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第四章

第四章―選ばれなきものの鎮魂歌

孤独は人を破壊しないかぎり、人を高めるものだ。
ツヴァイク


1
「ハルトヴィヒは今の冒険者制度、変だと思わないの?」
軽くポテトを食べながらアウレリアヴィーナの質問にきょとんとなる。
「悪いパンドラを倒して、金稼いで、スキルを手に入れるのが悪いことなのか」
「おかしいことよ、誰かを犠牲にした制度が正義として成り立っているのよ、女神の名のもとに」
「でも実際、パンドラが臣民を恐怖させているのは事実だろ」

永遠なんて言葉、軽々しく言うな。隣の騎士にヴィンセントに確かに思った。カラ―ル王国は今、シルヴァ・ローズ、帝国軍最強と言われた近衛騎士団の軍勢に迫られている。時刻は深夜三時。侵略行為のほかではない。
「ばかな、防衛線が突破されただと」
「ありえん」
カオスコアがいくつか、一面の崖近くの花畑で発生している。
≪光加速≫
エリックは友人を助けようとした時、光と炎のマナを発動させた。ゴドウィンたち、旅の青年軍人は、意外な場面に驚いた。
呪文が勝手にほとばしる。精霊がエリックにすべてを教えてくれる。

彼女は常に競争の中にいた。
「はぁぁ」
なんだって、目の前の盗賊たちはこんなに必死なのかしら。
13歳の白魔術師は、彼らの怒った顔、赤くなった顔を見ながら本気でそう思っていた。
「馬鹿だな、お嬢、旦那さまが興味ないはずないだろう」
「その呼び方、やめて」
コーデリアは実力で手に入れてみせる。高い魔力、戦闘スキル、指揮能力。高い自制心。彼女は正真正銘、アリシアやエイルの兄弟だ。
「見て、燃えるような赤い髪」
「巻き毛」
相手にする気も起きない、臆病者は口だけがうまい。
「飽きませんね」
「全くね」

「だって、いうならさ、パンドラと勝手自分の仲間を殺して生きてるんだろ」
エリザベートやイーグル隊のことか。
「やめろよ」
「理解できねえよ、それで平気でいられるなんて」
ハルトヴィヒはそれにはひっかかっていた。

優しい少年だ。
ウルリヒは控えめで優しい。
「やはり、戦争は続くのだろうな」
「え・・・」
ウルリヒが顔を上げる。
「このたびの抵抗運動や騒乱も不安の象徴なんだろう」
ハルトヴィヒもイグナスもさすがにふざける気になれない。

「ダレン、お前馬鹿だろ」
ヴィッターに差し出す手。どうせ死ぬ命に温情。
「そうかな」
「そうだ、普通は人さまの面倒事にいちいち、そこまで介入しねえぞ」
「したくてしているから」
善人といえばいいが、危機意識がないというか、自虐趣味?
「はぁ、すばらしいこって」
「君だって助けたじゃないか」


究極武装≪神の再来≫を起動、天魔落ち達はヴォルフリートの持つ極限までマナを引き出す技がまだほんの初期の最強技であることを戦慄する。
「下れ、エクスカリバーァァァァ」
空で歪んだ金とオレンジの雷、いや、龍のようなものが浮かぶ。

ゴォォォォ・・・・。
ローゼンバルツァーのマルス因子が加速させ、ヴォルフリートを輝かせ。ウォーロックを吹き飛ばせる。

雷の大きい音にアウレリアヴィーナは身を震えさせる。小さいころから苦手なのだ。それでよく、魔術の教師やメイドやらを困らせた。
ピクルスは嫌いだ、本当に。
「アウレリアヴィーナ、貴方恋は?」
コーデリアの言葉にかおをあげる。視界に貴婦人が連れた小型犬が目に入ったのだろう。コーデリアは大きく大げさに後ずさる。そう彼女は犬が苦手だ。スタイルにとらわれるのですぐいつもの偉そうな態度に切り替えたが。ピーマンが相変わらず嫌いなのね。アウレリアヴィーナは見ていた。
友達に気付かれないよう、ピーマンを取り除いたのを。
「いえ、してませんが」
「気になる人は?」

