EiliPrivate~思索の森…奇蹟を求めて~

2020/08/01(土)07:57

『碧い音階』

詩(587)

​.~亨君と秋の姫さんへ捧げます~ . .亨君は、獄中で どのように過ごしていたのだろうか… .彼の心の中に何が去来しその心臓にどように時間が流れたのだろうか…彼の頭に鳴り響く音階は果てしなく陰鬱な短調の旋律だったのだろうか.僕は今日少しだけ知られざる彼の姿を知る手がかりを得ることができた.彼に届いていた奇跡的な手紙のお相手の<生の文字>を目にすることができたのだ…. 亨君が目に留めた文字だ!.亨君にとって世間の人は触れえぬもの己から会いたいとは言えぬほどの層の隔たり.未知の世界ともいえるほどの人から手紙が届くのだ…会ったこともない、会えるはずもない人からその驚きは、隠せなかっただろう…...ああでも、この手紙は実に7年後に彼のもとに届くのだ….彼に手紙を出した女性は、返信の来なかった年月に失意も感じた事だろう…理由は一切知らされることがないわけだから….返事を書かなかったのではない…7年もの間、囚人に届けられることさえなかったのだ.この制度が実に残酷だ…罪を犯した人間には、自分に届く手紙を受け取る権利さえもないというのだろうか….手紙は読ませてもらえない代わりに誰から来たかだけは知らされるそうだ…彼の頭に、彼女の名前が錨を降ろす.二審が確定すると、逆説的に、彼に自由が与えられた彼はだいぶ前に出された手紙をようやくにして手渡され 開封し読むことができたのだ…..そして彼は7年ぶりにこの化石を紐解き手紙の主に返信することから交流が始まる…...この時、彼の心の中の音階は変調したのだと思う.彼女は、突然にして仕舞いこんでいた過去からの手紙の返信を受け取る….まるで、前世の手紙が今届くほどの衝撃を受けただろう…届いていたのかもわからない読んでくれていたのかさえ分からない渡されることさえなかった事実をこの時知るのだ.そして、この7年を振り返り戸惑いと畏れも幾ばくか感じながら封を開ける...そこには大きく整った文字があった彼の人柄を表す形だった.そして、彼にとっても彼女の小さな文字は、独特で吸い込まれていったに違いない...同じ時代に居ながらにして遠く離れた惑星間で通信しているかのような二人のやり取りは.僕らの普段している交流の何十倍もの濃度が込められる….死刑囚…いつ刑が執行されるかわからぬあやふやな生を.仮初の姿としてとどめながら僕達の心には大きな存在として刻印される.彼らの交流は深く碧く奇跡的にも微笑ましい….亨君の体に鳴り響く音階はこの瞬間にだけ軽やかで優しいものになっていた事だろう...Eili ... . . .​

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