本日は、お奨め本です。手塚治虫の長編まんがに「ブッダ」(全14巻)があります。手塚の代表作「火の鳥」と同時期に書かれたもので、手塚の円熟期の作品として評価されています。その「ブッダ」から、ブッダをはじめとする登場人物達が語った言葉とそのシーンのひとコマづつを解説とともにまとめたのが、『手塚治虫のブッダ救われる言葉』(手塚治著 光文社 知恵の森文庫刊)です。
本人は、「かんじんのお釈迦様の思想や教えも手塚流にかえてしまっていますので、その点でも問題になりそうです。この作品はお釈迦様の伝記をかりた、まったくのフィクションといえるでしょう。(略)ぼくは敬虔な仏教徒ではありません。いろいろ今後も反発や異論があるでしょうが、“鉄腕アトム”と同じ性格の手塚の宗教SFとみてくださったようがよいと思います」と、言い残しています。しかし、「鉄腕アトム」「ブラックジャック」「火の鳥」「ジャングル大帝」など、どれをとっても手塚作品の底流には、大きな人間愛や生きとし生けるもの自然との共生など宗教的な思想が見え隠れしていることは、読む者誰もが感じるところです。真実は物語の中に宿る。数多の大乗仏典がそうであるように、正確な仏伝ではない、フィクションだからこそ真実が見えてくることもあるのです。
手塚治虫のブッダ救われる言葉
本書は、「ブッダ」全14巻の中のエピソードを、第1章 人の運命、第2章 悪としての人間の存在、第3章 ブッダ 生と苦悩と死、第4章 死について、第5章 虫のように生きる、第6章 ブッダ 救いの言葉の6章に整理して、これに生前の手塚自身の言葉をプロローグ、エピローグにまとめて構成されていて、分かりやすい解説も付けられています。なにより、まんがの吹き出しに付けられたセリフが素晴らしく格調が高いのです。まんがの天才は、どこかで生きていたお釈迦様と出逢っていたのかもしれませんね。
終わりにその冒頭の言葉を引用しておきましょう。
「永遠の時と空間にとって、人の一生などほんのひとかけらの氷の粒にすぎない。
いま、生きて美しく輝くとみれば、つかのまに消え去って、時の流れの中にとけこんでしまう。」
諸行無常の教えです。
ブッダの生涯についてのお奨め本は、以下のページで紹介しています。
http://plaza.rakuten.co.jp/epub777/diary/200612160000/
ナムブッダ
合掌 観学院称徳