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NO-NAMEの隠れ家

NO-NAMEの隠れ家

サザンオールスターズ (2)

作品レビュー…の続き

16thシングル
『Ya Ya (あの時代を忘れない)』
(1982.10.5)



アルバム『NUDE MAN』に続いてリリースされたシングル。名曲ですね。
子供が注射をされているイラストのジャケット写真は、何の意味があるのかわかりません(笑)。桑田さん自身もネタにしてたりしますが。

1.Ya Ya (あの時代を忘れない) ★★★★☆

学生時代を懐かしんだバラード。胸を打つような切ないメロディーラインと、ひとつひとつ思い出を噛み締めるように進むバンドサウンドの演奏が本当に染みます。
ライブでもラストに演奏されることが多いですね。
間奏のベースとキーボードも泣かせます。

2.シャッポ ★★★☆

作曲名義は「サザンオールスターズ」。
ウエストコーストサウンドがひびき渡る洗練された楽曲。
この頃からサザンはAOR色を楽曲中に強く取り入れ始めたのですが、この曲もその傾向が強いですね。
これまた隠れた名曲。歌詞もいいですね。

(記:2006.3.28)










バラードコンピレーションアルバム
『バラッド '77~'82』
(1982.12.5)



DISC 1

1.朝方ムーンライト
2.ラチエン通りのシスター
3.私はピアノ
4.Just a Little Bit
5.シャ・ラ・ラ
6.涙のアベニュー
7.松田の子守唄
8.夏をあきらめて
9.別れ話は最後に
10.いとしのエリー

DISC 2

1.恋の女のストーリー
2.ひょうたんからこま
3.恋はお熱く
4.わすれじのレイド・バック
5.Oh! クラウディア
6.働けロック・バンド (workin' for T.V.)
7.YA YA (あの時代を忘れない)
8.流れる雲を追いかけて
9.思い出のスター・ダスト
10.素顔で踊らせて

バラッドばかりを集めたコンピレーション盤。タイトルが「'77~'82」となっていて、「あれっ、サザンのデビューって1978年じゃないの?」と気付かれた方もいるかもしれませんが、メジャーデビュー前に制作された曲が入っていることから、こうしたタイトルになったようです。この「バラッド」シリーズは、現在まで3作続いている人気シリーズになりました。
今作は、初期のサザンの魅力が存分に味わえる一枚。どの曲も、初期ならではの味があります。個人的には、「バラッド」シリーズ3作の中では、これが一番好きだなぁ。
『シャ・ラ・ラ』・『ひょうたんからこま』・『わすれじのレイド・バック』・『YA YA (あの時代を忘れない)』の4曲は、シングル盤を除くと、現在発売されているアルバムの中では今作だけに収録されています。
(記:2008.8.5)










17thシングル
『ボディ・スペシャルII (BODY SPECIAL)』
(1983.3.5)



前のシングル曲がベタなバラード…だったからかは知りませんが、今度はストレートなロックナンバーできました。メイン曲が「II」であって、カップリングには「I」…、しかも相互の曲に関係性は無しというのがまた。当然タイトルを後に付けたのは「I」のほうでしょうね。「~II」ってのは、山口百恵『プレイバック part II』へのオマージュか!?

1.ボディ・スペシャルII (BODY SPECIAL) ★★★

燃える闘魂ロックナンバー。ライブでは定番中の定番。これでもかとばかりに合いの手を入れられる作りになっていて、これで盛り上がらなきゃ嘘でしょう。
CDではアルバム未収録(限定盤コンピレーションを除く)なので、シングルを入手して聴くしかありません。現在ではマキシ化された再発シングルが売られていますから以前よりは入手しやすいですね。
ただ、この曲はとにかくライブにて格段に格好良く演奏されるので、CDで聴く分にはどうしても物足りなさがありますね。是非、ライブで聴きましょう。
2番のサビ前、トーキングスタイルでの「I wonder if you can love me」の部分は、自身の楽曲『栞のテーマ』からの引用でしょうか。

2.ボディ・スペシャルI (BODY SPECIAL) ★★★

原坊作曲のインストナンバー。なんともほのぼのとした曲調は彼女らしく微笑ましいです。BGMとしても良く出来ていると思います。

(記:2007.4.29)










