|
全て
| 音楽についてうんちく
| (未分類)
| 音汰の部屋
| サブカルについてうんちく
| 街についてうんちく
| バンド備忘録
| 週間メリハリ雑記帳
| 今日の反省・明日の発展
| 最新の記事
| おススメのお店(食べもの・音楽)
| ニュース・社会うんちく
| このブログ超推薦!!
| ライブ告知
カテゴリ:音楽についてうんちく
浜田省吾は昔かなり聴いていた。高校のころFMラジオから流れてきた「八月の歌」や「J・BOY」など、社会的メッセージを備えた歌は、「愛」ばかりでまったく中身のない”J-POP”に相当ウンザリしていた多感期の自分にとって、強烈なインパクトをもって受け留められた。 浜田省吾の最大の魅力はラブソングにあるのだが、しかし先に挙げたような社会的メッセージ性を備えた歌がまた浜省の特別な魅力でもある。それ故に、今だに特別なアーティストとして、彼を偉大に思う。 その浜省のアルバム群の中でもひときわ異彩を放っているのがこのアルバム『PROMISED LAND~約束の地』だ。コンセプトアルバム的な作りとなっていて、1曲目(インスト)~2曲目~3曲目の曲間がつながっている。そして1曲目のストリングスのメロディーが最期の曲のクライマックスで再び登場してくるのだが、アルバムを作ったアーティストの、アーティストとしての気概がガンガン伝わってくるようなそんな作りが、数ある浜省のアルバムの中でもこのアルバムを特別に評価している理由だ。 パワーショベルで削った丘の上、いくつもの同じような小さな家 どこまでも続くハイウェイ 彼らはそこを名付けた「希望が丘ニュータウン」 赤茶けた太陽が工業地帯の向こう沈んでいく オープニングのインストに続く2曲目「マイ ホーム タウン」、視覚的に訴えかけるこんなダイナミックな歌詞が浜省ならでは。これだけの歌詞を書ける人はそうはいないと思う。 ジャラシー 嵐のような ジャラシー あの娘がだれか他の男と、街角を腕を組み歩いていた ・・・それだけさ 続く3曲目「パーキング・メーターに気をつけろ!」のこのフレーズがあまりにインパクトがあり、一度聴いただけで病み付きになってしまう。浜省の曲のなかでも異色曲だと思う。 彼女はデパート、俺は町の工場で、働いて帰る夜道 日毎に押し寄せる理由のわからない苛立ちが 二人の心 引き裂き始めた 9曲目「さよならスウィート・ホーム」のこの3行だけを切り取ってみても浜省の歌詞の凄さがわかると思う。たった3行の中にいかに多くのことが語られているか。しかも視覚的であり、かつ深い。N郎♪が歌詞にうるさく、巷に流れている多くの歌詞にフラストレーションを感じてしまう理由は、浜省クラスの歌詞を歌詞の基準と思っているからなのかもしれない。 このアルバムの歌詞の魅力について書いているが、中でもっとも戦慄を覚える歌詞、正確には台詞は、アルバム最期の曲「僕と彼女と週末に」の間奏で語られるこの詞だ。 週末に僕は彼女とドライブに出かけた。 遠く街を逃れて、浜辺に寝転んで、 彼女の作ったサンドイッチを食べ、ビールを飲み、 水平線や夜空を眺めて、僕らはいろんな話をした。 (中略) あくる日、僕は吐き気がして目が覚めた。 彼女も気分が悪いと言い始めた。 それで僕らは朝食を取らず、浜辺を歩くことにした。 そして、そこでとても奇妙な情景に出会った。 数え切れないほどの魚が、波打ち際に打ち上げられてたのだ。 この台詞の直後に次の歌が続く いつか子供たちにこの時代を伝えたい どんなふうに人が希望を継いできたか・・・ ・・・書きながらあらためて浜省の歌の凄さに驚異を覚える。近年の浜省の歌やアルバム、その活動についてはよく知らないが、少なくとも『J・BOY』(1986)までの浜省の、社会的メッセージ性が主体となっている歌は神がかり的な完成度であったと思う。 そんな浜省でも、ラブソングに比べて社会的メッセージソングが、その凄さの割りはいまひとつ正当に評価されていないようにも思う。その原因は、それらの社会的メッセージソングを正当に評価できるだけの日本人がいないということにあるのかもしれない。U2やレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが活躍した世界の基準を見て欲しい。 余談であるがこの「僕と彼女と週末に」のメロディーやアレンジは、アバの「ザ・ウィナー」という曲にかなり似ている。サビのメロディーはもうそのまんまだ。多分浜省は「ザ・ウィナー」の影響を受けた・・・悪く言えばパクッたのかもしれない。が、そうであってもこの「僕と彼女と週末に」は、その歌詞と曲構成によって凄まじい曲だと思う。 この『PROMISED LAND~約束の地』は、アーティストがアーティストとしてその存在意義をかけて、世に提示するためにコンセプトのある作品を作り、それを残すことができた稀有なアルバムではないかと思う。このようなアルバムがメジャーから出ていたということは日本のロック史の中でも特筆すべきことではないだろうか。・・・今やったっていいんだ。 |
|