『梁塵秘抄』 または ”わしふぃーるど”

━【コヤニスカッツィ】フィリップ・グラス


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映像と音楽の黙示録「KOYAANISQATSI (コヤニスカッツィ)」
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「KOYAANISQATSI (コヤニスカッツィ)1982」

監督: ゴッドフリー・レジオ
製作: ゴッドフリー・レジオ/フランシス・コッポラ
脚本: ロン・フリック/ゴッドフリー・レジオ/マイケル・ホーニッグ/アルトン・ウォルポール
撮影: ロン・フリック
編集: ロン・フリック/アルトン・ウォルポール
音楽: フィリップ・グラス/マイケル・ホーニッグ



冒頭、スクリーンに浮かび上がるホピ族による人型紋様の壁画が映しだされる。バスの男声で「コヤニスカッツィー・・・・コヤニスカッツィー・・・」とパイプオルガンの荘厳な音楽が始まる。画面は自然の中からやがて時間の流れがそうであるように都会や人間社会の映像へと移っていく。核実験場を覆うキノコ雲、雄大なモニュメントバレーの空撮や、編集技術を駆使したロスの高速道路の夜景、廃墟と化したビル群などアメリカ各地の驚異的な光景、開発、都市の人びとの動き、オートメーション、そして長い時間をかけて墜落してゆく宇宙船のスローモーション……。環境に対して現代世界が与えた破壊的影響力を記録した視覚映像。文明社会へ警鐘を鳴らすテーマは人々を震撼させ、未だかつてない表現手法が、見る人の魂を揺さぶった。まるでジェットコースターに乗っているように加速しフラッシュバックのように流れていく映像の疾走感に酔ったような感覚が、ときに心地良いほど。高速度撮影や早いカット回しなどによる都市の光景......。時間を忘れ、全身で体感する映像と音楽が織り成す壮大な映像叙事詩です。私達の世界がテクノロジーの力に飲み込まれていき、戦争でさえ日常と化していく現在の姿を浮き彫りにしていく異色ドキュメンタリー映画の最高傑作です。



 製作にフランシス・コッポラの名前がありますが、当時、「地獄の黙示録」の後「ワン・フロム・ハート」の失敗で破産していたフランシス・コッポラの映画作家としての慧眼がなければこの映画は存在しなかった。次世代のアメリカ映画界を担う新しい才能の発掘に貢献しているコッポラはこの映画の重要性をいち早く見抜いていて配給を始めとして全面的にバックアップしたのです。こういう仕事も映画界の維持の為には絶対必要ですね。
 蓮實重彦+武満徹「シネマの快楽」では「なんというナイーヴさ」との標題でそのアマチュアリズム臭さを辛口批評されておりますが、六本木シネ・ヴィヴァンのオープニング第二弾作品としてドルビーステレオ設備がないためモノラルで上映されたのみで、他に深夜TVで一度放映されたきり再映されることなく、当時の映画青年の間では伝説的な映画として熱狂的なファンが生みだされLDやビデオはオークションでも高値を呼びました。また、この映画をドラッグムービーというようなイメージで捉える見方もありました。



「コヤニスカッティ」とはアリゾナのインディオのホピ族の言葉で、「平衡を失った世界(life out of balance)」という意味です。ヒロシマ、ナガサキに投下された原子爆弾は、アメリカ・インディアン最古の民、ホピ族の聖地から掘り出されたウランから造られたものだったという衝撃的な事実があります。このホピ族の神話にインスパイアされて生まれた「言葉」のない黙示録的な映像と音は「コヤニスカッティ」という呪文をともなった強烈な<イメージ>として焼きついて風化することがありません。なんとも観る者に神秘的体験といっても良い映画体験ができるドキュメンタリー映画です。私には昔観た時より、今のほうが映像が喚起するものはリアルで、9.11米同時多発テロの傷跡、報復の応酬により泥沼化していくイラク戦争....9.11米同時多発テロのニュースフィルム観た時、真っ先に思ったことはこの「コヤニスカッティ」の音楽と映像のことと「ホピ族の予言」のことでした。血の気が引いて寒くなったのを覚えてます。TV映像から非日常の裂け目を覗き込んだようで怖かったです。嘘だろと思いました。
まさに現代が「コヤニスカッティ」の時代であることを心底痛感させられます。この映画を最初に見た時の衝撃と感動の記憶は今もなお強烈鮮明で、グラスの音楽とあいまって心の奥底から哀しみがこみ上げてくる、まさにカルチャーショックと呼ぶに相応しいものです。
 


