CANADIAN DAYS 8
=親にも当時付き合っていた相手にも言っていない内緒のカナダ野良猫放浪記=私のカナディアンネームはキャンディー。今頃の時期になると懐かしく思い出すカナダのバンクーバー。20代前半、2月半ばから3月末まで約6週間滞在した。『CANADIAN DAYS1~7』はこちら。カナダ滞在の残りの数日間、私は精力的に歩き回った。バンクーバーにはたくさんの公園があって季節が春ということもあって青い空に緑が映えて美しい。クイーンエリザベスパークはほぼ街の中心の高台にある公園で、歩いて行ったら道に迷って2時間以上かかってしまい、着いた時には閉園間近だった。それでも緑豊かできれいな公園だった。ただ、この先もっと花が咲き乱れるであろう景色、それを見ずに日本に帰国しないくてはならないことが残念だった。ギャスタウンへは日本に帰国する前には何度かお土産を買いに行った。スタンレーパークの手前にあって古い街並を再現したショッピングストリートだ。ホステルの住人のカナダ人男性が道端の椅子に座って本を読んでいる。私は何か2~3言話しかけて挨拶をして通り過ぎた。ギャスタウンの近くにサイドパークと言う公園があってガイドブックには載っていないのだけど、とても景色の綺麗な公園で私のお気に入りの場所だった。公園からスタンレーパークの方を望むとハーバーが見えて、天気の良い日には素晴らしい景色を堪能できた。スタンレーパークはとても広い公園で家族連れやカップルがのどかに過ごしている。サイクリングコースもあって自転車で走る人やジョギングしている人もたくさんいた。また、池と言うか湖と言うのか分からないけれど水鳥などもいて見ているだけでもすぐに時間が経ってしまう。パーク内にバンクーバー水族館があって、そこにも入った。とても充実した水族館で見ごたえがあり、爬虫類のコーナーでは蛇を触らせてくれたので特に気に入ってしまった。その後イングリッシュベイに行き海を眺める。人はほとんどいなくて、流木とかが散乱していて荒々しい感じのする場所だったけど、何となくハワイのワイキキに似た感じで、ここから見る夕日は素晴らしくて絵のような景色だった。スカイトレイン、シーバスを乗り継ぎ北バンクーバーのロンズデイルキイまで行った。海っぺりの場所で市場があって家族連れがのんびりと休日を楽しんでいた。天気も晴れていて景色が良くて高いところから海を見下ろすのは最高に気分が好かった。このままずっとカナダにいられたらと何度か思った。他にもグランビルアイランドやハーバーセンターの展望台など、一人で、または誰かと一緒に行った。グランビルアイランドは市場的な場所で私はキャシーへのお土産にお肉やさんでレバーを一掴み分の量(グラムが分からなかったので)買って、帰りにチャイナタウンでニラを買って、二人で夜はレバニラ炒めを食べたりもした。残りの数日は本当に楽しくて充実していた。その頃には人間不審の私などどこかに去ってしまいアンソニーやマンフレッドと英語で冗談を言ったり喧嘩をしたりと大分慣れて、分からない言葉はスペルを教えてもらって辞書で調べるのだけど、その回数もどんどん減っていった。カナダに来た当初の『帰りたい』から『帰りたくない』へと、とても貴重な時間へと、変化していき、ホステルの誰かに帰国の日を聞かれても答えたくなくて、どんどん気分が落ち込むほど。それでも帰国しなくてはならない日はやってきた。朝早いバスに乗って空港まで走る。いつかまた来るまで、この景色を目に焼き付けておこう、そう思うけど寂しくて景色は目になんか入ってくるはずなどない。泣きながら見送られて、飛行機に乗って日本に着くまでの数時間、頭が痛くなるほど泣き通しだった。隣に座っている人のことなど全く気にならないほどずっとずっと泣いていた。カナダでの日々、最初の3週間は寂しくて寂しくて仕方なかったけど、後半は人生の中で最大のオアシスデイズだったと今なら思える。日本に帰ってからも気持ちを持て余してしまい、夜はよく一人で泣きながら散歩をした。でも色々考えていつも最終的に思うことは『バンクーバーに帰りたい!!』だけだった。帰国後しばらくはキャシーやアンソニーと連絡を取っていた。いつ帰ってくるの?とか、いつ会えるの?とか。マンフレッドはカナダの次に日本に来たので何度か食事に行ったりもした。でも、いつしか連絡が取れなくなり、その後の消息は分からない。キャシーともカナダで出会って、先に私が日本に帰国して、その後ワーキングホリデービザが切れたキャシーが帰国した。高知県の消印で何度か手紙をもらい私も返事を返してたけど、そのうち自然と手紙も行き来がなくなった。アンソニーも何通か手紙をくれて、私はまたいつかカナダに帰る、そう返事をしたし、実際にそのつもりでいたけれど結局は実現できなかった。時間の経過と共に寂しさは薄れていく。でも、毎年、冬が終わり春になるこの季節には寂しさが込み上げてきていつもいつも思っていた。『帰りたい』、『バンクーバーに帰りたい』、と。太陽の光が日に日に増してきて草木がどんどん青くなってくるこの季節は、私をいつでもカナダでの日々を思い出させ、寂しい気分にさせた。それでも今は懐かしさしか感じない。あれからずいぶん経って思うことは、カナダでの日々はきっと、絶対に、人生の中で最高のオアシスデイズだったに違いない。 おわり