もちろん、アウレリアヴィーナは魔術師の名門の後継者と同時に貴族だ。年頃ではある。いやみだそうなので、自分で言うのもなんだが美人なだそうだ。
「ヘレネ様とシエラさまよ」
華やかなアリシアやマリアベル、それとは逆の静かなヘレネやシエラ、かわいいアーデルハイトやイリス。声をかけてくるが、難なくの返ししかできず、いつも大体諦めてほかに誘いに行く。アルベルトとラインホルト、美しい男性に興味がないわけではない。でも自分に理想を求められても困る。自分はそこまでの人間じゃない、大人でもない。
「貴方も来てたのね」
挨拶をした後凍てついた冬の気配を感じる。威圧しているつもりはない、シエラははっとするほど、こちらが圧されるほど美しい。
人ごみが苦手で、鼠が怖くて、お母さまが怖くて、嘘やひきょう者が嫌いで。
「お母様は元気?」
こういう派手な席はなれなれしいものも多く、潔癖な彼女は気づかれも多い。シエラは静寂を愛するのでこういう上辺だけの席は苦手だろう。
「ええ、元気よ」
ヘレネが答えた。シエラはまっすぐで、ストイックだ。秩序を正しさを求める。故に融通を嫌う。自分にライバル心を持っている。けれどわざと負けるのも屈辱なのだろう。平行線だ。とり作ったような会話。冷たい目でシエラは自分をみる。

――フィランを映したような容貌と神格のペルソナは少女にとってつらい日々だった。東方の西側の山の中の秘境。エルフほどではないが、帝国の王家を守護するユニコーン属は飛び抜けてのペルソナを持つ。類まれな戦闘能力、トトの異界への適応性。その生涯は神秘性に満ち、吸血鬼ほどの不死能力はないが、個体数が少ない。その結果、ハーフエルフやハーフオークよりは特が高いが、毒素の強い魔法には勝てない。ハイエルフやアンジェロとも仲が悪く、故に集落を構える生活をしていた。そのせいか、仲間とのきずなが強い。それゆえに、掟が存在し、規律がある生活をしていた。
霊宝珠という特別な角を持つ女子のユニコーン属は生涯神に身を捧げなければならない。祈りで帝国や王家を守り、魔を浄化する。ゆえに幻魔珠を分け合って生まれる双子は、その逆であり、天魔落ちをおおく呼び寄せ、災厄をもたらす。神子であるネフィリアの母は、双子の娘を生み落とし、ネフィリアを殺そうとした片割れを引くこととなった。