ゴッドフリー・レジオ監督の初監督作品である「コヤニスカッツィ」が暗示していた問題…。それが、まさしくこの21世紀の今、現代社会で現実になっているのは、ただの偶然なのだろうか考えさせられます。2作目の「POWAQQATSI(ポワカッツィ)1987年」に引き続き、今年2月には、「カッツィ3部作」完結編「NAQOYQATSI (ナコイカッツィ)」の公開が決定しています。この「カッツィ3部作」は言葉を用いずに映像と音楽の力だけで、人の心の奥深くへと入り込み魂を震わせる壮大な映像叙事詩です。
『ポワカッツィ』とはホピ族の言葉で「自己の反映のために他人の生命力を食い物にする生き方」。
『ナコイカッツィ』とはホピ族の言葉で「互いに殺しあう命 日常と化した戦争 文明化された暴力」を意味する。



<コヤニスカッティ[DVD-Audio完全盤] フィリップ・グラス >
映像と音楽により、現代世界の変容と危機をつづったフィリップ・グラスの「コヤニスカッティ」 DVD-Audio盤。フィリップ・グラスの音楽の頂点に立つものが、映画監督ゴッドフリー・レジオとの綿密な共同作業から生まれた衝撃的なこの『コヤニスカッティ』と、その続編『ポワカッティ』だと思います。少しずつ編集された断片にグラスが作曲を行い、音楽とのシンクロニゼイションを一致させる為編集がやり直され、また音楽が書きなおされ、時には追加撮影もなされ約3年の長きにわたっての制作であったそうです。それだけこの映画における音楽の役割を重要視していたのでした。
<曲目>
1.コヤニスカッティ(オープニング)|2.有機的統一による世界|3.雲の風景|4.地下資源|5.都市の動脈|6.プリット・イゴ(高層住宅)|7.坩堝|8.予言



昨年10月17日18日両日、フィリップ・グラスは自らのアンサンブルを引き連れ、『コヤニスカッティ』とその続編『ポワカッティ』の生演奏つき上映会を日本で実現させました。
「この2つの作品が有する音楽と映像の衝撃を、望みうる最高の形で紹介すべく、万全の体勢で日本公演を準備することにした。まず、すみだトリフォニーホールの大ホールに縦6メートル横11メートルの大スクリーンを特設し、『コヤニスカッティ』『ポワカッティ』それぞれの35ミリフィルム・オリジナル版を全編上映。同時に、スクリーンの下に待機したアンサンブルが、グラスのスコア全曲を映像と少しのズレも生じさせることなくシンクロさせながら、ライヴ演奏する。もはや単なる映画上映でもコンサートでもない。映画館やビデオ/DVDでは絶対に反芻不可能な、観客の五感を揺さぶる圧倒的なスペクタクルが、一回限りの特別な体験として目の前に現出するのである。 」

◇ゴッドフリー・レジオ監督のコメント◇
「フィリップ・グラスには、とにかく驚かされる。
彼の生み出した音楽言語は複雑であり、同時に混じりけのない明快さを兼ね備えている。 その音楽が未知の躍動感に足を踏み入れるようとする時、グラスは聴く者を感動させる感性を示すのだ。グラスは絶えず変化を見せる反復語法を用いながら、魂に直接語りかけてくる。言うまでもなく、私自身はグラス・ジャンキーであり、彼の音楽なら何でも聴くほど中毒症状が進んでいる。 」

◇ジョナスメカスのコメント◇
「衝撃的な映像と卓越した技法で現代都市を終末論的に描いたゴッドフリー・レジオ監督の『コヤニスカッティ』は、映像と現代音楽が完璧に融合した映画でもある。 フィリップ・グラスの音楽は、映画史上に残る偉大なスコアの規範を指し示している。 」



◇磯崎新のコメント◇
「『ナコイカッツィ』で、遂に映像と音楽による宗教的詩編がうまれた。
生成と消滅を繰り返すこの宇宙がかくも荒々しい暴力に満たされているとは。
こんな予感は前の二作に既にしめされていた。しかし、アナログでしかない映像の限界があった。スピードは変えても時間は逆流しなかった。
極微の世界で物質が破壊されている。巨大な宇宙がまるごとブラックホールに吸い込まれている。この流転の現場に踏み込むためには、再現しかできない映像を解体してしまうデジタル処理が不可欠だった。再現する/再現される関係が逆転されねばならない。それは切れ切れの時間の裂け目にはりこむことだ。
ミニマル・ミュージックもまたこの裂け目にうまれるズレが手がかりにされた方法ではなかったか。わずかなリズムのズレがモワレを生んでいた。
ゴッドフリー・レジオの映像とフィリップ・グラスの音楽が、その根底にかかえた技法のレベルにおいて合体し干渉し合っている。私たちがその一部分になっている宇宙のメカニズムがこうして露呈される。いっさいの合理的説明を超えていく。宗教的と呼ぶしかない強度にあふれたメッセージだ。 」

◇坂本龍一のコメント◇
「もう20年以上前「コヤニスカッティ」を見た時には衝撃だった。
その後、この映画がアメリカの先住民、ホピ族の予言にもとづいて作られたことを知り、衝撃はもっと深くぼくの記憶に残った。そして、「現代」というものを映像に残そうとすると、どうしてもこの映画のようにならざるをえない、という確信が強くなった。恐ろしいことに、21世紀に入って、ホピの予言がさらに真実味を帯びてきているように思う。ぼくたちは、もう一度この2本の映画をよく見、20世紀の記憶を刻みつけなければならない。 」

