カテゴリ:Lily
この、長年わたしの奥底に広がり渦巻き、粗末な反芻をさえ纏い尽くした孤独というものは、今では海の漣に交じっていくかのように感じる。それはまるで静かなトンネルの中に、乱雑に水を撒いては染みをつくっていくかのようだった。わたしの呼吸だけがその場所では響き、色を変え、充満していく。僕は一呼吸分の安心をつくると、その様に満足して眼を閉じてみせる。静かな、静か過ぎるその空間の中で、わたしは懐かしい太陽の匂いを感じる。音もなく風が吹き、海の塩気が温もりに混じる。 ああ、この場所では音楽が、聴こえる。 わたしは眼を開き、汗の滲んだこの手の感覚を強く身体に信じ込ませる。そうしてまた眼を閉じ、その場に崩れるように座り込む。ただ静かで、ただ穏やかで、惜しくもなく穏やかさを香らせるこの場所が、ただくるおしく愛おしい。僕は涙の温もりに身を震わせ、もう一度夢を観る。 碧。 憎まないで。きらって、ただきらって。 そうしてだいて、ただ抱いて。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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