きていた男という意味なのかなあと思う。

・上巻では何気なく登場した万年筆、伊吹が道子とのきずなとして渡した万年筆が小道具として最終的にはとっても重要なアイテムとなったのだった。

・表紙を上下巻合わせてみれば、太陽を背景に手をつないだシルエットだ。背の高い人と小さい人、親子か兄弟か?誰なんだろう?酔っぱらっていて思い出せないのかもしれないが、こんな関係の二人っていたかなあ・・・・(まだまだだなと反省しております)

・また間をおいて読み返してみたい作品だった。






Last updated  2020.06.17 20:35:23
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2020.05.31
テーマ:お勧めの本(5293)
カテゴリ:社会派小説
​​​・新型コロナウイルス感染(COVID-19)パンデミックが宣言され、日本でも緊急事態宣言が発令される中、ウイルス感染小説として読んできたシリーズ4作目。
・新型インフルエンザも疑われる致死性の高い感染症が兵庫県の山奥にある閉鎖された集落で発生した

2020.5.31読了


・青沼集落は道路を封鎖されて地理的に、電話もインターネットも通じなくなって情報的にも孤立させられてしまう。いったい誰が?

〇一番の問題は、何が起きているのか国民、あるいは世界に対して公表していないことだと思う。新型インフルではなく、鳥インフルエンザの人への感染であっても、国際機関への報告は義務だった。
〇「人から人へと簡単にうつったら、それは新型インフルエンザだ」
・ウイルスH5N1が鳥からたまたまヒトに感染した段階ではまだただの鳥インフルエンザだが、ヒトからヒトに感染する変異を起こして初めて新型インフルエンザ=パンデミックを起こす病原体になり得るってことがまず基本的知識として提示される。

​〇「足を延ばして奥まで入ったら、民芸品の材料がようけ手に入ってなあ。一昨日は久しぶりに作業をしよったんや。夕方には西さんのところにも歩いて行けた」​
・鳥インフルエンザに感染して死んだ鴨から手に入れた羽で作った民芸品にはウイルスがたくさん付着していた。それが感染源であったという話。さすが医療小説を得意とする著者なので全体としてはすっきりと科学的に理屈が通っている。

​〇人権問題は残るが、松下は住民のためにも封鎖したほうがいいと力説した​
・結局、恐れていた新型インフルエンザではなかったという結末だが、放置していたら新型インフルエンザになったのかどうかは分からない。人権を無視して村落を封鎖して最後は村人を焼き殺して全滅させようとした感染症の国際的権威松下の行為が正当化されるとは思えない。

・地元に住む看護師の静香と3人の医者(紺野 新島 松下)がそれぞれの立場から、この感染症と戦うストーリー。そして集落内の人間関係も絡んで、ちょっとあり得んだろうという設定やストーリーもありながら全体としてはまとまっていて面白かった。 

〇紺野は笑っていた。まるで愉快な話でもしているように。紺野の運転する車は柵を派手にはね飛ばした。
〇「そのあたりは彼女も気にしていたようだ。車の中には、自分の遺体を取り扱う際には、感染防御をしっかりしろって張り紙を出していたらしい」
〇「それは紺野からお前への伝言でもある。落ち着いたら感染症専門の看護師への道を考えてほしいと彼女は書き残していた。一度地獄を見た人間は、立ち直ったら次のステージに否応なく進む。もとの自分人は戻れない
・自分の中では。特に紺野という破天荒な感染症専門女医が良かった。死んでしまったからこそのストーリーではあるが、何も犬死しなくてももっとかっこよく生き残る別なストーリーも書けたのではないかと思ってしまう。

・仙川環さん、3冊目。いずれも図書館本。読みやすいし構成もしっかりしている社会派小説、特に医療関係の小説として面白いと思う。読んで失敗はないが、何となくもう一つのめり込むまでいかないと言うのが正直な感想かなとも思う。
​​​






