Noelの花見川・幕張日記
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八月の北海道は、光が近い。 空は高いのに、そこから降りてくる青さは手を伸ばせば届きそうで、白い雲の影が畑の上をゆっくりと渡っていく。風は熱を含んでいるが、本州の夏のように肌へまとわりつくことはない。どこかに涼しさを隠したまま、広い大地を吹き抜けていく風だった。 幸福駅に着いたのは、昼を少し過ぎたころだった。 駅舎は、役目を終えたあともなお、駅でありつづけている。板張りの壁には歳月の色が染み込み、文字は風雨に削られながら、訪れる人たちを迎えている。かつて列車が発着したホームには列車の音はしない。その代わり、草の葉が触れ合う音と、遠くの道路を走る車の音が、途切れ途切れに聞こえてくる。 幸福という名を、私は少し眩しく思った。 あまりにまっすぐな言葉だからだ。人はふつう、幸福を口にするとき、どこかでそれを疑っている。手に入れたとたん失うのではないか、そう思いながら、幸福というものを両手で囲う。けれど、この駅の名は、疑うことなくそこに立っている。古びた木の駅舎も、赤く錆びた線路も、夏草に埋もれかけた枕木も、みな同じようにその名を支えていた。 幸福を記念する写真は、幸福そのものではない。 それでも人は写真を撮る。確かにここに来たことを、確かに誰かと並んでいたことを、あとから思い出せるようにするために。記憶は時間とともに姿を変えるが、写真の中の光だけは、撮られた瞬間のまま残る。だから人は、幸福の前でシャッターを切るのかもしれない。 幸福駅という名前は、未来に向けてつけられた名前だったのだろう。 まだ見えない場所へ行くために、まだ知らない誰かと出会うために、列車はこの駅を出ていった。幸福とは、到着した場所の名前ではなく、向かっていく方向のことだ。 帰る前に、もう一度、駅名を見た。 (文:Manusによる) 帯広 幸福駅と幸福交通公園(写真1+Google) 帯広 幸福駅と幸福交通公園(写真2+Google) 帯広 幸福駅と幸福交通公園(写真2+Artguru) 帯広 幸福駅と幸福交通公園(写真3+Google) 帯広 幸福駅と幸福交通公園(写真4+Google) 帯広 幸福駅と幸福交通公園(写真5+Google) 帯広 幸福駅と幸福交通公園(写真6+Google) 帯広 幸福駅と幸福交通公園(写真1〜6) コラージュ
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