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テーマ:愛しき人へ(903)
カテゴリ:思索
彼(井上嘉浩)は、いつも僕に謎の言葉を残し、去っていった。僕が単に親しかったというだけではなく、彼は見ていて非常に危なっかしかった。そう、91年に初めてあった瞬間から、電撃的な出会いから、僕の心臓を揺さぶるほどの精神性を携えていた。これは他の取り巻きの信者たちには申し訳ないけれども感じないものだった。 . 彼は、この世の中は間もなく終わるかもしれない…ということを匂わせた。ただし、この匂わせに対して僕がそのまま受け入れるわけにはもちろんいかなかった。だって、世の中は続くよ…これからも。悲惨な出来事は確かにあるさ、見ていて僕だって感じるさ、でも、この人間の世界そのものが消えてなくなることはまずないだろうし、落ち着いて考えてみろよ、アーナンダ… . 僕はそんな心境で、この92年を過ごしていた。研究はVLBI、僕は果てしなく遠く古い天体を観測していた。クエーサーと呼ばれる天体は我々の銀河から50億~130億後年ほど離れている天体で、原子母銀河とも呼ばれている。僕が自分の研究のために観測していた天体のうちもっとも古いものは、110億光年彼方に在るクエーサーだった。 . この研究は僕にロマンを与えていた。 なにせ46億歳の我々地球より古い時代に生み出された電磁波を僕は受け止めているのだから… 僕は軽く人類の歴史を超えたテーマを持っていたんだ。 . 人が生み出される前の世界、宇宙とはいかなるものだったか。 どうして宇宙は人類というものを生み出したのか… これが僕の根底にある形而上学的なテーマだった。 . 僕は研究を通じて、精神が鋭敏になってゆき、やがて神秘的な思想に行く就くようになっていった。 今も僕の核にあるのは、誰にも冒されたくはない聖域の神秘思想が横たわっている。 . 神話は僕にとって、外部の物語ではなく、内部の体験と同じレベルになっていた。 そして聖書のなかでも創世記などに出てくる話よりも前の情報が欲しかった。 これを探索するのは大変だったが、それらの原初の神話のイメージは、地質学的には氷河期末期である1万3千年ほど前にいた精神体による記述だということまでは突き止めた。実は100万年くらいの間に何度も氷河期が訪れては、間氷期に入り、地球は温暖な時期と寒冷な磁気を約10万年ほどの単位で繰り返している。 . 地質学的な事を言えば、ノアの洪水は確かに存在したはずで、それは大陸の殆どが氷床で覆われた時代から、1年に1度づつ上昇してしまう異様な季節、間氷期を挟んで、大地の氷という氷は溶けだし、大きな洪水を各地に生み出しているだ。 . 人類は滅びる時代に突入しているかもしれない…というアーナンダの言葉の示唆は、僕にとっては、当時からそして今でも科学的に叫ばれている地球の事変に対する警告として受け止めていた。 . それが、僕の生きている時代に来るなんて考えられないよ、アーナンダ。 そう心の中で唱えながら、次にアーナンダに会える日を心待ちにしていた。 . 彼は、ロシアだなんて言うけれども、だいたい、日本での布教でこてんぱんに失敗しているオウムが、海外かよ… 笑わせるなよ、まずは自国に足場を固めてからだろ… . こうした反論が顔に出ていただろう、彼はこれに対しては、このように述べていた。 . アーナンダ:「小さいよ…○○くん、本当に人の世を憂うなら地域など関係ないはずだし、しかも君はわかっていない。こうした事に気づけることの貴重さを。今生ぐらいしかこういうことに気づけないんじゃないのかな…僕らが連綿と続く輪回の中で浮沈していたとして、一体どれだけの確率で真理に出会い、それに気づけるのだというんだい。」 . 私:「…でも、ちょっとそれでも、破局が自分のまさか生きている時代に訪れるなんて、想像していませんでした…」 アーナンダ「それは、間違いなく、この時代なんだよ…」 . 92年1月~3月くらい . . . Eili ...
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