Last updated  2020.06.06 15:32:55
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2020.05.18
テーマ:お勧めの本(5293)
カテゴリ:社会派小説
・新コロ感染予防対策で図書館が休館しているのでアマゾンで購入した。パンデミック読書シリーズ編としては「夏の厄災/篠田節子」に続いて2作目。恥ずかしながら小松左京さんの長編はたぶん初読みかなと思う。

​​〇『復活の日』は、インターネットもなく、コピーも普及しておらず、海外渡航もままならない時代に書かれた作品だったのです。(解説より)​​
●新型コロナ感染が全世界に広がってパンデミックになっているこの2020年、50年以上前にSF小説として書かれたこの作品が、「予言の書」(帯に書かれている言葉より)として、改めて広く読まれているらしい。また、あとがきによれば日本の長編SF小説の第1作目という位置づけの作品だそうだ。今、読んでみると空想的なSFというよりも、確かにかなりリアルな予言書的作品だと思える。科学や歴史、経済などについてしっかりした知識や思想をベースにして書かれてこそのリアリズムだと思う。昭和39年といえばワシがまだ5歳の頃に書かれた小説。すごいな!

​〇核ミサイルの時代になって、「惑星的な危機」が現実の問題になった時、われわれはもう一度世界と人間とその歴史に関する一切に問題を「地球という一惑星」の規模で考え直す必要性にせまられていると思う。(初版あとがき)​
●確かにそういう本だった。核問題は2020年の現在でもいまだ解決せず、さらに新型コロナ感染が蔓延している今、そういう目線や広い視野で考え直してみるための一冊かなと思った。


2020.5.14読了

​​
​​
・ところで小説としては、正直ちょっと読みにくかった。センテンスが長すぎて、主語がどれだったっけ?とかこの説明はどこに掛かっているのかな?とか読み返さないと理解でいない。これって何となく英語的なのだろうか?と思ったりもした。さらに科学的なことや哲学的な歴史観が延々と述べられている部分では、それについていけなくなって「まあ、詳しいことどうでもええわ」と斜め読みしたことは告白しておく。
・「たかが風邪」と思われていた未知の感染症で人類が数か月で滅亡するまでが前編の「厄災の年」、南極で生き残った人類が再生に向かって行く後編「復活の日」、その間のつなぎのような「インテルメッツオ」の3部構成。量的には「復活の日」が全体の70%以上を占めている。

・細菌兵器「MM88」というウイルスー実はウイルスではなくて核酸なのだーの設定がリアルで、実際にあり得そうでスゴイ!

〇そのウイルスー正確には「増殖感染する核酸」・・・
〇なんでも、宇宙から採取してきた菌だそうですね。-われわれの方で名づけたMM系列という名も、そこに由来するんですよ。MMとはつまり、“火星の殺人者”という意味です。
〇人体内に入ってしまえば、水から溶解し・・・その患部には、細菌もウイルスも発見されないのです
●既存の細菌やウイルスのDNAを乗っ取って増殖しながら宿主の病原性をパワーアップする病原体は、宇宙から得た病原体を細菌兵器化するための研究で得られたもの、ワクチン製造の困難なMM88なのだという設定がすごい。人間だけでなく動物にも感染する病原体にも寄生する、ニワトリにも感染した。鶏卵を使って作るワクチンが作れなくなってしまった。なるほど、それはあるな!気をつけねば・・・(誰が何に対して???と自分でツッコミをいれつつ)

●その病原体は超低温では活動できないという設定で、世界中の人類が滅亡して南極にいた1万人だけが生き残ってしまい、文字通り人類の復活を模索する物語。

●50年以上前に書かれた作品なのに、宇宙のことや細菌、ウイルスのことなど科学的な知識が半端ない!現実に有りうるように感じてしまうほどリアルだ。

〇それにしても、米ソで発射された核ミサイルの70パーセントが中性子爆弾だったとは、なんと奇妙な皮肉だろう!-中性子爆弾は、“破壊をともなわず、ただ人命だけを殺傷する核兵器”として、非人道的兵器の極致といわれたものだ。
〇本来人類を死と疫病から救うために生まれてきた医学が三十五億の人類を滅亡させ、そのあと、人類を滅亡さすだけの目的でつくりあげられた核ミサイルが、皮肉にも人類を救ったということになるからだ。
・ARS(自動仕返しシステム?)は悪魔の玉転がし。アメリカは致命的な攻撃を受けた時にソ連(ロシア)に向けて自動的に核ミサイルを発射するスイッチを押していた。ソ連でも同じようなシステムが作動していた。大地震が起こってARSが発動されてしまったが・・・・なんとその中性子こそが病原体を無力化する力を持っているのだった。

