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青春満開 気障太郎

私に貴方のハートをください TOE


私に貴方のハートを下さい




「…あー、メルディが料理またキール残したよ。なんでかなー…。」
気落ちした声でメルディは言った。食事の後片付けを薄闇の中でして居る最中のことだ。
肩を落としたまま皿を片付けるメルディは隣りで同じく皿を持って立ち上がったファラに声を掛けた。
「…ファラ~…ファラが料理メルディに教えて欲しいよ。」
「え、料理?うん、それは全然いいけど…料理ならいつもちゃんと作れてるじゃない、メルディも。…何かあったの?」
突然の提案に不思議そうに小さく首を傾げるファラに、メルディは川まで一緒に歩いて皿を洗う手前で無言のままキールの食べ残した皿を見せる。
「…あー…それってキールの?残したならリッドに食べさせちゃえば良かったよね、勿体ないし。」
額に手を当ててあちゃー、と言いながらファラは軽い口調で返した。…が、それは今のメルディには通じるものではなかったらしい。
「……キール、ファラが料理残さない。メルディの料理残すのなぜか?」
少し潤ませたライトパープルの瞳に見上げられてファラは困った様にやや濃いめの緑色の髪の毛を弄った。そして、皿に手を戻しながらやんわりとした口調で諭す様にゆっくりと
言う。
「んー…私はメルディの料理は結構美味しいと思うよ。リッドだってセレスティアに来た初めとかは材料とか味付けに少しびっくりしてたけど、今ではちゃんとおかわりまでする様になったでしょ?」
ファラのフォローの言葉を聞いてもメルディの表情は晴れないままだった。キールの皿だけ脇に置いたまま自分の皿を水に浸してぼんやりと映る自分の顔を眺めた。そして、もう一度聞く。
「ファラ…ホントにメルディが料理悪いところないか?ファラみたくに美味しく作れてるか?」
メルディの真剣な問い掛けに流石のファラも驚きながら首を捻ってから、こちらももう一度頷く。
「うん、パンヤ麺もなかなか面白い材料だし…あ、ソディも使うのは難しいけどメルディは上手く使えてるし。それに、味付けは少し違うけどちゃんとインフェリアの料理も作れてるじゃない、すごいよ。」
水に濡れた手で握り拳を作って親指だけ立てて励ます様に言うとファラはにっこりと微笑んで言う。
だが、それでもやはりメルディの表情はそのままだった。むしろ、暗くなってしまったと言うくらいだろう。
「そっか…料理に悪いところないかのか…それなら、メルディがキール嫌われてるんだな。」
「…え…?」
ぽつりと呟かれた言葉にファラはきょとりとした表情を見せてからメルディの顔を覗き込んだ。
「メルディはキールがこと好きよ。」
「わっ…め、メルディ…そ、そうだったの?」
メルディの突然の告白に驚き皿を取り落としながら、正直者のファラは目を丸くしながら好奇心で確認する様に問い掛ける。
「そう、当たり前がこと。メルディ一緒にいる、みんなが好き。リッドもファラも…キールも好きよ。」
言い方に多少アクセントの違いはある物の旅の仲間全員だと示されれば自分の邪推に照れ笑いをしながらファラは納得する。メルディの思いに本当は仲間全員とは違う差異があることも多少は勘付いていたことだからこその邪推だったが、本人から聞いてしまうと呆気なさすぎる。
「あ、はは…そっか、そうだよね。うん、みんな好きだから一緒に頑張れるんだもんね。」
「はいな。…ファラ、どうかしたか?お皿流されるよ~。」
「あっ、いけないいけない!はは、ちょっとぼーっとしちゃったみたい、ごめんね。」
川の流れで皿が揺れるのを見たメルディが注意を促すとファラが慌てて取り落とした皿を取って洗い始める。
「メルディはキールにもご飯喜んで欲しいよ。ご飯以外も…キール、メルディに冷たくする。どうしたらいいか?」
キールのメルディに対する態度は今でこそマシになったと言えるものだが、出会いの当初はもっと酷かった。邪険に扱われたメルディがそう思うのは致し方ないことなのだ。それを今までよく我慢してきたものだとファラは思う。
「うーん、そうだなぁ…キールは元々人見知りだったから、よく考えたら始めはすぐにって言うのは難しいと思ってたんだけどね。」
