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江戸風流 春蝶亭雑記

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2006年01月14日
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カテゴリ:読書
◆平野啓一郎『日蝕』(新潮社 1998・10・15)
日蝕
芥川賞受賞作。雑誌「新潮」1998年8月号の巻頭に一挙掲載され、話題を呼んだ。
パリ大学で神学を学んでいたニコラは、学究のため訪れたリヨンでフィレンツェに行くことを勧められる。その途中寄ったヴィエンヌで、異端審問師ジャックに会うが、その姿にうさんくさいものを感じる。そして人々から変人あつかいされ、怖れられている錬金術師ピエェルの研究に対する禁欲的な姿勢に、好ましいものを感じる。しかしやがてピエェルはジャックにとらえられ、ピエェルが密かに隠していた奇妙な生き物・アンドロギュノスが白日にさらされる。疫病その他、村に起こった凶事の原因とされたアンドロギュノスは火刑に処せられるが、その際、キリストを思わせるような奇跡が起こる。
難解な文体が話題になった作品だが、別に気にならなかった。ただ、非常に綿密に理論で組み立てられた表現をする人だと思った。私はキリスト教にもカトリックの歴史にも哲学にも疎いが、それなりに重厚な雰囲気を楽しんで読むことができた。歪んだカリスマ性を持つジャック、論理的でありながらどこか思想のバランスを欠いている研究者ピエェル、それを絶妙に離れた位置から見ている主人公ニコラの位置関係がおもしろかった。こういう立場に主人公を置いたことは上手かった。





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最終更新日  2006年01月25日 23時22分24秒
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