・時節柄か、復活の日パートよりも「厄災の年」が中心の感想文になった。DVDで観た映画版はむしろ「復活の日」がメインだったような印象。改めて感想を記したいと思う。






Last updated  2020.05.21 19:53:38
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2020.04.05
テーマ:お勧めの本(5293)
カテゴリ:社会派小説
・1963年、東京オリンピック前年の「よしのぶちゃん誘拐事件」をモチーフとしたクライムノベル?というかヒューマンドラマ。暗くて重い!(しかもぶ厚い)けど面白くて一日で一気読みだった。新型コロナで自宅にこもる土日。こんな重い小説に熱中して1日過ごすのも幸せなのだろう。映画もいいがやっぱ紙の本だなと思う。どっちにしてもどうせ忘れてしまうのだが、映画と紙の小説とでは長期記憶としてずっと残るイメージの量や質が違うように思う。

・著者の奥田さんとワシはちょうど同い年、「よしのぶちゃん誘拐事件」という事件があったことは鮮明に覚えている。何だか暗いイメージがあるもののどんな事件だったのか詳細は全く覚えていない。東京オリンピックも覚えてはいるが、もうかなり記憶は怪しい。

2020.4.5読了


・犯人である宇野寛治、事件を追う若い刑事の落合正雄、山谷ドヤ旅館の娘である町井キミ子、それぞれ3人の視点から物語が語られる。

・礼文島の漁師、宇野寛治は幼い頃に継父から当たり屋をやらされた後遺症で脳に障害を持ち「莫迦」と呼ばれていた。空き巣で前科一犯があり、地元にいられなくなって空き巣をしながら憧れの東京へ出ていく。東京で空き巣に入った家で事件に巻き込まれて強盗殺人事件の容疑者になってしまう。

・強盗殺人事件を追う警視庁捜査一課の下っ端刑事の落合は、縦割り組織の意地の張り合いなどに翻弄されながらも事件の真相に迫っていくが、そこで誘拐事件が勃発する。

・町井キミ子は、母親が女将を務める山谷のドヤにある旅館を手伝っている。ヤクザだった父親が死んでから家族で日本に帰化した在日朝鮮人。利発で地域からの信望が厚いだけでなく、学生運動の「連合」や地回りの刑事ともうまく付き合っている。弟は弱小な組に所属するチンピラで、人の好さから宇野寛治とも関係している。

〇「大場さんにはわからねえよ。悪さっていうのは繋がっているんだ。おれが盗みを働くのは、おれだけのせいじゃねえ。おれを作ったのは、オガやオドだべ」
「おれは、何で自分が生きているのか、今までわからなかった。誰からも相手にされねえし、やりてえこともねえし、何でこの世にいるのかわからなかった」
「・・・じゃあ、やりてえことがひとつ見つかって、何かほっとした」
「生まれてこなかった方がいい人間もいる。おれがそうだべ」
・宇野寛治を救う物語だったのか?しかし彼は、誘拐した子供を、付き合っていた女性を殺した。やりたいこととは父親を殺すことだったが未然に止められた。

・時代背景としてオリンピックだけでなく、電話の普及、電話が普及したことによって誘拐事件も普及したらしい。また自動車の普及によって自由な移動が可能になった。とくにTVの普及も大きな変化をもたらしたようだ。誘拐事件を報道することで被害者が危険にさらされないように「報道協定」というのができたのもこの頃らしい。報道やワイドショーでの被害者のプライバシーや人権問題はまだあまり考慮されてない時代だった。

