高岡洋介 「ちょ ちょっと個展 Part.2 蒼い世界の物語 」
【ハモニカ天使】少年天使が荒れ果てた大地に降り立ち、ハモニカを吹き始めた。・・・と、闇に支配されていた自然界が蒼みを帯び、いままで漂っていた閉塞感が消え失せた。飛び舞うことを忘れていた鳥たちが、突然、軽快に大空を闊歩し、啼き競い始める。自然界の一部が悦びに目覚めた瞬間だった。【音森の少女】遠い森ではささやくように流れてきた旋律にのって、少女が悦びの踊りを舞い始めた。悪霊の接近を寄せ付けない厳格な舞。閉塞感から開放感へ。自然界が正しい方向へと静かに動き始めた。【黒猫は弦をひっかく】ジャーン、ジャジャーン・・・・。いままでのうっぷんを晴らすかのように、黒猫がギターの弦をひっかき、自由になった悦びを伝える。集まってきた小さな影が一つになり、その悦びに共鳴する。自然界に希望の光が射し込み、歓喜の声がこだました。【残響城の男】空も陸も海も、あらゆるものが一つの旋律に共鳴し、新たな心の動きを見せ始めている。その中で変革を由としない男がいた。希望を噛みつぶしてきた男。男は、酷薄な嘆息を繰り返しながら、明日を拒否してきた。古い日の旋律を意味もなく守り続けてきた男に、未来の光は届かなかった。自然界には、悲しいことながら陰の要素が残り続けた。【蒼い一夜】暗黒のカーテンが開き、自由の風が舞う蒼い空が出現した。いま、この悦びを全身で感じ、熱くなった心を全身で表す。いま・・・、そう、「いま」が大事なのだ。「いま」を精一いっぱい唄え、「いま」を精いっぱい弾け。自然界に熱情の風が吹き抜けていく。【龍の息子】巡り会った希望の旋律に育てられ、小さく芽生えた悦びの実。噂を聞きつけてやってきた龍の息子は、自由に満ちた蒼い空を飛びまわり、あちらこちらで噴き出す幸せの蒸気を全身に浴びた。“この世界を守る”龍の息子は誰にもわからぬ言葉で誓った。怒りよ、悲しみよ。人々の平穏な心をかき乱す侵入者たちよ。お前たちが心に居座る時は過ぎている。いますぐ立ち去れ。まもなく、多分まもなく、悦びや楽しみが戻ってくるのだから。