②個性迸る楽園
ところで、えー、あー、今更のカミングアウトだが、私は芸大出身である。音大ではない。このブログを読んでくださっている方々ならおそらく薄々勘付いていたかと思うが、お気付きの通り芸大を卒業しています。芸大時代はそれはそれは楽しかった。みんながみんな、自分のやりたいことに目一杯全精力をかけて貫き通していた。私たち音楽系の学部生は、ジャンジャン音を鳴らして楽器の練習をする。その横で舞台系学部生は発生練習やらダンスやらをして体で自己表現している、その横では建築系学部生は設計図を引っ張り、美術デザイン系学部生はイーゼルを立てて絵を描いたり得体の知れない物体を作ったり、写真系や映像系学部生はそこらで撮影をしている。何が良かったかって、年に2度ある試験はすべて公開の下行われたこと。例えば、私の弾くピアノを写真学部生が聴きに来てもOKだし、私がダンスを見に行ってもOK。そうやって学内全体で高め合う学風だったことで皆刺激され合っていた。身なりも自由そのもので、私たち音楽系は毎日が演奏会のようなものだったから、かかとまであるような長いドレスを引きずって学内をウロウロ、そのままの格好で食堂でご飯を食べるのも平気、美術系は絵の具でペイントされたカラフルなツナギ、ダンス系は金髪にドレッドヘアやアフロヘアやピアスなどの派手な格好で踊り狂う、写真や映像系はカメラなどの機材の荷物が多いからカスタマイズしたバッグを見れば一目でそれとわかる、唯一建築系だけは一般の大学に近い地味な印象だったが、とにかく学内はまるで動物園のようだった。<見ておくれ、ボクらの体は唯一無二なんだぜ。色鮮やかで美しくてかっこいいだろう>と誇らしげに自慢するかのように。これが日常だった。これが私たちの普通だった。ここに4年間身を置いた。学部は違えど目指すものは皆一緒だったから、誰も何も他を気にしない。私にとっては個性迸る楽園であり、実に居心地の良い居場所であった。