ヴォルフリートの得意な剣、最高位精霊の力を宿したアスラの剣、
≪トラモント・レヴォルツイオーン≫
とらえた標的すべてを神聖な太陽神の炎で滅ぼす剣が敵を撃滅する。
≪エクセレント・バトルフィールド≫
アリスの第二武装、その空間においてはあらゆるマナ、ナイトメアも究極まであがり、騎士の力を最大限に出す。アリスの指先が動く。
光と時間の最上位精霊の王が彼女に力を与える。
≪エリダラーダ、汝の偉大なる力をすべての闇を撃ち殺すためのわれの力として与えたまえ≫
ヴォルフリート・フォン・ヴァルベルグラオ。カイザーの双子の弟。エレオノ―ルとレオンハルトの実子・・・天魔落ち。アーディアディト・フォン・ヴァルベルグラオ。双子の実の姉で、吸血鬼の曾祖母を持ち、歴代のブルー・レジ―ナよりもありえないほどのマナとペルソナ、ナイトメアを持ったため、畏敬の目で見られる。種族は人間。エレオノ―ルの不義の噂もあったが、彼女も正式な息女だ。
「お見事です、姫様」
「サファイヤエル」
数々の悪、テロリスト、帝国を破滅させようとした闇の者達を正義の剣で蹴散らし。
レッド・レジ―ナとブルー・レジ―ナは遠縁中の遠縁だ。それを口にすることは禁忌である。だが、少女の最大の大義は、魔女やパンドラにも手を差し伸べたこと。武力を放棄しようとしたこと。意志を通したことだ。それは幼い少女であるからできたこと。ユニコーン属の統領はあこがれの目でアリスとともにヴォルフリートを見る。信頼し合うアロイスとアリス。
「・・・」
ラビッツはそんな美しい光景を複雑そうな目で見ていた。アルバートもそれは同様だ。「行くわよ」
ローザリンデがヘレネの腕を引いて、アリスの前に立つ。
「え、ええ」
アリスは笑顔を浮かべ、多くの仲間の元に向かう。迷いやけがれは一つもない。しかし巻き込まれたヘレネの妹は氷のような表情でじっとアリスを見ている。優しく強く素晴らしい人達、支えてくれる人達。だがそこに、他の二コル達の姿はない。皆に仲良くしてほしい。いいえ、自分が変えて見せる。
彼女は最大の魔女だという。童話の中の魔女、純粋な魔女。周囲も魔女だらけ。フロイデはアリスの傍に寄りそうだけだ。だが周囲が応援に来た帝国軍、王宮騎士の中にそれを見つけた瞬間、光り輝く表情が曇り始める。カイザーもハインツも、それとの違いはアロイス以上に感じたことだろう。その場所は入ることができない。
「アリス・・・」
だが、姉はそのすべてを助ける。カイザーは助ける。ハインツやアルバートも。
誰もが少女を崇め、愛し、頼る。彼女は一人でも戦える。アリスの背中にそれが腕を回し、頭を少女の肩に預ける。本来なら悪だ、穢れだ。フードから漆黒の艶やかな髪が見える。
「ただいま」
「お帰り、アリス」

勿論、ネフィリアはそんなことは知らない。幻魔珠の角を持つものとは知らずに周囲に霊宝珠の巫女の娘として、里から離れた場所で神殿で育った。今考えれば、追い出されても仕方ない父――使用人と同い年の世話役の娘、尊敬と侮蔑、小さな箱庭の中で育った。周囲はにこにこし、何でも与えてくれた。口厳しいものもいたが意地悪だと思い、相手にしなかった。そんな中、あるヴェと同格に憧憬を集めるユニコーン属の姫は天才だった。太陽のように優しく、明るく、ネフィリアにも優しい、理想の姫君だった。グリム。彼女は別格の扱いを受けていた。父母のいない彼女にはよそよそしい同族も族長よりも、グリムの前では素直だった。そんな彼女のあとについていく、それがネフィリアの日常だった。
確かに彼女もマナに近いペルソナの量を持つが、彼女に比べれば平凡だ。わがままで育ったが、弱虫で臆病。預言の力もあるがそれほどではない。
みんな大好きだった。天才に勝てずとも秀才ならなれる。皆に必要とされている。期待してくれる世話役の娘や少年、母のようにと応援してくれるみんな、そのすべてが少女から笑顔を奪っていった。
期待以上のことができない。当然だが天才は優等生より上だ。剣の道に進むフィランの存在も会った、勿論ただ泣いて、弱いままでいる気もなく努力をした。
だが彼女達を超えることができない。適当に相手にされたことを気付かない愚かだった方が救いだっただろう。だが、努力したゆえに聡い少女だった。彼女達の後を追い、ただにこにこする存在。あきらめてしまえばいい、別に痛みを覚える必要もない、みんなそうして生きているのだから。
薄紫の長い髪、眠そうな青紫の瞳、白い肌。褒められたがネフィリアはこの外見が実は大嫌いだった。自分は偶然、母に選ばれただけだ。妹を犠牲にして、誰かに迷惑かけて、今の立場を得たにすぎない。なんて気持ち悪い髪の色だろう。

