「papaさんの素敵なレストラン」


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「Papaさんの素敵なレストラン」

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むかしむかしある街に、ゆうちゃんという女の子がいました。

ゆうちゃんは、とても優しい子でしたので
喧嘩をしてる人達を見るのが大嫌いです。
学校でも、街でも、最近は喧嘩が絶えません。
隣の国とも戦争が起きそうな世の中です。

だから、いつもゆうちゃんは、
どうしたらみんなが仲良くなれるのか
そればっかり考えてました。

学校でも先生に聞きましたし、お父さんやお母さんにも
二人のお姉さんにも聞きました。

けど、みんなは困った顔して、首を傾げるばかりで
ゆうちゃんがちゃんと納得する説明をしてくれる人は
一人もいませんでした。

今日も、街で、学校でもいろんなひとたちが喧嘩しています。
テレビでは隣の国といつ戦争が始まるかもわからないと
アナウンサーが哀しそうな表情です。

ゆうちゃんは今日も食卓で哀しい顔して
そんなニュースを見ていました。

それに気づいたお母さんが、
「そうね。Papa叔父さんなら
良い知恵を貸してくれるかも知れないわね。」
と、微笑みました。


papa叔父さんは、ママのお兄さんです。
村はずれに小さいながらも素敵なレストランを開いている。
ちょっと変わってる人です。

新聞は何種類も毎日読んで、外国語で書かれた本や、
いろんな人の伝記や、ありとあらゆる雑誌が
そのレストランの壁には書斎のように並べられてます。

それを暇な時間には読んで、時にはお店に訪れる
いろんな人たちの世間話をニコニコ聞いてスクラップしては
たくさんの人に読んでもらおうと自分の新聞を刷ったりしている
変わったレストランのマスターです。

ゆうちゃんは、papaさんにどうしたらみんなが喧嘩をしないようになるかを聞きに行くことにしました。

けど、ほんとうは人見知りのゆうちゃんは
なかなかその質問をPapa叔父さんに聞く事ができませんでした。

それというのも、そのお店はあまりにも綺麗なお店ですし、
Papa叔父さんはいつも忙しそうに
一人でいろんな料理を魔法みたいに作っていますし
その顔があまりにも真剣なので怖かったのです。

だから、最初はお店の中に入るのもためらわれるくらいでした。

でも、お店の混雑が一段落して、休憩時間の札が立つと
papa叔父さんの優しそうな表情が
ゆうちゃんを勇気付けました。

そんな風にして、ゆうちゃんは
Papa叔父さんのお店に通うようになったのです。

もちろん、人見知りのゆうちゃんは、なかなか、
「みんなが喧嘩をするのをやめさせる方法」を
Papa叔父さんに聞き出せません。

だから、ぽつんと、カウンターの横で
すごく美味しくて素敵な香りのブレンドコーヒーを
一杯だけいつも頼んで、Papa叔父さんが作ってる
美味しそうな魔法の料理を眺めて、
Papaさんの方から話し掛けてくれるのを毎日待ちました。


そして、思いました。
『ここで出される料理は本当に美味しいんだ。』

美味しそうな匂いだけじゃなく、
料理の盛り付けも、その食器もすごく洒落ている。

それらはそんなに高そうじゃないけれど、
とても落ち着きがあって素朴な感じだ。

それに、ここは確かに町外れだけど
お店の中だけは信じられないくらい静かで
上品な人たちが多い事に、ゆうちゃんは気づきました。

でも、上品とは言っても普通の人たちです。
怒った顔して、不機嫌そうな顔をした頑固そうなおじいさんもいますし。

りゅうまちで腰が痛くて痛くてちゃんと歩けないおばあさんもいますし

本を抱えるようにして歩いてくる疲れた苦学生も

いつもふられて来るのか、ハンカチで涙を拭きながらやってくる
ちょっと太ったお姉さんもやってきます。

でも、どのお客さんもpapaさんの作った料理を食べると
不思議なことに満面の笑顔になります。

おじいさんは微笑み、隣の席のおばあさんに話しかけます。
おばあさんはリュウマチが痛かったことさえも忘れていろんなお話を始めます。

そんなおばあさんのお話がとても明るくてためになることばかりですので

苦学生も本から目を離して、聞き入ります。
さっきまで涙を浮かべてたお姉さんも、いつのまにか陽気に笑って
苦学生を励ましたりしています。

そんな風にpapaさんのレストランはいつも不思議で静かな空気が流れています。

それはおだやかで、静かな、やさしい音楽のようで
たくさんの料理とコーヒーの香りがハーモニーのように流れるのです。

そしていつのまにか、どんなひとも笑顔になって、
たくさんの人が仲良しになる
不思議なレストランです。

『きっとpapaさんは魔法使いなんだ。』
そう思った、ゆうちゃんはいつのまにか、自然にPapaさんに聞くことが出来たのです

でも、勇気が無いから、ちょっとだけ、ポツリと…。

「どうしたら、そんな素敵な料理が作れるの?」

その時、papaさんは本当にやさしそうな笑顔で答えました。
「やっと、話し掛けてくれたね。ありがとう。」

「ゆうちゃんだね。ママは元気そうだね。昨日も電話があったよ」
ゆうちゃんは、恥ずかしくて耳まで真っ赤になりました。

「で、どうしたら、そんあに素敵な料理が作れるのですか?」
緊張しましたが、ゆうちゃんは、もういちど
こんどは、papaさんにもはっきりと聞き取れるように
ちゃんと聞きました。

