「お客様は神様です」とは、言うまでもなく某演歌歌手の名言であるが、最近レストランなんかに行くと、横柄な「神様」が増えているように感じる。店員にオーダーする時もぞんざいな口調で、ちょっとの事にガミガミ文句を言う人も少なくない。端から見ていて、嫌な気分になる。
いわゆる「クレーマー」ってやつだ。
もちろん、なってない応対をする店員は多い。なにがしかのサービスを受けに行って、それを受けられなければ腹が立つのは、ごく普通の反応だと思う。
しかしである。「お客様」であれば何を言っても許されるという勘違いをしている人が、あまりにも多いように感じるのは、僕だけだろうか。
ニコンで「お客様相談窓口」に数十年勤めたベテランが書いた『社長を出せ!』と言う本が、去年飛ぶように売れた。「お客様相談窓口」といえば、要はクレーム処理班である。難敵を相手に百戦百勝を誇る著者が、今までに経験した様々なクレーマーとの戦いを紹介し、解決に至るまでの道筋を説いていて、すべてノンフィクションなだけに生々しい説得力がある。
良いなと思ったのはその基本姿勢で、対クレーマー用の特殊なノウハウを駆使すると言うのではなく、あくまでも「どんなお客様でも、本気であたれば分かって頂ける」という、ある意味非常に泥臭い精神論に立脚しているところが極めて健全で、尊敬に値する。
「常識」を盾にチクチクと相手を追い詰めるクレーマーは、不快を通り越して滑稽ですらある。言うべき事は言った方が良いかもしれないが、わざわざそんな機会を探し回る人生は貧しいし、クレームなんて一生言わないでいいのなら、それに越した事はない。
「ならぬ堪忍、するが堪忍」という言葉が風化してしまうアメリカ型の子供っぽい訴訟社会が、もうすぐそこまで来ているのを感じる。
お客様を神様として扱うのは、お店の人だけで十分。お客の立場にいる人は、常に肝に銘じておくべきだ。
「お客様は人間です」
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