・あえてその時代を選んでの作品だと思う。そしてその目論見は成功しているなとも思った。人間描写というか心理描写も深い。今更ながら奥田英朗さんはやはり只者ではないなと再認識したのだった。






Last updated  2020.04.12 17:56:52
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2020.04.03
カテゴリ:社会派小説
・新聞の書評で興味を持ったのがきっかけだったように記憶している初読みの作家さんを図書館本で。

・全体を通してドロドロしてなくて案外さっぱりした感じで書かれているのが良くもあり、いくぶん物足りなく感じたりもする。だからといって湊かなえ風のドロドロになるとちょっと違うなと思う。


2020.4.2読了


・美しい自然と美味しい天然水の井戸水を求めて東京から八ヶ岳山麓のログハウスに移住した秋津夫妻と一人息子の3人家族。天然水を利用して「森のレストラン」を営んでいた。ところがある日、水の色が変になってそのうち全くでなくなってしまった。「天然水」として売るために地下水を大量に汲み上げ始めた大企業が関わる「水」にまつわるトラブルに巻き込まれたことから、選挙にも関わることになる。地元住民との軋轢、自分たちの味方だと思って応援していた新人市長候補も実は味方ではなかった・・・みたいなストーリーだ。なので途中からミステリーとしてはほぼ予想できてしまうので、人間ドラマや社会派小説と考えたほうがいいかなと思う。
・水道法や林業の法律改正の問題点をしっかり勉強しているなと感じたのでなおさらちょっと物足りないのかもしれない。

・応援している市長候補が実は味方ではなかったとかのストーリーは何となく読めてしまっていたが、結局落選した市長候補が主人公を訪ねてきた時の人間的なやりとりも良かったし、読み終わっての後味が良いのでとっても救われた。エピローグでは、企業の天然水くみ上げ制限で井戸水が復活したのも良かったが(それはそれで、初めっからそうしろよ!と突っ込みたくはなったが)、最初の一滴が湧き出る源流まで皆で分け入って美味しい水を飲んだラストが良かった。

・著者はワシとほぼ同い年で同じ中国地方出身だとのこと。南アルプス山麓に住んでいて山に関係する本も書いているようなので読んでみようかなと思う。






Last updated  2020.04.04 10:23:09
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2020.01.06
テーマ:お勧めの本(5293)
カテゴリ:社会派小説
・直木賞受賞、戦後の沖縄が舞台になっている話らしいということで興味を持って予約した図書館本。毎度のことながら散々待った挙句にこのタイミングですか?ってときに順番が回ってくるのだけど、今年は「宝島」読書で年越しするハメになった。

・フィクションではあるのだけど、沖縄について無知だったことを反省させられる作品だった。ワシは戦後生まれの日本人で、沖縄返還の時は小学生だった。沖縄の基地にまつわる事件のことや辺野古の問題にまつわる政治的動き、沖縄の人たちの気持ちと内地の人たちの感覚(政治家だけでなく一般国民も含めて)のズレみたいなものに今まであまり気が付かずにいたことを反省させられた。

コザ暴動
小学校米軍機墜落事故

・そうはいっても、小難しい政治の話や社会運動の話はストーリーの一部ではあるが、それを理解しなくてももちろん十分楽しめる。B級ヤクザ映画っぽいと言えばそうなんだけど・・・

・ところで著者の真藤順丈さんは東京生まれと書いてあるが、なぜこの作品を書くに至ったのか、沖縄の言葉や文化、歴史に詳しいのは取材しただけではなくて何か理由があるのではないかとか考えてしまう。

著者インタビューは​こちら​(ぜひ読んでね!)


