今回の展覧会は、歌麿、写楽、北斎、広重、国芳と5人の浮世絵師に特化された
展覧会です。
この5人の作品は、浮世絵のスタンダードで、過去に何回も展覧会が組まれ、
あちらこちらの美術館常設展でも見る機会が多く、別に見なくてもいいかなと
思っていたのですが、ちょうど錦糸町方面に出向く用事があり、時間つぶしに
出かけてみました。
結論から言うと、「ほんとに出かけてよかった。」という展覧会でした。その理由
は、とにかく保存状態が良く、発色の美しい浮世絵を見ることができたからです。
キャプションにもありましたが、世界中の美術館から保存状態の良い作品を
集めているとのことです。
まず、歌麿。今回の展示は美人画に特化していました。昔は歌麿の描く美人画は
どれも同じ顔に見えていたのですが、最近、ようやく微妙な表情の違いに気づく
ようになりました。そして手のしぐさと併せて眺めているとどんどん絵の中の
女性に引き付けられていく気分になります。蚊帳の外側から内側の女性を
描いた様子など、細かい蚊帳の目の表現に絵師、彫師、摺師の超絶技法も味わえ
ます。
写楽。これはほとんど見た記憶のある絵ばかりでして、あまり新鮮さはなかった
のです。それでも「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」はいつ見ても、面白いです。
手の形が何でこうなるのか下手くそなのかわざとなのか、考えてしまいます。
北斎、広重の絵も鉄板の作品が続きます。歌麿・北斎の版画はほとんど海外の
美術館からのものでしたが、こちらは江戸博とか原安三郎コレクションのもの
です。私は広重の雪の情景が大好きなので、今回もうっとりとできる作品が
多くて、うれしく思いました。
驚いたのは、ラストの国芳。個人所有とのことで、誰のコレクションなのか
明らかにされていませんが、今発売されている雑誌を眺めているような美しさ
でした。おどろおどろしさに満ち溢れていました。いちばん印象に残ったのは
大江山の酒呑童子の身体が半分、鬼に変化している光景です。これも好きな
作品の一つです。
展示リストを見ると、前期と後期の作品がまったく入れ替わるようで、これは
後期も必見だなと思いました。