エジンバラのセレブな隠れ家レストランみーっけ!
英国は階級社会である。しかしここエジンバラに来てからというもの、いったい「上流階級の人びと」はどこに隠れているの?というほど、周りにはフツーの人びと (これを貴族と区別してcommon peopleというらしい)ばっかりだった。一説によると、階級社会は崩れ、上流階級はもはや絶滅した、という人まで出てくる始末。まあ、こちらには子連れというハンデもある。高級っぽい匂いのする場所へはなかなか近づけないことも確かである。しかし昨日、母がもうすぐ帰国することもあるので、うわさには聞いていたセレブなレストランへ行ってみることにした。市の中心部からは車で10分ほどのPrestonfield House Hotelにある、Rhubarbというレストラン。(http://www.prestonfield.com/welcome.htm)12世紀までさかのぼることができる由緒ただしきプレストンフィールド・ハウスはホテルとしても長い歴史をもつが、昨年、スコットランドのレストラン業界で最もサクセスした一人との呼び声の高い現オーナー、ジェームズ・トンプソン氏が買い取り、多額の資金を投入、内装をリニューアルして、つい昨年の11月にリオープンした超セレブ系レストランだ。何しろこのレストランで食事をした人々のセレブ度を見てほしい。ウィンストン・チャーチル。マーガレット・サッチャー。ショーン・コネリー。エルトン・ジョン。キャサリン・ゼダ・ジョーンズ。おおおー!って感じでしょ?さて、私たちは午後7時に予約をいれた。入念にドレスアップし、タクシーを呼んでいざ、Prestonfield House Hotel へ!市内の住宅街のホテルにもかかわらず、広大なホリールード公園を背にしたホテルは、まるで別天地だ。郊外の大自然の中にでもいるような風情。 なんと、庭園には孔雀が優雅に歩いているではありませんか!さて、ホテルにはいると、もうそこには黒シャツに黒スカートをきた優雅なドアマンが待ち構えている。こちらの名前をいうまでもなく、すでに承知している様子である。(予約のおかげだね!)「テーブルに着かれる前に、こちらのラウンジで食前酒はいかがでしょうか、マダ~ム?」なんぞ言われたら、とても「ノー」とは言えない。 さて、席についた私たちに、イケメン系のウェイターさんが注文をとりに来る。夫はシェリー酒を頼む。母と子供たちはノンアルコールでレモネードを。さて、私は何にしよう。あんまり凡庸なものは頼みたくない。私はちょっと挑戦的な気分になり「グ、グラッパあります?」と口走ってしまった。思わずウェイターさんの相好が崩れる。え~!グ、グラッパァ~?って顔である。しかしそこは彼もプロ、「Sure! (もちろん、ありますとも)」とにっこり。えええっ、あるんだ、グラッパ。私はちょっぴり感心する。グラッパはワインの絞りかすを蒸留して作るかなり強烈なイタリアのお酒。ぶどうの香りがとてもいいので私は大好きなのだが、ウォッカや、アクアヴィットのように男の酒ってかんじで、女性がたしなむような品の良いお酒とはいえない。これを飲むのは、かなりののんべえ、これを頼むのも、かなりやべえ、という感じ。しかも食前酒ではないし。でも、ま、好きなものを飲むのが一番である。さて、ソムリエがにやにやしながら運んで来たグラッパをのどに流し込みながら、今夜のメニューを決める。う~む。難しいぞ、メニュー。(しかし、グラッパがのどに熱くてキモチがいい。ク~!やっぱこれだね!)スターターは・・・例えばこんな感じ。Terrine of foie gras and duck confit, Gewürztraminer jelly, toasted brioche - £11.50Seared Isle of Skye scallops, swede puree, ginger oil and beet juice - £9.50なんじゃこりゃ?しかし値段はそう高くない。メインは・・・こんな感じ。Pan seared fillet of sea bream, fennel boulangere, tomato and squid ragout - £16.50Pave of turbot, crab and asparagus in a light shellfish broth - £19.0いったいどんなものが出てくるのやらさっぱり見当もつかん。こういう時、ウェイターにお勧めを聞くのが本当は一番だ。しかし今日は人数も多かったので、聞くのも面倒だし、とりあえず、食べたい食材がはいっているかどうかで決めた。夫は前菜にフォアグラ入りのテリーヌ、メインにワイルドサーモン。私は前菜がラビットのロースト、メインがラム。母は前菜にトルテリーニ、メインは白身魚。子供たちのぶんは、ウェイターにお任せした。「テーブルのご用意ができました」ウェイターが呼びに来る。通されたダイニングルームはまあ、なんて優雅。 壁にはたくさんの肖像画。歴代の屋敷の主たちの肖像画だろうか。その夜のお客は年配の上品な紳士淑女方。ロングドレスのご婦人もいるが、服装は全般にそう派手でもない。しかし、隣の老紳士が話す英語を聞いて驚いた。そこらで喋っている「common」の人たちの英語とは全然ちがう。これぞ「ザ・上流階級」。こちらに来て初めて聞いたほどの、上品な英語であった。「マイ・フェア・レディー」の世界をはじめて理解した、って感じ。さて、肝心の料理のお味だが・・・まず、パンは非常に美味しかった。水も厳選したものを使っている。ワインもなかなか。しかし数々の賞を受賞したという割に、料理のお味はどうか?ヌーベルキュイジーヌっぽいそのテイストは、メニューと同じぐらい、不可解だったというべきか。ただし、ホスピタリティーは絶品である。ウェイターはひとこと喋るごとにマダムをつけ、私なぞ一晩のうちに20回以上もマダムと呼ばれたような気がする。12歳の娘にまで、口がすべってマダムと呼んでいた。いや、ここまでマダムと呼ばれ続けると、気分はいいものである。レストランを出る頃には、すっかりほんもののマダムになった気分。ああ、かのマダムKをここにつれてきたかったっス。マダム度、確実に上がりまくりだったはずだっス。