2020.1.1読了


・終戦直後、沖縄の米軍基地から盗みを働く「戦果アギヤー」だったヒーローのオンちゃんが消息不明となる。弟のレイ、彼女のヤマコ、仲間のグスクの3人がオンちゃんの消息を負いながらも別々な人生を歩みながら沖縄の歴史の中で絡むストーリーは飽きさせない、次々とページをめくる手が止まらずに年を越してしまった。

・「予定にない戦果」とは?逃げた米軍兵士が沖縄の女性に孕ませた赤ん坊の存在が米軍にとってそんなに「奪われちゃならないもの」極秘の重要機密だったというのはちょっと解せないというか弱い感じかなとも思うけどまあ良しとしよう。

・主人公3人の他ではなんとウタの存在がめっちゃ大きかったのだ。というか最後になってそれが分かるのだが、だからちょっと強引だった「予定にない戦果」の種明かしにも納得するのだ。

・オンちゃんは確かにゴザの基地から逃げ出していた。逆境を乗り越えて沖縄に帰ってきていたけど、見つけた時にはガマの中で骸骨になっていた。いい人だった 優しくて強い人だった。オンちゃんに救われたウタも悩みながら一生懸命生きていた。悲しい結末ではあるけど心温まる話だった。やっぱりB級ヤクザ映画とは全然違うなと、結末まで読んでわかるのだった。

・スピード感、沖縄の言葉っていうだけでなくて、何だか人をおちょくったような軽い言い回しの地の文(「カフー」の連発とかいろいろ・・・)が独特だと思ったけど、これもウチナー魂なんだろうか?(答えは保留)

・もう1回読みなおすのはちょっと・・・だけどということでAudibleで聞き直しているところ。長かったが、確かに壮大な物語だったなと思う。全部聞き終わればまた感想も変わったり深くなったりするのかもしれない。

〇そもそも教養があって、法や人権を重んじられる人間は兵士に向いてない。素朴な田舎者をためらいなく敵を殺せる機械に変えるのが軍隊というところだから。世界のどの戦場でも最前線に送り込まれる海兵隊員は、そのあたりをみっちりと叩きこまれる。
●米民政府のアーヴィンがグスクを諜報員に誘うときに語った言葉だけど、現実なんだろうなと思う。今現在でも同じような形で現在進行形で現実なんだろうと思う。アメリカーはいつも戦争をしていないと気がすまない国だってのも同様に現実だと思った。






Last updated  2020.04.04 10:17:24
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2019.11.26
カテゴリ:社会派小説
●原田マハさんは「キネマの神様に次いで2作目。彼女の第2の故郷が岡山でワシの第1の故郷岡山と同じだと知って親近感もわいてきたところで、どこか(すでに忘れてしまった)で紹介されていた本書に興味を持っての図書館本。

​●この表紙の人物画はたぶん作中でタイラが描いた主人公エドの肖像画だろうと思う。​

●終戦直後の沖縄を語る小説。語るのは沖縄の基地に赴任してきた若い精神科医エドの視点から。12歳から始めた油絵を戦争で中断していたエドは、沖縄で偶然たどり着いた「ニシムイ・アート・ビレッジ」のタイラをはじめとする芸術家たちと出会うことによって「友情」を感じ、「芸術」を感じて楽しむことを思い出す。アメリカ人と沖縄人、葛藤はあるけど芸術は垣根を超える(って使い古された言葉なので使いたくないけど、沖縄の人たちに敬意と尊敬の念を感じるのを表す言葉がほかに見つからなかったのでスミマセン)。

〇「エド。この絵を、連れてってくれ。あんたと一緒に。」
〇私は、タイラのいや、ニシムイの芸術家たちの中でそっと息づいていた自尊心を、傷つけたのだ。
〇アメリカのせいか、ヤマトのせいか、わからない。けれど、皆、殺されたのだ。戦争という名の、人間が生み出した生き地獄に巻き込まれて。
〇大切な痛みなんだ。しばらくは刺さったままの、青春の棘さ。・・・なんで格好つけすぎかな?(アラン)
〇まぶたの裏に焼き付いた光の棘を、その残像を、もうしばらくのあいだ、追いかけていたかった。
●島を離れる船から見えたニシムイの仲間たちが発しているんだろう光の反射が棘のようになってエドの心に突き刺さって今でも抜けないということがタイトルの意味だったのかと思う。

