テーマ:社交ダンス(8312)
カテゴリ:下町人情物語
私が生まれたのは寅さんで有名な葛飾柴又のすぐ近く、下町情緒あふれる街でした。
近所の駄菓子屋のおばさんはいつもおまけしてくれたし、向かいのコンドーさんの家には二人のお姉さんがいて、自分の家のようにあがりこんでは夕方遅くまで遊んでもらっていたものです。 そこに4歳まで住んでいたんですが、庭に一本の桃の木があったんですね。 いまでも桃は果物の中で一番好きで、この季節スーパーの入り口近くに並んでいる桃のいい香りに誘われてついつい手が伸びてしまいます。 さて、その桃の木なんですが、桃栗三年柿八年といいますから3年以上経っていた木なんでしょうね。 実がなるんですよ。 いい匂いがするのでいつも寄って行って見上げてたんですね。 ある日、その中の一つが地面に落っこちてたのを発見してしまいます。 それは天からの贈り物のように美しく私を誘いました。 もちろん食べましたよ。 3歳くらいの子供って何でも口に入れますからね。 今となっては甘かったのか酸っぱかったのか全然覚えていませんが、一つだけ忘れられないことがあります。 口の中がアリンコだらけになったこと。 庭で背を向けて立ちすくんでいる小さな私を見つけて、母はどうしたのかと近寄ってみたそうです。 口の周りを歩き回っているアリンコを目と指で追いかけながら、その小さな女の子は笑っていました。 『ママちゃん、これ。いったり、きたり。』 アリンコ踊り食いですわね。 まあアリンコ入りチョコレートなんかあったりしますから、食べても害はないと思いますが、バカタレです。 落ちているものは食べちゃダメだってきつく言われましたけど、道に落ちてるものってなんで魅力的なんでしょうね。 その後も懲りずにいろんなものを食べ、その度に怒られましたがそれでも生きてるんですから胃腸は丈夫な方なんだろうと思います。 もも、魅力的ですよね。 また天から降って来ないかな。アリンコなしで。
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