出会いからのめまぐるしい日々を思い出しながらファラは自分自身の考えを纏める様に言う。それを聞くメルディは真剣そのものだ。洗う為に手にして居る皿をぎゅっと握りながらライトパープルの瞳にファラを映す。
「もうキールと会ってから随分経ったよ、まだメルディ人見知りされてるか?」
「ううん、もうそれはないと思うし…キールだって子供のままじゃないんだから、人見知りって言う事はないと思うんだ。」
「それならなぜか?やっぱり、メルディがことキールは嫌いか?」
自分で言って置きながら否定する矛盾に苦笑しながらも、ファラは悩み抜いて言葉を紡ぐ。
「それはキールに聞かないと解らないけど…でも、私はキールはメルディのこと嫌いじゃないと思うなぁ。」
「…どうしてそう思うか?ファラはキールが気持ち解らない言った。」
皿を洗う手もそこそこにファラの答えに夢中になってメルディは矢継ぎ早に問い掛けを繰り返す。
ファラも困った顔になりながらも最近の普段のキールとのやり取りを思い出して言う。
「うん、やっぱり人の気持ちって言うのは理解するのは難しいからね、長く一緒に居た私でも解らないの。でも…キールはずっと一緒に居てくれてるでしょ?」
「…はいな。でも、それはグランドフォール防ぐためよ、メルディがこと好きだからじゃないかもしれない。」
「確かに一緒にいるのはそれも理由だけどね、一人じゃとても出来ない事だから。けど、始めメルディは一人ぼっちでインフェリアに来たりしたでしょう?」
洗い終わった皿が持ったままで乾いていく中でメルディは頷いてファラの言葉を待った。
「無理かもしれないのに、一人ぼっちで来て言葉も通じなくて心細かったんだろうなぁ…って、私は思ってたんだ。キールも同じだと思うの、ちょっと違うけどね。」
メルディが空から降って来た日の事を思い出しながら洗い終わった皿を脇に置いてインフェリアとは違う空の色を視界に入れる。
その横顔を眺めながら、メルディは困惑した表情になった。
「同じで違うか?難しいな、今日のファラがいうこと。」
「キールはきっと羨ましいんだよ、メルディのそういうところ。誰でも不安なことってあるけど、メルディは自分一人でもやり遂げるって言う感じで来たでしょう?」
「…そんなことないよ、メルディだって不安がいっぱい。だけど、やらないと大好きな世界大変なる、だからメルディ頑張る。」
「うん…そう言う強さが羨ましいのかな、私もだけどね。それと、一人で抱え込んじゃってるのがキールにはもどかしいんじゃないかな?」
一人の少女には重過ぎるだろう荷物を背負って来たメルディを見ながら苦笑を混じらせて言う。
「羨ましい…もどかしいか?…よくわからないな…羨ましくてもどかしいとキールみたくなるのか?」
ファラの苦笑いと言う珍しい表情に目をぱちくりさせながら言った。
「上手く言えないけど…ほら、メルディはあんまり自分のこと言ってくれないし…なんだか、私って頼りにならないのかなぁ、なんて思ったりすることがあるから。」
「そんなことない!メルディ、ファラが頼りならないなんて思ってないよ。メルディすごくファラが頼りだな。」
「だよね、それを聞いて安心したなぁ…私はこうやって聞けるからいいけど、キールは一人で悶々としちゃってるんじゃないかなってこと、かな。」
そう言って締め括るとメルディを見つめながら笑顔を作って見せて。
「それじゃ、キールはメルディがこと嫌いじゃなくて…心配してくれてたか。メルディ勘違いして…」
「こら、メルディ!やっと見つけたぞ。」
その時背後からローブを引き摺る様な足音と共に話題の主が現われたのだからメルディも体を跳ねさせて驚いた。
「バイバ!…き、キールどうしたか?いきなり大声びっくりだよ~。」
「キール、どうしたの?いきなり怒る事ないじゃない。何かメルディに用事でもあった?」
驚く二人を尻目にキールは口をへの字にしたままでメルディを指さす。正しくは、メルディの隣りの位置…そう、自分の食べ残しの皿が置いてある場所を。
「…メルディが料理美味しくないから怒りに来たか?」
メルディが示されたそれに気付くとしゅんとした様子で上目遣いになって尋ねる。
「…は?…何の話だ、それは。僕は何故食べかけの料理の皿をさげるのかと言いに来ただけだぞ?」
メルディの必要以上におどおどした態度に怒る気も収まったのか少しは和らいだ口調で言う。その意外な言葉にメルディはぽかんと口を開いたまま暫く止まる。代わりにファラがくすくすと面白そうにしながらキールと皿を見比べて沈黙を破る。
