『梁塵秘抄』 または ”わしふぃーるど”

加藤登紀子コンサート 8/15





■加藤登紀子無礼講ドタ靴コンサート in 群馬 第6回「21世紀の森」野外音楽祭■

8月15日は『終戦記念日』
今年も8月15日を迎え終戦記念日も、もう59回を数えました。
繰り返しますが、たとえ100年経過しようが、8月15日の終戦記念日の意味、8月6日の広島の意味、8月9日の長崎の意味が失われることは無いはずです。「戦争」というものが、どういったものだったのか、私たちにどのような影響を与えたのか、戦争を知らない世代に伝え続けなければなりません。歴史を風化させないために、それぞれが、それぞれの形で意志を持って後世に伝承していかねばならないのです。
今年の私の8月15日は、敬愛する加藤登紀子さんと一緒に過ごしました。

「夫の三回忌を終えたばかりの今、この2年間の想いと、これからの未来につづく道へのしっかりとした一歩を踏みしめる思いで、歌いたいと思っています。」

◇"地球を抱きしめる女"加藤登紀子コンサート Love Songs◇
も合わせてご覧ください。



会場全景。朝からのあいにくの雨も午後からはすっかり上がり、さすが高地、涼しいくらいでした。両脇にはお登紀さん筆の楽・夢・薔・薇の大きな暖簾が掲げられ入場してすぐお登紀さんの字だとわかりました。



加藤登紀子、ショッキング・ピンクの衣装で登場!
♪百万本のバラの花を あなたにあなたにあなたにあげる
窓から窓から見える広場を真っ赤なバラでうめつくして♪

だけど、なんか足元がヘン?え?なんとドタ靴履いてる!お登紀さん、もう二曲目から会場内へ乱入!雨上がりのぬかるむ場内を一回り。皆の顔を見て回ったのでした。大空の下、自然の中で歌うのが大好きと言うお登紀さん。さあ、加藤登紀子全身全霊を込めてのコンサートが、始まりました。なんと、早くも「今日はなんでもありで、いくよ!」と無礼講宣言!ビール、ワインの差し入れも出てもう「ほろ酔いコンサート」状態!場内どっと和らぎ皆でにこやかに大拍手大歓声!
「8月には久し振りの野外ライブがあるのが楽しみ。それこそこれが私の夏休みかも。みんなも元気いっぱい夏をむかえてください。」(7/15TOKIKO NOW)



「時には昔の話を」

時には昔の話をしようか
通いなれた なじみのあの店
マロニエの並木が窓辺に見えてた
コーヒーを一杯で一日
見えない明日を むやみにさがして
誰もが希望をたくした
  ゆれていた時代の
   熱い風に吹かれて
  体中で瞬間(とき)を感じた
   そうだね



道端で眠ったこともあったね
どこにも行けない みんなで
お金はなくても なんとか生きてた
貧しさが明日を運んだ
小さな下宿屋にいく人もおしかけ
朝まで騒いで眠った
  嵐のように
   毎日が燃えていた
  息がきれるまで 走った
  そうだね

一枚残った写真をごらんよ
ひげづらの男は君だね
どこにいるのか今ではわからない
友達もいく人かいるけど
あの日のすべてが空しいものだと
それは誰にも言えない
  今でも同じように
   見果てぬ夢を描いて
  走りつづけているよね
   どこかで



2002年7月31日に死去した亡夫・藤本敏夫氏に捧げた「青い月のバラード」は南アフリカのピアニスト、テンバ(Themba Christopher Mkhize)さんが作った美しいバラードです。鴨川で藤本氏と過ごした最後の夜の空からインスピレーションを受けて作った曲で一気に書き上げた詞です。「お登紀さんには数々の名唱を聴かせてもらいましたが、やはり今日の白眉はこの歌でした。
藤本敏夫氏の魂は今ここにお登紀さんとあります。

「青い月のバラード」

夜の底に光る 青い月のように ひとり歩いていく あなたの後姿
孤独の中へ 出て行く人のために 何が出来るの?ただ見送るだけ

花は花のように 鳥は鳥のように ひとり咲きつづけ ひとり飛びつづける
未知の中へ 一瞬の運命に 身をまかせて 振りむかずに

風が花を咲かせ 月が鳥を誘う あの日同じ哀しみと 同じ夢を見て
二人愛を重ねた

花は花のように 鳥は鳥のように かわらぬ愛を求め どこまでも夢を追いかける
激しさと さまよう強さを持ち 孤独の痛みを 輝きにかえて

もしも出来るなら あなたを抱きしめたい 青い月のように

2002年七月三十一日、午前三時、男は突然闇の向うへと消えた。
「もういいだろう」
自分から酸素マスクをはずし、走りきったマラソン選手のように生を手放した。
残ったのはただゴーゴーと音をたてる海。
そして私の土の上に刻み込まれたのは
必死で生きた志の地図だ。



....息を引き取った後、彼の財布から詩を記した紙切れが出てきた。その詩を読んでいると、生と死の振り子が揺れる中で、静かに今の時間を受容しようとしている彼の思いが伝わってくる。


