2020/11/30(月)21:44
家へ帰ろう
70年前ポーランドからアルゼンチンに渡ったアブラハムは、仕立て屋としてブエノスアイレスに暮らし88歳になっていました。
彼はホロコーストの死の行進から命辛々逃げ出したユダヤ人です。
以来『ポーランド』と『ドイツ』と言う言葉は絶対口にしませんでした。
子供たちや孫たちに囲まれて幸せそうですが、翌朝住み慣れた家を娘たちに譲り老人ホームに移ることになっていました。
アブラハムは心の底では面白く思っていなかったんですね。
自分が仕立てた最後の1着のスーツを見て、ある考えが閃きます。
ナチスから彼を匿ってくれた祖国ポーランドの友人に約束したことを思い出したんです。
お礼に自分が仕立てたスーツを必ず贈るからと言う約束。
深夜、家を抜け出すとマドリッド、パリを経由して、ポーランドに渡る長い旅路につきます。
行く先々でいろんなことが起こるんですよ。
飛行機で出会った青年を救ったり、マドリードのホテルでは全財産盗まれたり。
ホロコーストのとんでもなく辛い思い出は消えませんが、アブラハムの固く閉ざした心を少しずつ溶かしていく温かい出会いがたくさんあるんです。
彼はパリから列車でポーランドに向かいますが、どうしてもドイツの地を踏みたくないと強情を張ります。
でも飛行機に乗るお金はないんですよ。盗まれちゃったから。
ドイツで乗り換えないとポーランドには行けないんですね。
相変わらず『ポーランド』と『ドイツ』と言う言葉は絶対口にしませんし。
道半ばで病気で倒れたりもして面倒臭いおじいさんなんですが、奇跡の様にたくさんの救いの手が彼の上に差し伸べられます。
人って本当に優しいんだなあってジーンときます。
もう70年も前に別れたきりの友達に果たして会えるんでしょうか。
家へ帰ろう(原題:El ultimo traje / The last suit)は、2017年のスペイン・アルゼンチン合作映画です。
監督はパブロ・ソラルス、主演はミゲル・アンヘル・ソラ。
すごくいい映画でした。
ホロコーストものにありがちな残酷シーンは出てきません。
オススメです。
いい映画は心を豊かにする