世界を映すのは、死んだ妹だったはずだ。赤紫の鮮やかな、あの使用人の男と同じ目の色を下、生まれて間もなく世界を奪われた妹の。真夜中の出会い。それもあの後は、少女に会うこともなかった。
ローズ隊での潜入捜査の最中、裏切り、競争に飽きていたころ、ネフィリアは第二区の名門のお坊ちゃん校に行っていた。
ただ一度の体を奪う剣の魔女の魔法アイテムを駆使し、作戦を遂行する。魂を入れ替え、自分の操り人形にする。だが、アロイスによって解かれた。あの忌々しいバルツァーの騎士によって。
帝国の裏切り者をタナトスに引き渡せたことが成功だった。
「君はあの時の」
ボーイ・ミ―ツ・ガールをしている。
「ちょっと、金髪」
ネフィリアは、頭上にイモリがいることに気付いた。そうああいう、イモリや蛇が実は苦手なのだ。蜘蛛も憎んでいるといっていい。
ただでさえ暑さが苦手なのに、何なんだ、この人間は。
「その覚えているか」
おそらく、あれはピジョンクラウンが手下に持たせた武器なのだろう。魂ごと、肉体を壊す金色の天秤の秘宝、トールの槍。
ピジョンクラウンは魔法アイテムを探索、盗むのが得意だった。
使用者の身体能力を上げ、あらゆる呪いがきかず、闇魔術の集合体。神の戦闘の記憶を忠実に記憶し、使用者にも同じ能力が使える。
パンドラはそもそもダークテクノロジーだ、問題はない。が、人間には徐々に使い続ければ、呪いを受けて、精神を破壊していく槍なのだ。
「誰です?」
女にだらしない男なのだろうか。そもそもダ、男性は苦手なほうだ。男性恐怖症ではないができれば関わりたくない。
「覚えてないのか」
ショックを受けているが、状況が見えていないのか。
・・・・何のつもりなのだ?
ネフィリアは、目の前のヴォルフリートを状況が見えない素人と決め、
「・・・参ります」
そう告げて、一気に勝負を決めることにした。近接戦は得意なほうだ。
「筋書き通りに現実は行きませんよ、少年」
嬢にからめられてはせっかくの実力も意味をなさない。
「・・・・終わりです」


――福音。
それが祝福かどうかは知らないが、ヴィンセント・フォン・ルヴァロア。ルードヴィッヒ・フォン・オナシスと同等に、アレクシスは初めから神に近いクラスの天使と契約した。天使ウラーヌス。
それゆえに、ブラン・レジ―ナはアレクシスを求めた。
「きさまぁぁぁぁ」
「エシュ・トルエノッ」
魔女に、その手下の使い魔にアリ―シャの目の前でアレクシスは得意技、エシュ・トルエノ を放つ。
「これがアレクシスの聖剣・・・」
金色の雷が視界をおお尽くすほどにあふれ、神炎の剣で敵を魂ごと焼く。地面ごと、敵を引き裂き、敵は苦しむ間もなくただ死んでいく。
「くっ」
だが使用者には大変な負荷がかかる。守るものがいるからこそ、発動するアレクシスらしい、すべての命を守りきる剣。マナが強大であるが故、何とか使いこなすが、力を分断し、敵の身にその破壊力を向ける。ラ―フォガのような単純なもの、ヴィクトリアのようなものにはできない、実は細かく集中力が問われる得意技だ。


忠誠愛。だが、それは狂気ではある。一つ間違えば、あっという間に破滅の道を行く。元々は魔女崇拝が盛んなトーロ中立国の生まれ。ある意味での博愛主義。ただし、パンドラは除く。トレインにとって、パンドラを倒すということは、パーシヴァル家をレーヴェ家と取って代わるための手段にすぎない。楽観主義者で武力主義、複雑な性格のスパイスは、貴族ではないが、ツヴァイトークのマギア・ウォーが絶えない場所で生まれ、パンドラが剣であることになれた男だ。
「グリフロッド・・・」
ばたりと倒れる。それから、男は妻や娘、友人を思い描いた。第14部隊隊長スパイス、副隊長トレイン、隊員達はすでに倒れていた。死んでしまえば何も意味がない。
「弱い人」
だが、少女は、フィネはそれだけ言い、ティアラはその横顔を。
ああ、イグナスで遊びたい。
女性にとって、姉と同様、その名前は尊いものだ。
「貴様」
カルティスは狂人であり、忠実な下僕であり、顔が広く、変装術も高い。ブラこんでナルシスト、派手好きで天才ゆえ他者を下に見る、美の女神に愛された、魔術の研究家、ティアラ。
「カルティス」
ぐしゃっ。血がほとばしる。第15部隊隊長ティアラ・ソラヴィーは副隊長カルティスとともに見ていた。そもそも、こんなに部隊を分けるほど、帝国内、それ以外にパンドラはいるのか。
後ろの方で少女の声がした。
「エレク、お前がなぜ、ここにいる」
「お前に関係ないだろ」
少女だった。背が高い、黒髪でかなりのロングヘアであいラインにピンクを添えて、下唇に赤い唇を添えている。