「うーん、それは、自分が一番美味しいと思うものを
食べてもらう人に本当に喜んでもらうために
“贈る気持ち”で作るからだよ。」

「贈るきもち?」

「ああ、そうだよ。
 でもね、ゆうちゃん。
 料理にとって大事なのは、それ以外にもたくさんあるんだ。」

「それはなあに?」

「ふふふ。たくさんあるんだよ、
 もちろん基本はさっき言ったとおりだけどね」

「たくさんって、困ったな。
 あたし、あんまり頭がよくないから」

「よく考えてごらん。これは宿題にしておくよ。
 もし本当に正しい答えだったら…、

 そうだな
 ゆうちゃんが好きな料理をひとつ、プレゼントするよ」

 ゆうちゃんは、とってもおなかがすいていたので

 そりゃあ、食べたかったのですが、
 でも間違えたらお金を払わなくちゃいけないでしょうし
 ゆうちゃんはまだ中学生でしたから
 お小遣いもそんなに無いですし

 一生懸命考えました。

 でもわからないのです。

「料理の材料がいいのかな?」

ポツリと言いました。

「うん、正解だよ。
 でもそれじゃあ、50点だね。
 どんな風にいいと思うかな?」

「うーん。魔法が入ってるの?」

「ははは。たしかに魔法かもしれないね。
 僕は思うんだよ。
 この世で本当の魔法は人が作ったものじゃないんだ。
 神様が作った魔法だよ。
 たしかに、料理の基本は素材が大事なんだ。
 新鮮で、自然で、農薬みたいな害も無く、
 だけどそれ以上に大事なのは…」

「なあに?」

「そうだね、この問題は宿題にしておくね。
 ゆうちゃんは今日はがんばったから、プリンをあげよう。」

それはそれは素敵な美味しい味のプリンでした。
ほっぺたなんか落っこちそうでした。

ゆうちゃんは、なんとかしてそのプリンの作りかたを
教えてもらいたかったのですが、その前に宿題を答えないと
教えてくれないとやさしそうな笑顔で言われました。

だから、ゆうちゃんは家に帰って
お姉さんや、お母さんに聞きました。

そして、こんどはそんなにむずかしい質問じゃ
なかったからなのか

みんなも美味しい料理をただで食べられる事を知ったから
興味が湧いたのかわかりませんが、
いろんな答えをやさしく教えてくれたので、
ゆうちゃんはたくさんのメモを持って、
また次の日も、papaさんのレストランに行ったのです。

「ねえ、みて、Papaさん。
 こんなにいっぱい
 いろんな答えを見つけたよ。」

 そうしたら、不思議な事に
 papaさんは今日はあまり機嫌がよくありません。

 困ったゆうちゃんはいったいどうしてなのか聞きました。

「だめだよ、ゆうちゃん。
 誰かの考えを鵜呑みにしただけじゃ。
 
 たくさんの人の言うことを聞いて
 勉強をすることはいいことだよ。
 
 でもね、ゆうちゃん。
 それよりも、もっと大事なことがあるんだ。」

 そして、それが本当の“答え”なんだよ。」

 すこし厳しそうに、papa叔父さんは
 ゆうちゃんを見つめます。

 ゆうちゃんは、自分で考えることを
 papaさんにその時初めて教わったのです。
 そして、ゆうちゃんは宿題の答えを今、自分で考えました。

「料理の基本は「贈る」ことだって
 papa叔父さんは言ったよね。
 素材も大事、新鮮なのや、自然なのや、害が無いもの
 大事。

 でもそれ以上に大事なのがあるとしたら…」


「あたしは、やっぱり“基本”だと思うの。
 お客さんの好みに合わせて作ること
 料理の材料同志の相性も考えて作ること。
 出す順番も考える事。
 どんな小さな事もそれぞれに思いやりを持って考える事。
 
 それが本当の贈り物。」

「うん、さすがだね。ゆうちゃん。
 満点をあげたいくらいだよ。
 でもね、もう少しで、満点で、
 あともうひとつ大事なことがあるんだよ。」

「あっ…」

「そう、昨日からゆうちゃんがやってきたことだよ」
そして、今、ゆっちゃんがやったことだよ。」

「えっ?。 じぶんで…。考えること…?」

「そうだよ、それでこそ“本当の贈り物”なんだ。」

ゆうちゃんの瞳から、いつの間にか綺麗な涙が流れました。


それは、ずっと、ゆうちゃんが探していた
一番大事な答えだったと、ゆうちゃんの心が震えたからです。

「自分で考える事…。」

「そうだよ。
“贈る気持ち”を忘れないで、自分で考える事なんだ。
 ゆうちゃんがここにいろんなことを聞きに来た本当の理由は
 叔父さんはよく知ってるよ。

 もし、みんながゆうちゃんみたいになったら、
 街でも学校でも、国同志だって、喧嘩なんか起きないんだよ。

 みんなが、誰かを思いやって、
 自分自身で何が正しいか間違ってるか考えて
 贈り物を作れる気持ちになったら…。
 そして本当にそれを少しずつできたら
 この世に争いなんか起きやしないんだ。」

 そして静かに、魔法みたいに
 ゆうちゃんの前には、
 ゆうちゃんが前から食べたかった
 PAPA叔父さんの腕を振るった特製ランチが出されました。

「さあ、明日はクリスマスだよ。

 お店は忙しくなる。
 ゆうちゃんが手伝ってくれたら嬉しいよ。」

papa叔父さんが微笑みました。

空からは静かな冬の魔法が舞い降りてきます。

今年は素敵なクリスマスになりそうです。



【おしまい】




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