最高に鬱
日記を書き始めた時は彼に受け入れられて、心がそばに近付けた喜びに満ちていただけど、1ヶ月もたたないうちに罪悪感と虚しさに包まれた初めての日記を閉じる頃には彼は生活の一部になっていてお互いを知り尽くし優しい時間が流れていた再び日記を書き始めた今は自分の中で別れを意識していて揺れているだって、もう望む事が無いんだもの。毎日、起きてから寝るまで彼は私を忘れない。おはように始まって、お休みで終わる毎日。だけど、私は奥さんじゃないし、もうこれ以上彼に望むこともない。今では、『える、何してるの?』同じ言葉でも、急に会いたくなったのか、どこかに出かけたいのか、チケットやホテルの手配をする為に私の予定が知りたいのか、ただ、話し掛けたかったのか、迎えに来て欲しい(夜3,4時間しか一緒の時間が取れない時は私達はこう呼んでいる)のかがわかる。共通して言えるのは、『家に帰りたくない』っていう事だけ。彼は、私が「会いたい」って言うのを待ってる。たぶん、「会いたい」って言えば彼は飛んでくる。それもわかってる。でも、本当に彼が言いたいのは『える、これから帰る。』その一言だけだ。もうわかりきってる。そして、私に望まれている言葉は『わかった、待ってる。早く帰って来てね。』これだけだ。こんな簡単なことだけど、一緒に住んでないからそれはできない。わかりきっててもそれができないから『最高に鬱』の気分になる。とっくの昔に、私達は気分転換ですまされる付き合いじゃなくなってる。会ってリフレッシュみたいな感覚にはもうなれない。10月のあの日、私達は10年分を飛び越えた。深く傷付いたけれど、一生を共有した感覚に包まれた。あの時の彼の姿があって今、私は別れを選べないでいると思う。彼の心の隙間に滑り込んだのは自分だ。だけど、私達が作り上げてるのは汚い部分をそぎ落とした「虚構の世界」現実には、請求書の山を見て落ち込む自分がいて、生活する為に働かなくちゃいけない。とにかく今は『最高に鬱』