千葉県立幕張総合高等学校 総合学科校舎
幕張総合高等学校は校舎と学科が2つある。総合学科校舎に総合学科、看護科校舎に看護科だ。総合学科校舎は幕張ベイパークの側にある。校舎の設計者は、千葉出身の榎本 雅夫(榎本建築設計事務所)。〈この建築の楽しさは、生徒たちの賑やかに行き交う姿が棟ごとの多様な空間とダイナミックな構造と絡み合って一体的に映し出されるときの、動きと変化に富んだ生活風景にある。その都市の界隈性に通じる表情は、境界を曖昧にし、互いを取り込んで存在するような都市と建築の関係を意識したものである。回遊型プランの中央に位置するプラザは、人・学校・都市を結びつける接点として、その一辺を都市に向かって大きく開いている〉(榎本)1996年の千葉県建築文化賞を受賞している。以下に、そのときのの講評文を引用する。〈幕張総合高校は、平成8年4月、幕張地区の3つの高校を統合して開校した。この高校の特色は、生徒の個性をできるだけ伸ばすため、多くの科目の中から自由に受講科目を選択できる総合選択制を採用している点にある。生徒数2,200人、県下有数の大規模校でもある。幕張新都心の東部、文教地区の一画を占めるキャンバスは、斬新な教育理念に応え、多彩な機能を意欲的なデザインにまとめている点、また街並み景観の形成に貢献している点が評価された。建物群は、管理・学習交流棟と体育館、教室棟、芸術棟の3つのグループで構成され、それらが三角形の配置軸に沿って中央の広場を囲んでいる。個々の建物は、逆シリンダー形の吊り屋根をもつ体育館、7層吹き抜けのアトリウムをもつ教室棟など、機能に応じた 多様な形態をとっている。一方、配置軸はガラス張りの廊下によって視覚化され、多様な建物群にまとまりを与えるとともに、3階レベルで施設全体を結んでいる。敷地の周囲には門や塀がなく、管理・学習交流棟と 芸術棟を結ぶブリッジが校門の役目を果たしている。 街路からは広場を見通すことができ、大きなガラス面や4色のポイントカラーを効果的に用いた建物群と、 休憩時間にガラス張りの廊下を行き交う生徒の姿が、街並みに生き生きした彩りを添えている。街にむかって開かれた好感のもてる景観である。難を言えば、アトリウムに浮かぶコンピュータドームなど、ところどころに遊園地的な仕掛けの過剰が目につく。複合的な機能の要求にそれぞれ固有の形態を与えるデザインは、必ずしもすっきり収まってはいない。しかし、これは実験校ゆえの試行錯誤と見るべきであろう。ステレオタイプ化された学校像を脱却し、 個性が育つ教育環境の可能性を感じさせる建築である〉(北原理雄)千葉県立幕張総合高等学校 総合学科校舎