久米信行「縁尋奇妙日記」

2004/09/11(土)07:23

ファンスキーと中小企業経営と人生は...ちょっと似ている

昨冬、ボーダーとぶつかって 膝の十字靭帯が打ち切れ、松葉杖ぐらしでしたが、 押上のカリスマ鍼灸師、権田先生のおかげで、 雪上復帰と相成りました。 しかも、厄年だというのに、 御茶ノ水に行ったら、1メーターに満たない ファンスキーが目に留まり、 ついつい衝動買いしてしまったのです。 それは、9800円のsnugとかいう 聞いたことのない板だったのですが 著名ブランドのプラスティック金具よりは 鉄板金具が頑丈そうだったので、 実質重視で決めました。         @      @      @ 私は、今から、20年も前に、 同じメーターでも、2mもあるような時代もののスキーで、 エアーならぬゲレシュプという時代ものの技術で SAJの1級を取った人間なのです。 なにせお金がかかるスポーツゆえ、 在学中は、スキースクールのインストラクターの バイトをしながら山篭りをしていたのでした。 ですから、一言で言えば、古い滑りの人。         @      @      @ ところが.... 2年前の札幌出張に乗じて、 戯れにカービングスキーのレッスンを受けた時、 これまでの常識をすべて否定される、 コペルニクス的展開に見舞われ、 大いなるショックを受けました。 もう一度、プルークからやり直し。 そして、なんとか、時代に追いつきました。         @      @      @ 今度は、さらに短いファンスキーです。 こんなの「ワケナイ」と、 口笛吹きながら滑り始めたら.... 板がふらふらふらふらして暴走。 いきなり死ぬかと思いました。         @      @      @ そう、このファンスキーなるもの、 しっかり真ん中のいい位置に乗っていないと、 スキーがスキーとしての機能を果たさない、 おそるべき道具なのです。 長い板やら、お気楽カービングスキーなどに乗っていると、 ターンの後半などで、後傾してようがお構えなしで、 ゆうゆう次のターンに入れます。 ところが、ファンスキーはそうはいかない。         @      @      @ とはいいながら、慣れてきて、真ん中に乗っていると、 実に切れる!落ちていく!つまり、気持ちいい。 おそらくその滑走スピードは、 長い板で飛ばしている時の半分でしょうが、 スリルと快感は、それ以上かもしれませぬ。         @      @      @ ああ、これって、中小企業経営だと思いました。 それも、繊維のような構造不況業種の中小企業経営。 ほとんど、わが身ひとつに等しい乏しい道具ゆえ いい位置に乗っていないと転ぶ。 前傾しすぎても、後傾しすぎても転ぶ。 調子に乗れば転ぶ。弱気になれば転ぶ。 遠くを見ていないと転ぶ。 重力や遠心力など、自分の外の力を使わないと転ぶ。         @      @      @ 私は、かつて大企業の名刺で、 勘違いの商売をしていたこともありますが、 これは、長いブランドの板で滑るようなもの。 ちょっとやそっとじゃ転ばないし、 転んでも、昨今のビンディングは頭がいいので、 ボーダーに横からぶつかられない限りは、 足など折れませぬ。 だから、いつしか自分を誤る。 それでいて、一回一回の努力をしなくなりがち。 あの限界ぎりぎりの気分も味わいづらいかも...。         @      @      @ ところが、ファンスキーと、そのビンディングときたら、 ほとんどオモチャ。 高速で転んだら....どうなることやら。 だから、飛ばすことも、急斜面に行くこともできませんが、 面白さは、ファンスキーにかないません。         @      @      @ しかも、ストックなしで滑るんです。 これがいい。 生身な感じ。         @      @      @ 実は、良く見れば、 ファンスキーに乗っている人も多かったのですが、 私が見たところ、ちゃんと真ん中にのって カービングしていてすごいなーと思った人は 1人だけでした。 わけもわからず、ただ曲がっている人がほとんど。 これも、どこか中小企業経営や人生と似ているような....。         @      @      @ 派手なボーダーや、 かっとびスキーヤーやモーグラーほど、 目立つはずもありませんし、 ファンスキー本来の、エアーやトリッキーなワザに 興味のかけらもない私ですが、 これは、ひとつ極めてみようと思いました。         @      @      @ そして、ある一言を思い出しました。 私の大学の恩師、平野 絢子先生は、 私が知る中で最もロックな生き方をされている 私の大目標ですが、 ある日「私はスキーをするために生きている」 とおっしゃったのです。 たまげました。 その理由を聞くと.... 「最も孤独になれるから」         @      @      @ その真意は、今も謎ですが、 たかが、1mのオモチャに乗りながら、 身心整い...というより、自分の心さえ吹っ飛んで、 自然とひとつになるあの感覚.... あれが孤独というなら、 今回、何度か味わうことができました。  ▼日本ファンスキー協会  http://funskier.org/ 久米 信行@縁尋奇妙 http://kume.jp http://t-galaxy.com/news/ http://jentle.co.jp/ http://t-galaxy.com/

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