光が噴水のように降り注ぐ。小鳥が飛び、高台にその少女の姿があった。といっても、優雅にお茶ではない。騎士団団長として、任務への執行、騎士団を止める者への書類、武器の調達や弾薬の数。銀の十字架の遊撃部隊があちこちに出撃しているからと光の騎士団が帝国の首都に引きこもっているかというとそうでもない。特魔とともに帝都内の治安の維持や秩序、王宮に権利を与えられた騎士付の大貴族達。彼らとの関係を保ち、多くの行事に参加し、魔女やウォーロックを倒す。
白の騎士団が本来の力を出せない今は多くの騎士が、他の白梟の騎士団とともに臣民を守るために動きまわっている。
姉などは無理をせず、休んでもいいと言ってくれたが。
「テおドールは早く戻ってくるのよね」
「もちろんですとも」
王宮に向かいながら、侍女や傍づきの騎士が満面の笑みでこたえる。
「ウロボロスも多くの戦士や冒険者を送っていますし、大丈夫ですよね」
「ええ、もちろん・・・」
こんな時青の騎士がいれば心強いのに。
「私の役目は民衆を安心させること・・」
マリ―ベルも頷く。
「ええ、そうよ」
ウロボロスもじぶんの騎士団もいる。パンドラもわかって、戦ってくれるはず。


過剰な自分への依存、最強故高貴な生まれゆえ、自分が偏った存在、狂人で天才。錬金術師殺しに異常な喜びと執着をする、美への忠実で狂気的な僕。第二位純血貴族ル・パーリーは赤の王(レッド・レクス)の熱心な崇拝者であり、赤の女王(レッド・レジ―ナ)をその一族をことのほか嫌い、赤の王(レッド・レクス)の騎士であることを誇りにブラッディ・ローズに無茶な命令を出していた。
やはり、王座が狙いか、あの女狐が。ぎりっ、と歯をかむ。そもそも高貴なものとそうでないものは区別すべきだ。武力主義ではないが、いつまでも人間どもに勘違いさせてはならない。頭が筋肉で、破壊を尊ぶ鼻つまみ者にタナトスやウロボロスを好きなだけ略奪、殺戮させればいい。
「帝国に進撃する」

「本命になる女性ね、なかなかいないな」
「遊びたいんでしょ」
「否定はしないけど」
クリストファーは、空を眺める。


                 2
「何、その力…まさか、ナイトメア?」
シュウウウう・・・・。
「そうだ」
ヴォルフリートの全身から粒子状の光が舞い上がり、形が作られる。だがそれはかってのメシアの剣ではなく、天魔落ちの斧状の分厚い刃を持つ虹色の光を持つ大剣として顕現する。

「くだらない手品を」
ネフィリアはヴォルフリートに鎌を振り回す。
「やめるんだ、無意味な争いは」
その中にアリ―シャ・フォン・アールズの中もあり、横から土の壁と同化していたウォーロックが数となって襲撃してきた。

ここにいるのは、時臣がはるか遠い東の果てで、故郷で、親友に後継者の座を奪われたからだ。信じていただけに、自分の恋人だった女性と手を組み、罪をかぶせて帝国に追放になった、同時に祖国が死んで行くのを目のあたりにしていた、付いてきた従者も護衛もわずかな一族のものも引き離され、その中のだれかが帝国に勢力を持とうとして、彼らと別れ、それでも、時臣は死ななかった。
「アリ―シャか」
「ええ、アリ―シャですわ」
黒いカチューシャをつけた腰までの長い髪をたらした、黒いフリルのエプロンドレスを身にまとった少女。抵抗組織、武装組織、東の国の血を持つ魔術系貴族のもとで傭兵と生きながらも時臣はそこに忠誠だの、居場所は感じられない。
ー最強の戦士の称号。
結局は20代までなりながら、幼少時に抱いた現実的ではないものこそが時臣の正体。妄執の正体だ。
「・・・・それがローゼンバルツァーに伝わる白魔法の最高位魔法、キュア・クルセ―ドか」
ゴォォォォ。
「すごいな、なんでも、ありか」
「行くぞ」

