2006/11/03(金)22:35
レビュー#275 RICHARD THOMPSON 《STRICT TEMPO!》 81年英国
New Fangled Flogging Reel (Ireland)/Kerry Reel (Ireland)
Vaillance Polka Militaire/Belfast Polka
Scott Skinner Medley: Glencoe (Scotland)/Scott Skinner’s Rockin’ Step (Scotland)/Bonny Banchory (Scotland)
Banish Misfortune (Ireland)
Dundee Hornpipe/Poppy Leaf Hornpipe
Do It For My Sake (Ireland)
Rockin’ In Rhythm (Ellington)
The Random Jig/The Grinder (Ireland)
Will Ye No Cam Back Again (Scotland)/Cam O’er The Stream Charlie (Scotland)/Ye Banks & Brass (Scotland)
Rufty Tufty/Nonsuch A La Mode De France
Andalus/Radio Marrakesh
The Knife Edge (Thompson)
Richard Thompson
e-g, a-g, 12 string-g, 6 string-g, dobro, b, ds, b-ds, harmonium, p, banjo, mandolin, mandocello, hammer dulcimer, penny whistle
Dave Mattacks
ds, per, p
あれだけの作品を作っておいて脱退しやがってあのアンパンマンめ、とフェアポートでは「フル・ハウス」が一番の愛聴盤な私は思うわけですが、リチャード・トンプソンってずっと同じ場所に留まることをしない、ていうかできない人なんじゃないかなあと。
ギターの音色こそ特徴的だけどさ、やってる音楽って一貫性あるとは言えないじゃないですか。
いつだったかギター誕生50年記念だかそんな感じのステージに立っていたのをスカパーで目撃しましたが、体全体で手を振りながら登場→「皆さん、こんにちはー!」…ではなく「イエァ――! ハロートキオ――――!!」って具合で(東京なんて言ってないけど)はしゃいでました。演奏中もおとなしく弾いていられるわけもなく、1人でルンチャッ♪ドンチャッ♪なトンプソン氏。そんなロッケンローラーなノリじゃ英国フォークの重要人物だなんて思われないでしょうね、とくに若い子には…と思ってしまったのでした。
まあ本人は自分のことフォーキーとは思ってないみたいだし、自由人っぽい印象は悪くないんだけどね。
さんざ引っ張っといてあれだけど、これはそんな氏が民謡好きとしての一面をさらけ出した81年のソロ。
ほとんどの楽器を1人だけでやってしまっていて、たまーにデイヴ・マタックスに手伝ってもらっているだけ。弦はもちろんドラムまで叩いているんですよ! マルチだな~。
いろんなとこから見つけてきたトラディショナルを好き勝手に演奏してまーす、な感じで随分と気ままな印象の作品です。
その中にはロバート・バーンズが詩をつけたスコットランド民謡やら北アフリカの民謡やら、またまたアイルランドのダンス曲もあります。
ま、私はジャック・ザ・ラッドによって知り、ドーナル・ラニーとお友達やマリンキーで思慕の強さを確信した4が購入の決め手なんだけどね。それに525円だったし。
いかに優れたシンガーソングライター作品だろうと、まずはトラッドを演奏してるか確認しちゃうのが民謡好きの悲しい性ですよ。
ギターだけでなくマンドリンやハーモニウムも活躍していて、いや本当に自由な演奏。ちなみにオールインストです。
ジャズの曲も自作曲も(7と12)も、民謡群に見事に紛れ込んでいてクレジット見ないと見分けつかないよ。
英国人にとっての民謡の存在ってすごく日常なんだろうなあ。「フォーク系のミュージシャンに伝承音楽を聴いて育たなかった人はいないと思うよ」とはXTCのアンディ・パートリッジの言葉だし、「自分の国のトラディショナル音楽は全部聴いた」と豪語するリッチー・ブラックモアとかいうツワモノもいるよね。
若者が民謡好きを公言すると際物扱いされてしまいがちな日本とはえらい違いだ。