6thアルバム
『綺麗』
(1983.7.5)



前作から1年ぶりの6thアルバム。初めて「大々的に」コンピューター・サウンドを取り入れたアルバムになっており、これまでの「ロックバンド」・「学生バンド」的なノリから、新たな段階へ移行した作品と言えそうです。前作『NUDE MAN』と比べてみると、かなり大胆なシフト・チェンジですね。歌詞の面で言えば、『かしの樹の下で』に代表されるように社会的な内容をもった楽曲も増え始めています。
様々な意味で、大きな視点で見たときに「サザン・第2期」へのターニング・ポイントとなっている作品でしょう。
まだアレンジの面は手馴れていないせいも当然あるでしょうが、アルバムとしての統一感には欠け、結果的には出来上がった楽曲をとにかく詰め込んだ「作品集」的なイメージの一枚になっています。骨になる楽曲がないこともあり、やや起伏に欠ける感あり。後追いで聴くなら、後回しにしていいアルバムかもしれません。前後の作品を聴き込んだ上で今作を聴くと面白いかも。

1.マチルダBABY ★★★

SEを経て響き渡るシンセサイザーの音色が、サザンの音楽的な変革を象徴しています。YMOの細野晴臣氏が作曲したTVゲーム『ゼビウス』の挿入音楽に影響を受けて作られたナンバー。ライブではパワフルなアレンジに姿を変えて演奏され、とても盛り上がります。口語体を上手くメロディーに乗せて、なおかつストーリー展開していく歌詞が秀逸。

2.赤い炎の女 ★★★

アップテンポな楽曲が続きます。ラテン調の情熱的なナンバー。歌詞は、一聴しただけでは分かりづらいですが、女性の同性愛について歌ったもの。

3.かしの樹の下で ★★★

桑田さんと原坊のデュエット曲ですが、ラブ・ソングではなく、中国の残留孤児について歌ったもの。アレンジにおいても、中国の胡弓が用いられており、雰囲気の出た作品に仕上がっています。

4.星降る夜のHARLOT ★★★

レゲエです。『恋するマンスリー・デイ』に印象が近く、個人的にはそこまで目新しさは感じられない曲でした。歌詞は、売春婦について歌ったもの。

5.ALLSTARS’ JUNGO ★★★

ジャングル・ビート+テクノ+ラップ、という凄い曲。挑戦的な姿勢が「これでもか」とばかりに伝わってきます。歌詞のほうは、まず正確に聴き取ることは不可能でしょう。

6.そんなヒロシに騙されて ★★★☆

原坊が歌う、歌謡曲ど真ん中のナンバー。高田みづえが歌ったものが有名ですね。演奏はベンチャーズを意識しているのでしょうか。間奏では「ユウコ~♪」と、当時アイドルに対してよく行われていたコールが。
コンピレーション・アルバム『海のYeah!!』では、この曲だけ1980年代の楽曲ながらDISC-2に収録されています。

7.NEVER FALL IN LOVE AGAIN ★★★★

しっとりと切ない失恋バラッド。曲中でも「やけに9月の風が~」と歌われていますが、秋に良く似合いそうな雰囲気。「もう逢うことも ないね」で終わるのが悲しすぎます。

8.YELLOW NEY YORKER ★★★

シンプルな3コードのロックン・ロール。このアルバムの流れにおいては、テンションを上げるのに一役買っていますね。歌詞は、アメリカで生活する黄色人種に「ガンバレ!」とエールを送るもの。

9.MICO ★★★

「MICO」とは弘田三枝子さんのこと。『チャコの海岸物語』に出てくる「ミーコ」も彼女のことです。なかなか面白い音を使っています。

10.サラ・ジェーン ★★★★

ゴージャスなアレンジで仕上げたAOR風バラッド。このアレンジを聴いているだけでご飯3杯いけます。歌詞は、乾いた日常から脱出するために家出した少女の物語。あまりナナメから見るべき歌詞ではないのかもしれませんが、「叱りつけられたことさえなく」からの部分は、現代にもそのまま伝わるメッセージで示唆に富んでいます。

11.南たいへいよ音頭 ★★★

ムクちゃん作詞・作曲・ヴォーカル。ムクちゃんらしいとしか言いようがないですね。ライブで聴きたいのですが、もう無理なのかなぁ。「砂山オールスターズ」のアルバムでは、新たなアレンジで生まれ変わっています。