帝国と帝国軍は同じ臣民だ。だが、4年前、生物としては弱い彼らは里を襲った。絶望的な状況こそ、人間関係、真意がわかるというが――グリムが里を離れていた時、黒い魔女を誰かがかくまっていると噂され、深夜に族長や里の実力者が中央に集められた。
だが真実なんてどうでもいい、裏切り者もいただろう。戦闘経験もない、寄せ集めの軍人達は、アーべマフォンドレスの上級ランクの女性兵士をつれて、黒い魔女やかばったものを出せと詰め寄った。
恒久的平和は怠惰なもの、下の者への慈愛の精神を忘れさせ、アテナの剣への戦闘参加をしないことも許されていた、王宮に守られている、気難しく警戒心の強いエルフよりは懐柔できる。
「そんなものはだれもおりません」
「そうか・・・」
だが、王宮騎士が優しい微笑みを浮かべ。

「綺麗なつきね・・・」
時臣の彼女はアーロンにそういう。漆黒の長い髪の彼女の親友もいて。
「ああ」
「世界がいつもこんな静かで穏やかならいいのに」
「吸血鬼らしくないな」
だが、吸血鬼よりは女神という言葉が似合いの女性は。
「争いは確かに生きる理由で消えないものよ、でもそれだけじゃない」

もしかしたら馬鹿にされ、笑われていたのかもしれない。でも、もしかしたら仲直りできたかもしれない。嫌いな人もいたかもしれない。
里の人間は自分を売る道もあった。そういう意見のものもいただろう。行動した者もいた。幻魔珠は不吉だ、弱いものは犠牲にすればいいのだから。
その日、初めて里の仲間に手を引かれ、ネフィリア個人だからではないのだろう、パンドラはすべて帝国臣民を守るとすりこみで教えられる。理由がある、誤解されているとだから武器を持って、戦うというものはいなかった。恥ずべき同族を遠ざけ、疑いを晴らそう、ともかくそれで神殿から出され、逃げて、冒険者が仲間を殺し、レベルを上げ、財宝や全てを手に入れる。殺され、もてあそばれ、フィランも勝手の力を失い、優越感を覚えることはなく、少女は人間という悪魔に激しい恐怖と拒絶感、できない自分に対する強烈な罪悪感だった。そう愛していた。言い訳していた、甘えていた自分がこの時ほど醜い生き物はないと思った。

ねたむものは、誰もが誉めたたえ、負けることを許されない、ただの少女でいられないものの地獄を知らないのだ。
「うぁァァァァ」
ウォーロックは冒険者たちの連携で劣勢となっていく、パーティーは合わせたように剣士と魔術師、戦士と各々の能力を見せつけるように攻撃していく。
「あんた、精霊術しか」
火水風土、基本的なエレメントを操り、アリ―シャは呪文を詠唱する。

