烏は主を選ばない
日本サッカー協会のシンボルにも使われている八咫烏(やたがらす)は、古事記や日本書紀にも登場する神の使いです。山内(やまうち)と呼ばれる人間界から遠いところに、人の姿に転身できる八咫烏たちの世界がありました。金烏(きんう)を長とする朝廷を中心に、人の姿で平安時代のような暮らしを営んでいます。なんとも雅な世界観の中で繰り広げられるドロドロのドラマに引き込まれました。金烏は天皇みたいな位置づけで代々受け継がれますが、特別な力を持つ真の金烏が生まれてくることは稀でした。長束(なつか)は皇后・夕蝉(ゆうぜみ)の息子で優秀ですが普通のカラス。一方、側室との間に生まれた奈月彦(なづきひこ)は真の金烏で、宮廷内に皇位継承の派閥争いが生じています。聡明な長束は弟の奈月彦(若宮)が真の金烏であることを知るとすぐに出家してしまいますが、皇后が諦めていないんですね。若宮を亡き者にという陰謀が巡ります。若宮の側遣いとして北家の次男・雪哉(ゆきや)が宮廷に召されました。家督争いを避けるためボンクラを装っていた少年ですが実は機転のきく奴で、若宮にも気に入られます。宗家を補佐する東西南北4つの家からなる上級貴族がいて、それぞれの家から若宮の妃候補を出しました。若宮が誰を選ぶか、上級貴族たちの勢力争いにも巻き込まれます。それぞれ春夏秋冬の館に召された妃候補たち、若宮の妹も絡んだ複雑な伏線と素顔が暴かれ、とても面白いサスペンスでした。後半は雪哉の故郷で発生した襲撃事件の話でした。犯人はどこからともなく現れた巨大な猿なんですが、村全体が皆殺しにあった中、一人生き残った少女がいます。彼女は何が起こったのか全く知らないと言い、若宮は山内全体の危機と見て、先頭に立って真相究明にあたりました。『烏は主を選ばない』は、阿部智里による小説・八咫烏シリーズをアニメ化した作品で、2024年4月から9月まで全20話が放送されました。人間界とかけ離れた世界で繰り広げられる摩訶不思議な事件簿、ちょっとした歴史的異世界感もあり、サスペンス要素もあり、最後にはきっちり謎解きしてくれるので面白いです。烏は主を選ばないというタイトルの意味が最終話で分からなくなりましたが、それも大どんでん返しという事なんでしょうか。2024年10月10日から再放送されるそうですので、ご興味ある方は公式サイトをご覧ください。