12.ALLSTARS’ JUNGO (Instrumental) (評価なし)

5曲目のインストルメンタル。あっという間に終わります。前後の曲の繋ぎ的な意味で使用されているのでしょうか。『南たいへいよ音頭』→『EMANON』だとギャップがありすぎますから。

13.EMANON ★★★★

18thシングル。1983年7月5日リリース。一般受けしそうな曲調でないことに加え、アルバムと同時発売、A面B面ともそのアルバムに収録されているということで、セールスは落ち込みました。まぁ、初めからセールスは度外視していたのでしょう。
歌謡曲的なメロディーラインを離れてAOR・フュージョン的な音作りが行われおり、ある意味、サザンの極地とも言えるサウンドでしょう。洗練された大人の雰囲気たっぷりのナンバーに仕上がっています。2004年~2005年の年越しライブ『暮れのサナカ』で十数年ぶりに披露されました。

14.旅姿六人衆 ★★★★

ベタなロック・バラード。最後の「La la la la~♪」はまさしく『Hey, Jude』。サザンの活動の舞台裏を支えるスタッフへの感謝の気持ちを綴った曲で、途中に出てくる「Mr.Suizu」もスタッフの名前(水津さん)。大森さんが抜けてサザンが5人になった今では、もうこの曲が披露されることもないのでしょう。

総合 ★★★☆

(記:2008.8.17)










19thシングル
『東京シャッフル』
(1983.11.5)



4ヶ月ぶりの新曲。表題曲『東京シャッフル』で、NHK紅白歌合戦に3度目の出場を果たし、メンバー全員で楽器を持たずにダンスを披露しました。これ以降、サザンは紅白には出場していません。c/wにはター坊による楽曲を収録。
2曲ともアルバムには未収録(限定版コンピレーション・アルバム『すいか』を除く)となっています。

1.東京シャッフル ★★★★

タイトル通りのシャッフルのリズムで、古き良き和製ジャズを再現したナンバーです。アルバムでコンピューター・サウンドを取り入れる一方、シングルではこうした楽曲にもトライしていたんですね。とても良く出来ていると思います。
AAAの『唇からロマンチカ』という楽曲がこの曲に面白いほど似ています。まぁ、同じようなコンセプトで作ったらこうなったということで、おそらくパクリではないでしょう。

2.Still I Love You ★★★☆

ター坊が作詞・作曲・ヴォーカルを務めるカントリー調のナンバー。ほのぼのとした雰囲気が独特です。メンバー全員によるコーラスも良いですね。

(記:2008.8.17)










7thアルバム
『人気者で行こう』
(1984.7.7)



先行シングルとしてヒットした『ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)』を含む10thアルバム。前作『綺麗』で押し進めたコンピューター・サウンド化と従来のサザンの雑食性、更に同時期にサザンが取り入れていたAOR的なアレンジメントがバランス良く結びついた傑作と呼べる一枚でしょう。自ら「人気者」と規定したタイトルに恥じない出来の充実作で、脱「学生バンド」を図ったサザンが、早くも理想的なサウンドを作り上げてしまった感があります。
歌詞の面でも、かねてから日本語の音としての響きに注目してきた桑田さんの拘りが今作では非常に良く覗えます。日本語を英語風に聴かせる手法は『Japaneggae』で顕著。『よどみ萎え、枯れて舞え』では「愛倫浮気症(アイリンブーケショー)」なる造語を使用している他、『あっという間の夢のTonight』では「I, Surrender」(=愛されんだぁ)、『夕方 Hold On Me』では「you’ve got a」(=夕方)といった具合に、日本語・英語の押韻・ダブルミーニングで、言葉の垣根を取り払うような挑戦的な姿勢を見ることができます。ちなみに、今作の歌詞カードは桑田さん直筆のもの。
今作の後、サザンは海外進出を試み、その後は更にアレンジを突き詰めた大作『kamakura』へと行き着くのです。

1.Japaneggae (ジャパネゲエ) ★★★☆

タイトル通り、和のテイストとレゲエを結び付けてしまったナンバー。出だしの「愛苦ねば」は仮唄段階で「I could never…」と歌ってたいものを強引に日本語で当てはめてしまったもの。
この楽曲から10数年後にも、『CRY 哀 CRY』・『通りゃんせ』など、「和」にロックを融合させた楽曲を作るなど、桑田さんの制作意欲は衰えを見せません。

