テーマ:社交ダンス(8307)
カテゴリ:下町人情物語
『迷子のお呼出を申し上げます。』
行楽先やショッピングモールで場内アナウンスのお世話になった経験はありませんか? 珍しい名前だと必ず誰か知り合いが聞いてて、後になって言われるんですよね。 『放送聞いたわよ。この前、あの店にいたでしょう。』 恥ずかしいったらありませんよね。 それが2度3度となると。 同窓会で迷子と血液型の関係について話題に上がったんです。 A型の子供は迷子になり難いとか、B型の子供は自分が迷子になっているという意識がないとか。 友達の話しによると、B型の子供はすぐどこかに消えて、少し知恵がついてくると自らインフォメーションセンターに出向き、母親の名前をいってアナウンスしてもらうので、まるで母親が迷子みたいな印象を世間に与えると言うんです。 私もB型なんですが、思い当たる節があります。 あれはまだ学校に行く前ですから4才か5才の頃。 精一杯のおしゃれをして、母親に連れられ銀座のデパートに出かけました。 屋上にはミニ遊園地があって、最上階はレストランだった気がします。 母親がバーゲンかなにかに夢中になってる隙に、ちょっと冒険にでちゃったんですね。 階段付近をウロウロしてるとジュースの販売機を発見しました。 『これ、知ってる!』 昔の販売機は紙コップを置いてお金を入れるとジュースが降ってくるタイプでした。 私はコップをセットすると、じーっとそれを見つめながらジュースが降って来るのを今か今かと待っていたんです。 もちろんお金なんて持ってませんから、ひたすら待ってたんですね。 するとどこのどなたか知りませんが、優しいお兄さんがお金入れてくれたんです。 『おー、やったぞ。』 私は天から降って来たジュースを大切に抱えると、満面の笑みでお兄さんにお礼を言いました。 お兄さんには連れの女の人がいて、多分彼女にいいとこ見せようとか思ったんでしょう。 デート中に迷惑な話ですが、私はそのお兄さんが気に入ったのでついて行くことにしました。 カップルは仕方なく自分たちもジュース飲むことにして、販売機の側に置いてあったテーブルに着きます。 『どこから来たの?お母さんは?』 そういえばうちのママちゃんはどこに行ったんだろうな。 あくまでも自分が迷子という意識はまるでないんです。母親の方がどこかに行ったと思ってたんですね。 ゆっくりジュース飲んでればそのうち来るかなくらいの気持ちです。 そこへ思った通り母親が現れました。 一人じゃなく、デパートの制服を着た人も一緒です。しかも相当慌ててる様子。 『ママちゃん。こっちこっち。』 私の甲高い声を聞きつけて母親がすごい形相で向かって来たのを覚えてます。 ジュースをおごってくれたやさしい二人にさよならを言う間も与えられず私は母親に引きずられて行きました。 ものすごく怒られましたね。 お尻ペンペンの刑ですよ。 ただジュース飲んでただけなのに。 まあ、これがB型ってことなんでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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