◇オオエタツヤのコメント◇
「言葉を介さずして言葉以上の「説得」をもたらす時間芸術。 二十年近く前「コヤニスカッティ」に接した時、そんな思いにかられたのを覚えています。表現の眼差しが冷静であればあるほど受け手の感情や思索をより喚起していくかのような、新しい啓示のメカニズムすら感じられる衝撃的な作品でした。
警鐘の次元もとうに過ぎ去ってしまった2003年現在、この作品が僕等を誘う(いざなう)場所が、感傷や鎮魂の境地ではなく、平衡を回復する道のりへの「出発点」であって欲しいと切に願っています。」




<フィリップ・グラス Philip Glass>

スティーヴ・ライヒ、テリー・ライリーと並ぶ"ミニマル・ミュージック御三家"のひとり、フィリップ・グラス。現代音楽界をリードする当代きっての作曲家です。先祖はロシア系ユダヤ人。フィリップ・グラスが音楽を学び出したのは8歳の頃のこと。最初はフルートとビアノを習い、それから、作曲や和声を学ぶようになる。ボルティモアで育った彼は、父親がレコード店を経営していたこともあって、早くから様々な音楽に親しんでいた。19歳で名門ジュリアード音楽院に入学。 パリで学んだのち、アカデミックなクラシック音楽のルールを重んじるよりも、反復構造と強列なビートを前面に押し出した「ミニマル・ミュージック」を提唱。ラヴィ・シャンカール作品を手掛けるうちに音楽的理念が大きく変化。シャンカールの存在がグラスの音楽的なキャリアのターニング・ポイントにもなった。クラシック音楽のルールを重んじるよりも、アヴァンギャルド・クラシックで用いられていたリズムや復唱を取り入れることを選択しミニマリズム理論を創造した。必要最小限のメロディとリズム。そして、反復とわずかな変化。こうしたミニマリズム理論はエレクトロニック・ミュージックのオリジネイター的存在のクラウス・シュルツ、タンジェリン・ドリーム 、マニュエル・ゲッチング、ブライアン・イーノ、マイケル・ナイマンらに大きな影響を与えた。彼らの創造性は、その手法・方法論が後のテクノに与えた影響はあまりに大きい。



68年にオルガンやシンセサイザーに管弦楽器を加えた「フィリップ・グラス・アンサンブル」を結成、ニューヨークを拠点に活動する。 オペラ、室内楽、シンフォニー、歌曲等作品は多彩。 デビッド・ボウイ、ブライアン・イーノやクラフトワーク、エイフェックス・ツインなど、グラスとの親交から影響を受けたロックアーティストも多い。楽器のみならず、声/手拍子/環境音までも素材としたテープ操作の変調と、反復/変化から引き出される極めて原始的な催眠効果は、人々の音楽に対する認識を覆した。



76年舞台演出家ロバート・ウイルソンとのコラボレーション『浜辺のアインシュタイン』で舞台芸術界に一大センセーションをまきおこし、以降メトロポリタン・オペラ委嘱作『航海(92年)』を初めとする15本のオペラ、ザルツブルグ音楽祭委嘱作『交響曲第5番(合唱付)レクイエム、バルドゥとニルマナカヤ』など数多くの作品を発表する。
映画音楽ではマーティン・スコセッシ監督『クンドゥン(1998年LA批評家協会賞、アカデミー賞・ゴールデングローブ賞・グラミー賞最優秀音楽ノミネート)』、ピーター・ウィアー監督の『トゥルーマン・ショー(1999年ゴールデングローブ賞最優秀音楽賞)』、現在公開中のスティーヴン・ダルドリー監督『めぐりあう時間たち(アカデミー音楽賞ノミネート)』など20作品がある。
私的にはピーター・グリーナウェイ監督の傑作ドキュメンタリー『4 American Composers: Philip Glass』でグラスは<浜辺のアインシュタイン>から抜粋した<Train/Spaceship>をPhilip Glass Ensembleと伴に演奏しております。現代音楽ファン垂涎のこのシーンをぜひともご覧いただきたいです。他にピーター・グリーナウェイ監督とは、グラスの委嘱により短編『The Man in the Bath』でコラボしています。『4 American Composers』 の後の3人は、ジョン・ケージ、ロバート・アシュリー、メレディス・モンクです。現在このソフトは米でも廃盤で入手困難です。私は日本版LDを所有してますので興味ある方はお問い合わせくださいな。
ekato


アメリカ先住民ホピ族の予言。
「大地より貴き品々を掘り起こす時
我らに災いがもたらされるなり

禊の日が近づけば
蜘蛛の巣が空の隅々まで張り巡らされよう

いつの日か、灰の満ちた容れ物が天上より投げ落とされ
大地を焼き払い、大海が沸き立つだろう……」。

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