2.よどみ萎え、枯れて舞え ★★★★

R&B調+桑田節歌謡曲メロディーラインで、ファン受けが良さそうなキャッチーなナンバーです。後の『YARLEN SHUFFLE』も、この曲を通過して出てきたものでしょうか。歌詞もノッていて、前述の「愛倫浮気症」の他、「TOKIOの貞操は変な情操にゆがめられ」・「胸元最高にshyな妄想で高なれば」と独特の言い回し。これらのがフレーズがサウンドに乗って歌われたとき、更に魅力を増すんですよね。ライブでももっと聴いてみたいです。「chap chap chap」と、声を合わせて歌うと楽しそう。

3.ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY) ★★★★★

20thシングル。1984年6月25日リリース。丁度デビュー6年目の記念日にリリースされたわけですが、この曲を聴くと、サザンも音楽的に成長を遂げたなぁと実感します。シンセサイザーを用いた近未来的なイントロに、聞いたこともないようなメロディーライン。音階的には下がっているのに疾走感を失わないサビ…etc、新鮮な要素を数多く取り入れて、非常に洗練された楽曲に仕上がっています。歌詞は、流行り物に群がる若い女性達を風刺したもの。

4.開きっ放しのマシュルーム ★★★

パンク・ロック。前作『綺麗』収録の『YELLOW NEW YORKER』の続編のような楽曲ですね。

5.あっという間の夢のTONGIHT ★★★☆

サンバ・ポップ+AOR、でしょうか。軽快なサウンドにムーディーな歌詞が乗ります。「心からの~♪」というファルセットの部分からサビへの流れが綺麗ですね。

6.シャボン ★★★☆

原坊ボーカルで情感たっぷりのミディアム・ナンバー。情景をイメージ出来てしまいそうな楽曲。後に長山洋子がカバーしました。

7.海 ★★★★☆

当初はシングル予定だったのが、最終的に『ミス・ブランニュー・デイ』にその座を譲ったというこの曲。サザンを表す一つのキーワードでもある「海」をそのままタイトルに持ってきて、どういった曲なのかと思えば、洗練されたアレンジメントで桑田さんも雰囲気たっぷりに歌い上げ、リスナーをうっとりさせるミディアム・ラブソング。歌詞も、ベタな感じにはなっておらず、お洒落な言葉選びがなされていますね。長くファンに愛されている名曲。個人的にも、サザンの中で5本の指に入るほど好きな曲です。

8.夕方 Hold On Me ★★★☆

ホーン・セクションを前面に押し出したポップ・ナンバーで、とてもキャッチーな仕上がり。歌いやすく盛り上がりやすく、パーティー・ソングとしても十分に機能します。途中、ア・カペラになるあたりも凝っていますね。約20年後の『雨上がりにもう一度キスをして』とは、時代を隔てて双子のような関係にある曲でしょう。

9.女のカッパ ★★★☆

邦楽のスタンダードを敢えて無視したようなメロディー展開のジャジーな1曲。「同じ顔の人が憎める時代」というのも、考えさせられるようなフレーズですね。

10.メリケン情緒は涙のカラー ★★★☆

イントロのキーボードは『My Foreplay Music』を彷彿とさせます。横浜を舞台にした歌謡ロックで、歌詞には固有名詞が多数登場します。今アルバム中では、かなりとっつきやすいナンバーではないでしょうか。

11.なんば君の事務所 ★★★

ター坊が作曲したインスト・ナンバー。ここではギタリストらしく、ギターを前面に押し出した楽曲になっています。タイトルの由来は不明。

12.祭はラッパッパ ★★★

ファンク・ロックに日本的な祭りのエッセンスを加えたようなナンバー。演奏の激しさは今作中でも指折りです。

13.Dear John ★★★☆

1980年に亡くなったジョン・レノンに捧げるジャズ・バラッド。歌詞にも、彼にちなんだ固有名詞が数多く盛り込まれています。ストリングスの使い方が、これまでの楽曲とはかなり違います。ディズニー風といいましょうか。大人っぽい雰囲気でアルバムを締めくくってくれます。

