わたせせいぞうさんのこと
昨年末の高校同窓会の忘年会にイラストレーターのわたせせいぞうさんが来て下さった。同窓会に出たのは初めてだとおっしゃっていたので、今還暦のわたせさんには、卒業後42年ぶりの同窓会になる。とてもシャイな方で、その上イラストレーターの仕事柄、夜仕事が佳境にはいるとやらで、毎月夜開かれている月例会には、なかなか顔を出せずにいらしたらしい。それでも、年に一回の総会だけでもいらしてくださいと極力お願いしておいた。年が明けて年賀状と共に、「わたせせいぞう世界展」の招待状が届いた。私は追っかけみたいで、行くのをためらっていたのだが、せっかくのお誘いなので、花束を持って出かけることにした。展覧会は東京駅の大丸の12Fにある大丸ミュージアムで、開かれていた。サイン会のある日に合わせて出かけたのだが、すごい人気で午後からのサイン会なのに、皆、朝10時から並んで整理券を取ったのだという。私は整理券がもらえずにがっかりしていたところ、高校の後輩がいるのを見つけ、後で私も一緒に面会できるよう手はずを整えてもらうことになった。わたせせいぞうさんが著名なイラストレーターだということは知っていたが、遠くからサイン会に駆けつける熱狂的なファンがたくさんいるのを目の当たりにし、とてもビックリすると同時に後輩として誇らしく思った。サイン会にはたくさんの人が階段のずっと下まで並んでいて、列がなかなか前に進まない。どうしてなのかとわたせさんを見てみたら、ファンのひとりひとりとゆっくりと話をしてから、おもむろにサインをし、握手をしたり、写真を撮ったりしているのだ。サイン会だというのに、全く流れ作業的ではない。わたせせいぞうさんとファンの対話のところだけ、まるで時間がゆっくりと流れているかのようだ。こころゆくまで対話をしてからサインをするので、列が進まないわけだ。でも、ファンはきっと凄く嬉しいに違いない。わたせさんのファンを大切にしている姿勢が本当に感じられた。後で、別室に通してもらい中学の話や、高校の同窓の話をした。ここでも、ゆっくり話をしてくださって、ちっとも追い返そうという態度をみじんも見せないわたせさんに驚いた。わたせさんはご自分の描くイラストの主人公そっくりで、とてもお洒落で若々しく、どう見ても60才にはとても見えない。同窓であってもお逢いできると思っていなかったわたせさんにお逢いできて、心から嬉しく思っている。これからもたまには(特に年に1回の総会には)出て来ていただければ同窓生にとっても励みになるし、どんなに皆も喜ぶだろうと思う。