「ふふっ…もしかして、まだ食べてた途中だったの?それをさげたから怒りに来たってこと?」
「そうだ、それ意外に何があると言うんだ?ああ、訂正するとすれば、食べてたところ…ではなく夜食にするつもりだったのに、だが。」
キールはメルディとファラ両方の表情を見ながらなんだと言うのかと困惑しながらもきちんと説明する。
「キール~…どうして始めからそう言ってくれないか。…メルディ要らない心配したよぅ。」
「し、心配?そ、そんなの必要ないだろう…大体、始めからも何もない、人が本を読んで居る間に勝手に持っていく奴が悪いんじゃないか。」
メルディのライトパープルの瞳が潤んでいるのに気付くとしどろもどろになりながらもきっちりと反論をするキール。
「…それはキールがいつも残すから悪いよ、メルディがせいじゃないな。」
「僕は残そうとなんて思ってはいない、あれはいつもリッドが勝手に残したと言って食べるからそうなるんじゃないか!」
どうしてこんなことになっているのかと悩みながらも、キールは地面に置かれた皿を拾って底に付いた土を払う。
「…なんだかよくはわからないが、これで納得したか?これに懲りたら勝手に持っていく前にちゃんと僕に聞けば…」
「お、これ残りもんか?もーらいっと。」
キールがメルディに注意を促すと同時に背後から再び人影が映る。深い赤色の髪の毛を揺らしながらリッドは皿に乗ったサンドイッチをひょいと掠め取ってぱくつく。
「…あーっ!僕の夜食を!人の食事にまで手を出すなんてなんて意地汚いんだ。返せっ!」
振り返ったキールが指先をわなわなと震わせながらリッドを指差しながらけたたましく非難する。だが、それもリッドはどこ吹く風である。
「…んあ?なんだよ、残りもんじゃなかったのか?どっちでも食っちまったもんは返せねぇけどな。」
ぽんぽんと腹部を叩きながらしれっとした態度で言うと、まだ物足りなさそうな表情でファラを見た。
「ファラ、まだ食材あったよな?なんか食いたりねぇから作ってくれよ、簡単なのでいいからさ。」
それまで笑いを堪えながら蚊帳の外に居たファラは吹き出してからふるふると首を振ってメルディに向き直る。
「…ね?メルディは嫌われてないし、料理だって美味しくない訳じゃなかったでしょ?」
「はいな、良かったよ~。メルディが心配性だったな、もう大丈夫よ。」
メルディとファラが言う事の意味が解らず男性陣二人は立ち尽くして顔を見合わせた。
「…なんなんだろーな、おい。」
「僕が知る訳がないだろう、このサンドイッチ泥棒。」
「あ、言ったな?昔からお前の残したもん食ってやってたのにそういうこと言うか?」
「なっ、今更そんな昔の話を持ち出す奴に言われたくはない!僕はお前にやるなんて言ってないんだからな。」
喧嘩をし始めたところでファラがくすりと笑いながら割り込んだ。
「はいはい、喧嘩はそこまで。これ以上喧嘩するなら夜食は二人に準備してもらうよ?」
いいの?と言わんばかりに腰に両手を添えながらファラがにっこりとして言う。
「馬鹿な、僕は嫌だからな。それに、僕は…メルディの料理を夜食にするつもりだったんだから、メルディに頼む。」
「ワイール!キール、ホントにメルディが料理でいいか?」
「…いいから言ってるんだろ?早く作れよ、僕はそれまで本を読んでる。」
「はいな♪頑張ってお夜食作るよ~。」
「…『な』は余計だ。」

少しだけにぎやかな、夜の風景だった。



―・―・―・―・―・―・―・―
言い訳みたいな後書きだったり。

ワイールとかバイバとかはメルにクス語のままなのがなんとなく気になってしょうがないのですが。
思う前に出た吃驚な言葉とかは方言が出るみたいな法則でしょうか(いきなり何
と言う訳で、メルディに苦戦しながらなんとかなりました。
結局のところ、キルメルなのにファラばっかり出張るのがなんですが、キールとメルディの二人じゃちょっと話が進まない気がしたんですよね(苦笑
いっそED後捏造とかでもいいかなとは思ったんですけど。
タイトルがとても恥ずかしいのはご愛嬌(笑
ちなみに、個人的にはキルメルは結構好きなカップリングだったりします。

2007/2/15


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