総合 ★★★★☆

(記:2008.8.17)










21stシングル
『Tarako』
(1984.10.21)



アルバム『人気者で行こう』のリリース、それに続くライブ・ツアーを終えたサザンは、ロサンゼルスに渡ります。この時期のサザンは、海外進出を視野に入れており、その第一歩として行われたのが今作のレコーディングでした。
ニューウェイブの色濃いA面の『Tarako』、アルバム『人気者で行こう』収録曲を再録音したB面の『Japaneggae (Sentimental)』は、いずれも全歌詞英語。この時期のサザンのバイタリティを感じることができますね。さすがに日本のお茶の間からは敬遠されたのか、ヒットチャートの上位に食い込むとはいかなかったようですが。
ジャケットに大きく書かれた「ら」の文字。果たしてその意味は…?「L.A」(ロサンゼルス)の日本語読みという説もありますが、真相の程は(笑)。2曲ともアルバムには完全未収録なので、再発売されたマキシシングルを買って聴きましょう。
なお、海外進出の計画は、1ヶ月のロス滞在の結果、「飽きた」という理由により消えていったそうです(笑)。

1.Tarako ★★★

シングルA面では初となる全歌詞英語ナンバー。『ミス・ブランニュー・デイ』・『人気者で行こう』のヒットにより、文字通り人気者になったサザンが、こんな一見さんを寄せ付けないシングルをリリースするという事自体が、サザンによる時代の牽引宣言のように感じられますね。『kamakura』での活動一時休止、『みんなのうた』での復活後のサザンでは、こうした姿勢は(奇抜で一般受けしそうにないシングルをリリースすることは多々あったにせよ)、見られなくなりました。『綺麗』~『人気者で行こう』~『kamakura』あたりのサザンが好きだというオールドファンが多いのも、当時のサザンのそうしたエネルギッシュな姿勢に由来するのかな、とも。
サウンドは、テクノ色の入った近未来的ポップ・ロック。サザン本来のバンドサウンドとは異なる趣です。
タイトルは楽曲とは何の関係もなく、奥田民生の『マシマロ』のように「マシマロは関係ないー」との断りすら入っていません(笑)。「朝食にたらこが出てきたのが由来」と桑田さんは語っていますが、もしかしたら坂本九の『SUKIYAKI』を意識したのかもしれないですね。

2.Japaneggae (Sentimental) ★★★

アルバム『人気者で行こう』の1曲目に収録されている『Japaneggae』の英語詞バージョン。演奏全体も別テイクとなっています。まぁ、オリジナルのほうは歌詞が面白いんで、このバージョンは特にどうってことはないです。

(記:2008.8.1)










8thアルバム
『kamakura』
(1985.9.14)



当時としてはべらぼうに長い約1800時間を費やして制作された2枚組アルバム。発売当時、各方面から大絶賛されました。サンプリング、ドラムマシン等、当時最先端の技術が多数用いられており、全体を通して打ち込み色が強い、かなり実験的な作品です。曲調そのものは多種多様でバラエティ豊かな全20曲が収録されていますが、大部分の楽曲は打ち込みの音が支配するアレンジに。土臭いバンドらしさが影を潜め、それまでのサザンのサウンドから大きく飛躍したアルバムと言えるでしょう。『綺麗』以降、本格的にコンピューター・サウンドを取り入れたサザンのひとつの到達点。
ただ、凝った打ち込みアレンジがプラスに作用しているかと言えば、それは素直に「うん」とは言えるわけではなく、メロディーそのものの良さをアレンジが殺してしまっているような楽曲も散見されます。また、コンピューター・サウンドというのは進化が早い分だけに、どうしても時代を感じさせてしまうもので、当時最先端だったこのサウンドも、今聴くと古く感じてしまいます。これ以前の彼らの作品(特に初期)のほうがいつまでも普遍的な良さを持ち続けているのに対して、この時期の作品からは明らかにそれらの作品よりも古臭さを感じてしまうのが面白いものです。
彼らはこの作品を最後に活動を休止するわけですが(表向きの理由は原由子の産休として)、長期に渡るレコーディングからくるメンバー間の人間関係のひずみ(この時期、桑田佳祐と関口和之の間に確執が起こっていました)に加え、音楽的にも行き着くところまで行き着いてしまった限界ギリギリのサザンにとって、ここでのリセットは、当然の帰結だったのでしょう。