​●淡々と描かれた沖縄の話、戦争の話。その時代の中、歴史の中の赤裸々人々のリアルな生活や感情、芸術や友情・・・面白かった(熱中してまたほかの作品を読みまくろうとか言う感じじゃないけど、ほかの作品も読めば面白いだろうなと楽しみな感じ)​






Last updated  2020.04.04 10:18:33
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2019.11.21
カテゴリ:社会派小説
東日本大震災で被害にあった遠間を舞台にして、小学校の生徒たちと応援で臨時教師となって赴任した「まいど先生」こと阪神淡路大震災で妻と娘を失った経験を持つ小野寺や地元の人たちの連作短編集は、1年目の「​そして、星の輝く夜がくる​」に続く、赴任2年目の続編である。



前作と通してテーマは同じ、子供たちは強い、自分たちで乗り越えて成長していく力を本来持っている、大人たちはそれを邪魔せずに手助けするだけでよい、みたいなことではないかと思う。あと、子供たちに正直でというか真っすぐであれというか・・・

PTSD、亡くなった人よりも残された人たちの心の傷が痛ましいと思う、これも大きなテーマだろう。復興と防災と環境保護、住民本位で進まない政治も批判されていた。その通りだと思った。

真山仁さんはこの東日本大震災シリーズの2作しか読んだことがない。ハゲタカシリーズが売りの作家らしいけどそっちは守備範囲でないし読んだことがない。東北出身でもないし、なんでこんな全然違うジャンルの小説を書く気になったのだろうか?考えるに、たぶん阪神淡路大震災を経験した関西出身の作家、もっというなら日本の作家として自らのアイデンティティーのために書かずにいられなかったのではないかと想像する。というかそうであってほしいと思う。






Last updated  2020.04.04 10:18:59
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2019.10.31
カテゴリ:社会派小説
​​​東日本大震災を題材にしたこの小説を公表するにあたってはすごく勇気が必要だったのではないかと推察される。あるいは小説家として止むにやまれず書くことになったのか?震災を題材にして利用しようとしているとは思えないし彼ら小説家たちの純粋な真心を信じたいと思う。
金八先生やもっと昔の青春シリーズみたいな甘い面もあって、生徒たちを信頼してその成長を信じるというパターンにはそんなにうまくいくかとは思いつつも感動してしまったりする。
いま改めてこれは大人のおとぎ話だったのではないかと思った。


​​​「わがんね新聞」:阪神大震災で奥さんと娘さんを亡くした小野寺先生が東日本大震災直後、東北の小学校に応援の教師として、「まいど先生」として活躍。行儀良すぎる子供たちの気持ちを開放するための壁新聞を作る話。ちょっと泣ける。

「“ゲンパツ”が来た!」:東京電力職員の家族と地元住民の関係をというデリケートな問題を題材にして友情を語る話。校長先生のいい味がだんだんと出てきだす。

「さくら」:先生と生徒のいい話が校長の死のいきさつのエピソードで深くなってる

「小さな親切、大きな・・・」:ありえそうな地元の人たちとボランティアの人たちとの軋轢を題材に、小野寺先生とかつての教え子とのすれ違った気持ちが絡んで余韻を残す

「忘れないで」:東北の被害を忘れて風化させてほしくないという気持ちもあるだろうが、忘れてしまいたい、思い出したくないという気持ちの人もいるだろう

「忘れないで」は小野寺とかつての教え子である相原さつきとの関係にも絡む言葉だったのだ

「てんでんこ」:えっ二宮金次郎の像は教育委員会的にはアウトなの??うまくいき過ぎのハッピーエンドだけど許そう。

やはり大人のおとぎ話かな?と思ったりした。

​関連書籍​
​​「被災者に寄りそう医療 震災最前線の絆/稲光宏子」
東日本大震災に関する本は何冊か読んだけど、私が勤務する診療所が所属する全日本民医連のドキュメントはとりあえず医療介護関係者にはお勧めかなと思うので紹介しておく​






Last updated  2020.04.04 10:19:29
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