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~ Only Human ~ 私の腎移植物語

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2007.06.04
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カテゴリ:趣味など

入院した次の日の5/27、もうすぐ消灯だという時間にTVガイドを見ていたら、ふと新日曜美術館の欄に「菊池伶司」の文字を発見。

それは若干22歳の若さで、腎臓病で夭逝した版画作家「菊池怜司」を取り上げたものでした。

「銅板に刻まれた生 伝説の版画家・菊池伶司」

 

最初私は、自分と同じ腎臓病で早くに亡くなった、大昔カルテの中に見たような幾何学的な人体解剖図や、論文の中で見る意味のわからない文字式の羅列が印象に残るだけの「菊池伶司」の版画をちょっと見てみたいというだけでチャンネルをつけました。

そして今風に言えば、自殺なんかで突然亡くなった芸能人なんかが、いきなりチャートに出てきたりする現象と同じように、夭逝した版画家が今ブームなんだな、と醒めた目で見ていました。

でも、その版画がソラマメ型(腎臓の象徴)をした形の周辺に、悪性腫瘍が増殖するように見えたり、

なにかをつかもうと中天に伸ばす無数の手に、この菊池伶司という若い版画家は何を見ていたのかなぁ・・・と気になって仕方がなくなっていました。

 

昨日、主人も休みで家にいたので、この菊池伶司の版画展が、東京都町田市の「国際版画美術館」で6/24まで開催されているのを知って、車で高速を1時間ちょっとかけて見に行って来ました。

「国際版画美術館」はとても大きく、緑に囲まれた素敵な場所に建っていました。

着いたとたんに具合が悪くなって、血圧は80台まで下がるは脳貧血で美術館のソファに寝てた私はいったいなんなんだと思われたでしょう(笑)

アクエリアスを一気飲みしてなんとか生き返りましたが、腎臓の痛みには参りました。でも、その分菊池伶司の苦しみが版画から溢れるように感じられたかも知れません(汗)

 

菊池伶司は、生まれつきの腎臓病(奇形か、私のように遺伝性だったのかはわかりません)で、尿毒症のため、1968年10月6日、東京女子医大病院で死去。享年22歳。今生きていれば、ちょうど60歳でした。

最後にどうにもならなくなって、女子医大病院に担ぎ込まれた時にはもう尿毒症末期症状だったと言います。

私は菊池伶司が亡くなったその16日後に、この世に生を受けました。そして私の一度目の腎移植がこの女子医大でした。

夭逝した作家なんかを神のように祭り上げて崇拝しているなんて・・・とそんな風に見ていた自分が、ほとんど侵食されていることに気づきました。

 

クリーム色に塗られ、少し照明を落とした静かな一室に、作品名がほとんど番号化されているように見える版画が並んでいました。

彼がつけていた日記には、作品に題なんか必要ないとありました。なんか私には題名さえつける時間が自分にはもう残されていないとわかっていたのかなと思いました。

 

彼の作品を順番に見ていくと、ギリギリの中で精神の昇華が起こった瞬間を垣間見ることができます。

版画に転向した頃は、自分のなかにある病への恐怖が、細胞の増殖のようになって語りかけて来ます。

そして版画家として生きるということやIZUMIという恋人に対して描き続けた夢を、無数の手が必死でつかもうとしている。

そして、判読不明な文字で、ソラマメと尿管と膀胱を解説するかのような彼の代表作「Observer2」

そして意味のない文字を書き殴る「Lecture」自分の病をなんとか受け入れようともがいているように見えます。

TVでやっていた「Door」という4枚セットになっているような不思議な版画は、ここにはありませんでした。

一枚のDoorに、横に伸びる道と木々が透けて見えていました。

次は何も書いていないけど、奥にDoorの影が透けて見える。

そして、次はDoorには何も透けてないけど、こちら側にDoorの影が移動している。誰かが入ってきたのか。この時にDoorに書かれた番号が次第に大きくなっていることに気づきました。

最後はハッキリと「45号室」と題が付けられており、陰もこちら側になっていて、Doorには黒いドクロのような影が鋭いタッチで描かれていました。

これが描かれた時はもう死の2~3ヶ月前です。

 

この作品を境に、作品にはたくさんの真っ黒いドクロや、頭蓋骨から脊髄が伸びるのを横から見た断面図などが多くなります。

ソラマメよりも、彼が何度も日記で語っているところの「イマージュ」の象徴である脳の断面図や解剖図を思わせる作品が多くなります。

そしてIZUMIという恋人に対する恋心を苦しいまでに表現する。女体のイマージュが作品に登場してきます。

このあたりは、彼が生に絶望しながらも、限りなく生に向かって表現する時、魂と版画家としての素質が昇華しているさまが重い。

 

最後の頃の作品は、もう題名不詳となっていて、No.63は魂の叫びみたいに思えます。

ただ真っ黒に塗りつぶしたソラマメのような形の下に、小さな受精卵のようなものが薄く描かれています。

この作品は胸に迫りました。

 

彼が版画家として達成したのはもしかしたら、ソラマメに対する慟哭だったかもしれません。

女性が子を成すように、彼は生きている意味を、版画にさがした軌跡。

でも、最後に彼が夢見たものは、IZUMIとの受精だった。

 

この作家の作品をみる時、人間の哀しいまでの生への回帰を想わざるをえません。

美術館を出ると、真夏のような一日が嘘だったかのような、涼しい風が吹いていました。

ふと、腎臓に痛みが走りました。







最終更新日  2007.06.04 18:59:57
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