DISC 1

1.Computer Children ★★☆

当時最先端のコンピューター・サウンドをふんだんに取り入れた6分9秒の音のジェット・コースター。いきなりの先制パンチをリスナーにかまします。ブックレットには「『Computer Children』には、スクラッチ、不規則なリズムなど、各種のEffect処理が行われています。未体験のサザン・サウンドをお楽しみください。」との注意書きが。当時はこうでも書かないと、プレイヤーの音飛びと勘違いされるような時代でした。歌詞は、テレビゲームに熱中し家に閉じこもる子供達への警鐘。こういった歌詞を、作り込んだコンピューター・サウンドに乗せて歌っているのが実に皮肉っぽいですね。

2.真昼の情景 (このせまい野原いっぱい) ★★☆

タイトルは、森山良子の『この広い野原いっぱい』から。『松田の子守唄』もそうだけど、時々こうやってベタなパロディーをやってきますよね。サウンドは毛ガニのパーカッションが大活躍するアフリカンで、歌詞は共産主義国家を皮肉ったもの。

3.古戦場で濡れん坊は昭和のHero ★★☆

8分の7拍子という独特のリズムで演奏されるナンバー。アレンジも打ち込みで色々と凝っていますが、個人的にはあまり好きな曲ではないです。

4.愛する女性とのすれ違い ★★★☆

4曲目でようやくホッと一息つける従来からの王道ミディアム・バラード。ソフトなポップスですね。倦怠期の恋人同士を描いたラブ・ソング。優しく美しいメロディー・ラインで、隠れた人気曲です。

5.死体置き場でロマンスを ★★★

打ち込みポップ・ナンバー。覚えやすくノリの良いメロディーも良いですが、今作の面白さはやはり歌詞。ストーリー展開する歌詞は、『マチルダBABY』・『メリケン情緒は涙のカラー』に続く桑田サスペンス劇場。これ以降の楽曲だと、『ホリデイ ~スリラー「魔の休日」より』や『殺しの接吻』などがありますね。今作はハラハラドキドキさせておいて、しっかりとオチまでついています(笑)。間奏の電話の声の主はDJコービーこと小林克也氏。また、1番終了後に桑田さんが何か叫んでいるのはどうやら「cachito!(カチート)」が正解のようです。音はさすがに今聴くと弱々しいです。

6.欲しくて欲しくてたまらない ★★★☆

DISC-1のベスト・トラックは個人的にはこれ! ジャズの香りも入った歌謡ロック。桑田節メロディー・ラインと凝ったアレンジメントが良く合っています。歌詞もエロティックで言うことなし。フェイドアウトの仕方も洒落ています。ライブではCDとはまた異なったアレンジで演奏されます。これがまた良いっ。

7.Happy Brithday ★★★

確かジュディ・オングに「日本には誕生日の歌がないから桑田君が作ってよ」と言われたのがきっかけで作ったと桑田さんが言っていたような(記憶が曖昧)。ポップな印象の1曲ですが、打ち込み過多な感じもあり、「グルーヴがメチャクチャ、ひどい」とは、後の桑田さん自身による言(こちらは記憶が鮮明)。「みんなで祝おう ハッピーバースデー」的なノリではなく、恋人同士で過ごすちょっとエッチな誕生日という舞台設定なので、カラオケ向きではないです(笑)。

8.メロディ (Melody) ★★★

23rdシングル。1985年8月21日リリース。星空の下で聴きたいような綺麗なバラード。個人的には、ドラムの音に時代を感じてしまうのが残念なところ。しかし、近年の楽曲である『LONELY WOMAN』あたりは、こうした音を上手く現代風アレンジとして生かしていますよね。『涙のキッス』なんかもこの曲を経ての流れなんでしょうか。歌詞の英語の部分は文法を無視してはめ込んだらしく、桑田さん自身はこの曲をあまり気に入っていないようです。

9.吉田拓郎の唄 ★★★

打ち込みアレンジをポップに昇華させているという点では、この曲はそれなりに高いレベルにあるかと思います。歌詞は、一見すると吉田拓郎をボロボロにけなしているようですが、これは当時引退宣言をした吉田拓郎に対して「やめるな」という桑田さんの愛情たっぷりのメッセージ。2003年のライブツアーでは、当時闘病中の拓郎さんに対して、新たに歌詞を書き直したこの曲を演奏しました。