『いつも何度でも』作詞:覚和歌子「千と千尋の神隠し」主題歌

「呼んでいる 胸のどこか奥で いつも心躍る 夢を見たい
かなしみは 数えきれないけれど その向うできっと あなたに会える

繰り返すあやまちの そのたび ひとは
ただ青い空の 青さを知る
果てしなく 道は続いて見えるけれど この両手は 光を抱ける

さよならの時の 静かな胸 ゼロになるからだが 耳をすませる
生きている不思議 死んでゆく不思議
花も風も街も みんな同じ
 
呼んでいる 胸のどこか奥で いつも何度でも 夢を描こう
かなしみの数を 言い尽くすより 同じくちびるで そっとうたおう

閉じていく思い出の そのなかにいつも
忘れたくない ささやきを聞く
こなごなに砕かれた 鏡の上にも 新しい景色が 映される

はじまりの朝の 静かな窓 ゼロになるからだ 充たされていけ
海の彼方には もう探さない 輝くものは いつもここに
わたしの中に 見つけられたから」








「もう、いいだろう」
すべてが終わった瞬間だった。
数値がドンドン下がる様子は、まるで飛ぶのを止めた鳥のよう。そうだ、もうこれ以上闘う必要なんてありはしない。決してへこたれることなく、こんなにも闘ってきたんだから。
私は彼を抱きしめ、必死で頬ずりをした。彼は私を抱き返した。その腕の力はとても強かった。嵐の中にいるほどの強さだった。私は彼の耳元で、想いのたけを込めて告げる。
「あなた、よく頑張ったわよ。あなた、素敵だったわよ!」
そうして、娘たちとの抱擁。病室にいる家族は、みんな、ひとりずつ、手を握り抱き合った。自ら呼吸を放棄した彼は、エンジンをとめた後のプロペラのように、静かに息を吐き続けた。安らかな息の中で、彼は宇宙の懐に還っていこうとしている。
四十分後、心臓が動きを止めた。医者が何度も強いライトを目に当てて、瞳孔が開いてるのを確かめる。
「まぶしいから止めて下さい」と思わず私は叫びそうになった。
「午後三時。ご臨終です。」
肺炎を宣告されて十九時間後。
瞼を閉ざし、唇を閉ざし、全身をタオルで拭き、新しい浴衣を着せると、彼の旅立ちの支度は整った。
...頭の中は真っ白なまま、黙々とそれを片付けている最中、葬儀屋さんが「ご遺体はどこにお運びしますか」と尋ねてきた。あまりにも現実的な問いかけに、我に返った私は、とっさに「鴨川に」と答えた。
闘い終わった彼を、あの愛し続けた鴨川の自然の中でゆっくりと休ませてあげたい、そう思ったのだ。



人の形をした彼は、葬儀を終えると白い骨になってしまった、病気と闘った人の苦しみの跡が無残に残された白い骨。小さな骨のかけらを拾いながら、私も娘たちも声をあげて泣いた。
すべてが終わり、彼が小さな骨壷に納まってしまったとき、私は心の中にすごい勢いで風が吹くのを感じていた。
戦場で相棒の死を受け止めた兵士のように、託されたものの大きさを感じていたのだ。
その人の人生、その人が存在した意味は、死んだ瞬間から始まる。ましてやり残したことがいっぱいある彼の死は、残った人間にたくさんの”始まり”を与えていった。私は、彼の残したエネルギーを受けとめて、これから走りださなければならない。彼の死は私の出発点なのだ。







「真夜中、ひとり目覚めたとき、愕然とすることがあるんです。とても不安でね。何が不安なんだろう。それは人間が生きるにあたって、もっとも必要なものからドンドン離れていってるという現実なんですね。自分の生殺与奪の権利を、知らない誰かに握られてしまっているという現実。
僕はここで、それに対してイチから自分のできることをやってみたいと思ってるんです。お米を多少作り、野菜や大豆を多少作る。そのことを少し努力したら、七割から八割自給できるめどが立つ。でも、こういう現場にいなかったら、めどが立たないでしょう。食べものとエネルギーという基本的な問題が、ここでは何とか自分で自給できるわけです。
それはとっても安心材料ですよ。この安心感は想いとして伝わります。子供たちも、こうした生活ができることを知ってくれているかもしれない。
鴨川に来なかったら、僕の人生はまったく違うものになっていたでしょう」

 ●藤本敏夫●

68年反帝全学連委員長。72年から3年余り、学生運動をリードした責任を問われ、服役。72年、加藤登紀子と獄中結婚。76年、大地を守る会を始める。農事組合法人「鴨川自然王国」代表。2002年7月、没。



月の他には何一つない空に向って、誰かが歩いて行くのが見える。それはいつも私より三歩先を歩き、決して振り返らず、そして「サヨナラ」を言わない人。どんなに愛しても、どうしても自分の孤独の中へと帰って行こうとする男。その人はどんどんと歩いて行ってしまう、ひとり遠い場所をめざすように。
人は孤独な星になって、いつか空へと還っていく。そのとき、残されたものはただ見送るしかないのだろうか。せめてそのとき、あの輝かしい月がその人を照らし続けてくれることを祈るより他はない。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇<山中千尋(やまなか ちひろ)>◇◇◇◇◇◇◇◇◇


























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