「本人に訊く〈1〉よろしく懐旧篇 | 椎名 誠, 目黒 考二」(わが青春のシーナマコトを振り返って整理する対談集)
「本の雑誌社」では一緒に仕事をしていたし「東ケト会」メンバーでもあった盟友の評論家の目黒さんが、椎名誠の全作品を対談で振り返るという企画を本にしたもの。この(壱)ではデビューしてから77作品までが取り上げられているのだが、サクサク読めて面白かった!本人に訊く(1) よろしく懐旧篇 [ 椎名誠 ]楽天で購入2020.1.25読了・「さらば国分寺書店のオババ」でデビューしたときワシは大学生で「変な作家が出てきたな」程度に存在は知っていたけど読んでなかったのだが、自分が社会人になってから読書にハマったきっかけが椎名さんだったと思う。椎名誠の本は手元にあるのを数えてみたら30冊くらい、その後は図書館で借りているので4-50冊くらい読んでるのかな?と思う。・「怪しい探検隊」シリーズ、とにかくカッコよかったし何より笑えた。それ以来、椎名さんの大ファンになってしまい「東ケト(東日本何でもケトばす会)」に触発されて作ったのがワシらの「名古屋HOT隊(変なおじさん登山隊)」なのだ。ところでこの「怪しい探検隊」シリーズは事実=ノンフィクションだと思っていたのに、フィクションも混ぜた私小説だったんですね!?これがこの本を読んで一番ショックだったことかもしれないが、30年以上たってから種明かしされて「そりゃそうかもしれないな」と今更納得もしている。そんなことでシーナマコト愛が失われてしまったりすることはないのだ。・椎名誠の本は「読んだことがあってまた読み返したいなというほど気に入っている本」「読んだことはあるんだけどもういいやと思う本」「読んだことがあるかどうか記憶があいまいな本」「読んだことはないけど読んでみたい本」「読んだことないしあんまり読みたいとも思わない本」の5種類に分類できることが分かった。読んだことがなくて読んでみたいと思った本は、「パタゴニア」「水域」「ひるめしのもんだい」「喰寝呑泄(くうねるのむだす)」だ。・目黒さんが全ての本を熟読しなおして付箋をつけまくり、事前にポイントをまとめて椎名さんに送って準備して対談に臨んだのに対して、本人は本を読み返すこともなく漫然と対談に望んでいるのが「らしいな」と思えた。目黒さんの歯に衣着せぬ感想も面白かったし、それを普通に受け入れる椎名さんにも好感がもてて面白い対談になっていた。こんなに遠慮のない対談って普通はないよな!?と思う。・シーナマコト愛、椎名誠への片思いを振り返って整理するのにちょうどいい感じの本だった。・そうそう、これだけは書いておかねばなるまい。というのは、「武装島田倉庫」「アドバード」など椎名さんが書いたSF作品はあまり好きではないということ。読みにくくて意味不明で気分が落ち着かないので苦手だ。本人も目黒さんも気に入っているみたいだけど残念ながら苦手だった。・あと、椎名誠と言えば乱暴者の青年時代を過ごした後、社会人になって出版関係の仕事をするようになってから突然に勢いで本を書いてみたら売れ出した、みたいに考えていたけど、特別収録されていた高校時代に書かれた作品「白い手」「赤い斑点のまむしの話」「突起」を読むとかなり完成度が高くて才能というか素質があったんだなと思った。まあ当然か!・こんなサイトがある→椎名誠「旅する文学館」 ここにアクセスすればこの本の内容は全て閲覧できるし、まだ読んでない(弐)の内容も閲覧できる。やっぱ紙の本がいいよねとも思うが、(弐)は図書館に蔵書がないので悩むところだが、この際(壱)(弐)まとめて購入して手元に置いておきたい衝動に駆られている。 この「旅する文学館」というタイトルが、今読んでいる「夢見る帝国図書館」(中島京子)とネーミングがちょっと似ていて驚いた。(当然なんの関係もない)・あと、椎名誠が「タイトル名人」であるという評価されていたが、も確かに言えるな、独特の言い回しも癖になるけど確かに、思わずタイトルで読みたくなってしまうんだよなと改めて気づかされた。