10.鎌倉物語 ★★★☆

原坊ヴォーカルの名曲。イントロだけで美しい世界へと引き込まれてしまいます。鎌倉に行ったら是非この曲を聴きたいですね。当時、原坊はご懐妊中ということで、自宅マンションまで機材を運び、ベッドの上でレコーディングをしたというのは有名なエピソードですね。

DISC 2

1.顔 ★★★

DISC-1の『Computer Children』と同様、DISC-2も打ち込み色の激しい楽曲で幕を開けます。コンパクトなメロディー構成の上で、自身の顔に対するコンプレックスが歌われる1曲。

2.Bye Bye My Love (U are the one) ★★★★

22ndシングル。1985年5月29日リリース。アレンジにリアル・フィッシュを迎えて制作された、1980年代サザンを代表する楽曲のひとつ。詞曲ともにレベルの高い1曲で、サウンド面では特に間奏のアレンジメントが素晴らしいです。初めてこの曲を聴いたときは、本当に感動したものです。歌詞のほうも負けず劣らずで、「水色の天使が舞う あの虹の彼方に 夢出づる人魚のような 思い出が住むという」・「悲しみの雨が降る この街のどこかで 人々が眠る頃 俺は泣き続ける」と、桑田さんにしか書けないであろうフレーズばかり。「波音は情事のゴスペル」という表現も素晴らしいですね。

3.Brown Cherry ★★★☆

のっけから「愛撫我多裸婦」=I’ve gotta laughですよ。どうですか、お客さん(笑)。前作『Japaneggae』を更に深化させ、日本語+英語の「ジャングリッシュ」をとうとう完成させてしまった楽曲。あけっぴろげな性の表現を英語でごまかして、ルールなしの歌詞世界を作り上げています。「放送禁止用語なんて恐くない!」といった具合に連発されるフレーズは圧巻!! 乾杯。

4.Please! ★★

AORの6分近くあるナンバー。色々と凝っているのですが、さすがに長くてダレてしまうかと…。苦手です。ごめんなさい。

5.星空のビリー・ホリデイ ★★★☆

麻薬漬けとなり44歳で亡くなった「レディ・デイ」ビリー・ホリデイへ贈る楽曲。美しいバラードです。八木正生との共作。本当に丁寧に作られ、丁寧に演奏されているのが、聴いていてよくわかります。この曲にはさすがにギャグは挿めないでしょう。

6.最後の日射病 ★★★

ムクちゃん作詞・作曲・ヴォーカルのふわふわしたポップ・ナンバー。ムクちゃんらしさが十二分に発揮されていますね。「Hi!lifeは絶頂(ヤマ)ね」・「Hi!太陽は母(ママ)ね」なんていうヘンテコリンなサビも、彼のキャラだから絵になるというもの。「そういえば言い忘れてた」から「I love you honey, my one」あたりのくだりも可愛らしいですね。

7.夕陽に別れを告げて ~ メリーゴーランド ★★★★

桑田さんの青春時代である鎌倉学園高校の思い出を歌ったフォーク・ロック。ノスタルジックな詞曲で、根強い人気を誇る1曲です。アレンジも今アルバム特有の機械色は薄く、とても聴きやすく仕上がっていますね。最後に、今アルバムのラスト・ナンバーである『悲しみはメリーゴーランド』のインストが少しだけ流れます。これは蛇足。

8.怪物君の空 ★★★

ややクセのあるHRナンバー。素直にサビに行かず、「世に論ず前に手を~」の部分で一度独特の雰囲気に変化します。2番の「たまの誤報には 身を震わせながらにStand-by」で早口になるのがワイルドでいいですね。ライブでとても生きる曲だと思うのですが、最近はまったく演奏されていません。タイトルは藤子不二雄A氏の『怪物くん』からの引用。サウンド自体は新鮮ですが、この位置にあるせいで損をしているような気がします。

