『梁塵秘抄』 または ”わしふぃーるど”

有元利夫

 
○o。-38歳で夭折した天才画家-有元利夫 音楽と絵画のはざまに。o○

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「花降る日(1977年)」(116.7X90.9cm)第21回安井賞展選考委員会賞受賞

1978年、具象絵画の登竜門といわれる安井賞21年目の歴史で初の審査員特別賞を受賞。

「花びらが降る、というと人によってさまざまなことを連想するでしょうが、僕の絵の場合の降る花舞う花びらは、まさにエクスタシーそのものです。花は、洋の東西を問わずおめでたい歓喜の時に降ってくるものなのです。インドの花まつり、ボッティチェリの《春》にしてもそう。」

「古典的な画調をメルヘン的な甘美さに溶かしながら、今日風のデザイン感覚とつないでいるところが魅力であろう。--河北倫明」

目標はときかれて「雅、放胆、枯淡、稚拙、純、省略、不整美、無名色、無造作というような要素を自分のなかに持つことです.....」

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「室内楽(1980年)」(130.3X162.1cm)第24回安井賞受賞

「日本画の教室にも積極的に出て、岩絵具の技法や箔の使い方を勉強しました。あの時は本当に嬉しかった。単にフレスコ画とそっくりなのが出来るという嬉しさだけではなく、それまでは自分が描こうとするものと材料との間にどこかいつも隙間があったのが、その隙間が埋まって、ようやく体質的にもぴったりくるいい感じの材料にめぐり会ったという気がしたからです。東西両洋の宗教画を通して様式というものを意識するようになった。」

ありし日の有元さんが自らの日記に「音楽、それもバロック時代の音楽が持っている、豊かな感性というものを絵画において表してみたい、画面に音楽が漂っているような・・・・。」と記されています。

日本画の岩彩を油で溶く独特なマチエール(絵肌)、その古典絵画のような風合いと静謐な画面構成、特徴のあるフォルム、ヨーロッパのフレスコ画を思わせる主題と技法の中に、バロック音楽が聞こえてくる。初めてのヨーロッパ旅行先のイタリアでフレスコ画と出会い感動、生涯の画境を決定づけた。特に、イタリア旅行で魅了されたピエロ・デラ・フランチェスカに傾斜して以来、その質感と肌合い、絵具のしみこみ具合、食いつき具合が岩絵具と同じことに気づき、仏画との共通点を見い出し岩絵具による独自の美を展開させてきた。

「シエナの丘を鳴り響く鐘の音が、カーンカーンと波紋のように横に広く広がってゆくのとは反対に、日本の鐘はゴーン....と縦にしみこんでゆく。その存在感、その質感がフレスコ画であり、日本画の岩絵具であると...」

自らの手で絵具を作り、額縁を作り、分身のような彫刻を刻み

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有元利夫(1946~1985)


1985年2月24日に「羽が生えてきた」と最後の言葉を残し38歳という若さでこの世を去った「夭逝の画家」有元利夫(1946~1985)。
1978年には具象絵画の登竜門といわれる安井賞において初の特別賞を受賞、さらに1981年には安井賞を受賞し、その作品は高く評価され、将来を期待されながら絵画に止まらず幅広い才能を発揮させながら活躍した。
1969年四浪をして東京藝術大学美術学部デザイン科入学。



CD「RONDO<作曲:有元利夫(1980年)>」
編曲:下川英子(1980年) ハープ:中村由美子 
楽曲『RONDO』は生前の有元利夫がみずから作曲したものです。バロック音楽を愛し自らもリコーダーを吹いた。

「前からバロック音楽が好きだったせいもあり、バロック音楽の持つ重層性、構造性が、絵に通じているのではと思うことが、しばしばある。たとえば人物の絵を描いた時、その人物だけをきちんと描けていればいいというわけじゃなくて、部分部分が複雑にからみ合って、織られていく、編まれていく、からまればからまるほど、いいのである。バロック立日楽のポリフォニーの魅力がそこにある。
 ビバルディの「四季」は好きな曲の一つだ。この助の魅力は富士山にたとえられる。僕は富士山を見ると、何だかとても照れくさく、山中湖の湖面にうつると、とても正視できないと感じる。だがその俗性をとりさって、きちんと見てみると、やっぱりいいと思えてしまうから不思議だ。「四季」の魅力も、ちょうど同じようなたぐいのものではないだろうか。
 自分のリコーダーを吹く時には、「忠実な羊飼い」などで、もっぱら楽しんでいる。絵を描く時も、かたわらにいつもバロック名曲集のカセットを置く。描いていて気持ちが高ぶってくると、その気持ちを長続きさせるために、気にいった曲を流す。音楽は、なくてはならない精神安定のバロメーターとも言える。
 ここ十年ぐらい、タブローにしてもデッサンにしても、テーマは「音楽」に関したものが多い。音楽を聴いて感じることを、絵を見て感じることができるような試み、絵画で音楽感をつくりたいと思っている。洋の東西を問わず、絵画立体など素晴らしい作品には、例外なく、「音楽感」があり、その作品のまわりからは絶えず音楽が聴こえてくる。」


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《浮遊すること》

「僕の絵の中ではいろんなものが、たとえば紅白の玉や花、トランプや花びらなどがふわふわ飛んでいることがあります。花火も空に向かうし、はては人間そのものも宙に浮く。どうして飛んだり浮いたりしているのかと問われれば、僕にとってはそれがエクスタシーの表現だからとしか答えようがありません。」

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「重奏(1975年)」(100X50cm)

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「ひと言で言えば、風化したものの方が好きなのです。…風化というのはとりもなさずものが時間に覆われることだと思う。時間に覆われることによって、そのものの在り方は余計強くなる。時間に耐えて、風化して、それでも「そこに在る」というものは、ピカピカの出来たてとは較べものにならないくらいの存在感というか、リアリティを持っているように思えるのです。有元利夫」

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新潮VIDEO『有元利夫 -絵と音の世界-』

ルネサンス風の典雅な人物像によって独特の世界を創り上げた夭折の天才画家・有元利夫。彼の残したタブロー、版画、彫刻の中から約60点の作品を選び、彼が愛したバロックの旋律と重ね合わせてその詩的世界をビデオ映像で表現。生前の作家の創作風景も特別収録。カラー42分。



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