社交ダンスA級への道

2005/08/25(木)11:43

嵐が丘

映画のはなし(632)

有名な物語を映画化する場合、俳優や監督始め、製作スタッフは前作を越えるものししようと、力を注ぐものです。エミリー・ブロンテの名作、嵐が丘の、実に5度目の映像化。 私はこれで、レイフ・ファインズのファンになりました。 ごつごつした岩とヒースの荒野にたたずむ荒れ果てた城、原作者エミリー・ブロンテがその城を訪れる所から物語は始まります。劇的な運命を感じさせるヴァイオリンに、荒野を吹き抜ける冷たい風のような笛の音が加わり、まず、その音楽で私は引き込まれました。音楽は、坂本龍一です。 父アーンショーに拾われ、連れてこられたジプシーの子ヒースクリフは、ヒンドリー、キャシー兄妹とともに育てられました。キャシーとはやがて、血のつながりよりも強い絆を感じていきます。父親が死ぬと、ヒースクリフは使用人として虐待されますが、キャシーとの愛は揺らぐことはありませんでした。しかし、運命は二人を引き離し、彼女への叶わぬ愛の代償に、ヒースクリフは冷徹な復讐を企てて行きます。 最も感動的なのは、キャシーが若くして死んでしまったときの、ヒースクリフの独白です。 「我が祈りは只一つ、舌が石になるまでくりかえしてやる。 キャシー・アーンショー、我が命の続く限り安らかに眠るな。 亡霊になってさまよえ。私につきまとえ。 ...君のいない奈落の底に、僕を、見捨てないでくれ。」 押し殺した何億トンもの悲しみが、小さくつぶやく唇から流れ落ちて行きます。 「I can't live without my life. I can't live without my soul.」 レイフ・ファインズの演技は素晴らしく、さすが、シェークスピアを演じていただけのことはあると、このシーンばっかり何度も見てしまいました。彼は、ハリー・ポッターシリーズのヴォルデモート卿として、次回作から登場する予定です。彼の弟も役者で、「恋に落ちたシェークスピア」で、シェークスピアの役をこなしています。 夏の終わりのなんとなく物寂しい夜、こんな熱く悲しい世界の名作にふれてみるのはいかがでしょうか。

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