9.Long-haired Lady ★★★

終始低音キーで歌われる哀愁漂うナンバー。少し遅れて桑田さん自身の声が後を追うというコーラスこの曲に良く似合ったアイデアですね。こうした輪唱の手法は『匂艶THE NIGHT CLUB』で用いられて以来でしょうか。これまたピンで聴けば悪くない曲ですが、ここまで続けて聴いてくるとインパクトには欠けますね。

10.悲しみはメリーゴーランド ★★☆

物悲しい雰囲気を漂わせるフォーク・ナンバー。歌詞は『かしの樹の下で』でも歌われた残留孤児について。曲全体としては、ラストにもってくるにはやや弱い気もしますね。バラードで終わらせてもよかったんじゃないかな、と。

総合 ★★★★

(記:2008.8.15)










バラードコンピレーションアルバム
『バラッド2 '83~'86』
(1987.6.21)



DISC 1

1.かしの樹の下で
2.愛する女性とのすれ違い
3.あっという間の夢のTONIGHT
4.Bye Bye My Love (U are the one)
5.NEVER FALL IN LOVE AGAIN
6.鎌倉物語
7.海
8.Please!
9.サラ・ジェーン
10.夕陽に別れを告げて ~ メリーゴーランド

DISC 2

1.シャボン
2.JAPANEGGAE (ジャパネゲエ)
3.メロディ (Melody)
4.女のカッパ
5.Long-haired Lady
6.EMANON
7.星空のビリー・ホリデイ
8.悲しみはメリーゴーランド
9.旅姿六人衆
10.Dear John

4年半ぶりとなるシリーズ第2弾。活動休止中にリリースされました。今作は、『綺麗』・『人気者で行こう』・『kamakura』の3枚のアルバムからの選曲。よってダイジェスト的な側面が強い一枚で、ここでしか聴けないというアルバム未収録曲もありません。これを積極的に聴くよりは、オリジナルアルバムを全て聴いてもらいたいと思います。シリーズ3作品の中で、最も存在価値の薄い1作。
なお、『女のカッパ』のみ、冒頭に虫の泣き声が追加された別バージョンで収録。まぁ、ほんの5秒くらいの違いなので、マニア以外は特にチェックする必要はないかなと(笑)。
(記:2008.8.5)










24thシングル
『みんなのうた』
(1988.6.25)



アルバム『kamakura』を最後に活動を休止していたサザンの、およそ2年9ヶ月ぶりとなる復活シングル。デビュー10周年に合わせての発売となりました。
表題曲『みんなのうた』。もちろん、NHKの「みんなのうた」とは関係ありません。世間が待ちに待った活動再開に合わせて、また、この年の7月~9月に行われたライブ・ツアー『大復活祭』を盛り上げるために、とにかくわかりやすいアップテンポなナンバーでの復活となりました。また、この作品から小林武史がアレンジとプロデュース業で参加するようになり、彼は以後、1990年代前半のサザンを支えることになります。
一方、サザンの活動休止期間に桑田さんのソロアルバム『Keisuke Kuwata』の制作が続けられていたのですが、どうしてもデビュー10周年に合わせてサザンを復活させたいというレコード会社の方針により、この『みんなのうた』でサザンが復活し、その2週間後に桑田さんのソロアルバムが発売されるという、なんとも不可思議な状況になってしまいます。ライブ・ツアー『大復活祭』では、セットリストの中に桑田ソロ・コーナーが設けられるという構成になりました。このあたりの桑田さんの不満が、c/w『おいしいね ~傑作物語』に表れています。

1.みんなのうた ★★★☆

『kamakura』では抑えられていたバンドテイストを復活させ、わかりやすい歌詞、わかりやすいメロディーで、リスナーとの一体感を煽るには抜群のアッパーな1曲。ライブでは、現在まで毎回のように演奏されています。ライブでの観客の振り、桑田さんの歌詞間違え、そしてそれをごまかす「ウィー!!」という煽りも含めて(笑)、もう定番ですね。

2.おいしいね ~傑作物語 ★★★

メジャーなA面とはうってかわって、曇りがかったようなアレンジメントや打ち込み音が、『kamakura』の頃の面影を残すマイナー・ロック。
サビでは「産業ロック」という単語まで出して、商業主義の音楽業界を痛烈に皮肉った歌詞が印象的。A・B面でのこの二面性、サザンらしいですね。復活後はそれまでに比べて風刺ソングが格段に増えていきます。

(記:2008.8.4)


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