戦闘経験も、世界の全てがユニコーン属だった自分はない。幼いころのトラウマは簡単に治るものではない。蝶よ花よと生きた自分はアテナの剣では何の役もたたない。自分が嫌う殺生、罪とされることもそこでは帝国のためと教えられ、正義とされる。なんて無神経で冷酷で低能で野蛮な連中、パンドラをそう思った時期もある。だがそれ以上に守る価値もない存在がいた。
人間は最低だ。私達は、私はお前達の道具じゃない。
彼らは大嫌いだ、自分は義務も責任も果たさないのに、いつも道具扱いをする。逃げて、利用され、手に入れなければ意味がないと知る。
ヴォルフリートのすきを突いて、殺そうと振り下ろした瞬間、背後からそいつを鏡映しにしたような美しい少年が左手を別の形状に変えて、自分を殺そうとする。
「貴方、同じ・・・」
「危ないっ」
何と、ゴットヴァルトを止めた。
それも素手で。
「・・・・何のつもりです」
ネフィリアにはカイザーの行動が意味不明だった。そのすきにゴットヴァルトが悪魔の手をネフィリアに放つ。
「止めろっ」
ズガぁァァァン。
「その女は敵だよ、殺すにきまっているにきまっているじゃないか」
狐に包まれた気分だ、同じ顔だ、・・・こいつらは何者なのか?
「ローゼンバルツァーの次期当主として、そういう卑怯は見過ごせない」
周囲で、おおという声が上がる。
「はぁ?」
赤いウェーブヘアの整った顔立ちの少女はその芝居かかった、ヴォルフリートの行動、言動に大きく目を見開かせた。
「攻撃をやめてくれ、お願いだ」
コーデリアは、ヴォルフリートが馬鹿だと思った。ここで優先するのは彼の正義でも主義でもない。
「今のうちに」
「ああ」
他の冒険者とともに別行動することにした。
「まあ、お願いなら仕方ないか」
ゴットヴァルトは深く、深くため息をついた。
「君は投降してくれ、暴力で物事を進めるのは間違いだ」
まっすぐなカイザーの瞳がネフィリアにぶつけられる。
「・・・しないといったらどうするつもり?」
「悪いようにはしない、君だってこんな卑怯なことをするピジョンクラウンに忠誠を誓っているわけじゃないだろ」
「甘いですね、私は貴方を一撃で殺すこともできるんですよ、戦場でそんな発言とは、正気と思えませんね」
「間違った方法は何も生まない」
槍をゴットヴァルトに向ける。
「その少年はパンドラでしょう、彼を使役することは正しいと?」
残った冒険者が一斉に魔法剣や杖剣、銃をゴットヴァルトに向ける。緊張感が一気にその場を包む。
冒険者の彼らがある四方形の画面、標的のレベルや武器を確認をするものでゴットヴァルトを確認する。
対象、ハーフヴァンパイア。ギルド登録なしの未確認パンドラ。
レベル5。必殺技、得意技は不明。アテナの剣にも記載なし。ペルソナは不明。
ナオ、壊れた卵という情報もある。生息場所は不特定多数。

「ここまで来たということはお前もそれなりだったというべきか」
アルヴィンはリリーシャとともにぎりっ、となった。
「あんた、自分の野望のためにピジョンクラウンを裏切ったのか」
リリーシャもにらむ。
「お前一人か、悪魔属(ディアーブル)殺しの英雄よ」
その言葉にアルヴィンの目が大きく目を見開く。
「勇敢と無謀は違う、仲間もいないか、小僧、哀れな」
「俺のことはいい、黒狼にヴァガットの相棒のあんたが何で」







ノンブル・トゥーの変形型のロッドか、アリシアは、フォルトゥナ騎士団第二等魔術師であり、同時に魔女部隊の精鋭の隊長でもある。
ハイ・マギアスの使い手であり、剣や弓、あらゆる武器を使いこなす。
得意技は光と時間の魔法だ。
≪テンぺスタ・ガロファ二―ノ≫
アリシアの足元に大きな魔術の術式によって生み出された紋様、なでしこの花が一瞬にしてつくられる。
彼女の攻撃の邪魔にならないよう、魔術と武術を特化した使い手の少女が一撃必殺の技を使い魔たちに放つ。

相手はワ―ウルフ、名前をセクスティーリスといった。幼い日、父が修行の相手にエデンから借りたパンドラといわれる種族だ。
「あぁぁっ」
炎がワ―ウルフを焼き尽くそうとしていた。
「あれは不利だ、あの程度であいつは死なない」
「で、でも・・・」
狼男は自分をにらんでいた。
「人間が・・・」

―なんて、心が清らかな人だろう。
「その、大丈夫ですか」
「あ、ああ」
アリスのまっすぐな視線。
胸がドキドキする。
「行きましょう」
背筋が凛とした、涼やかな声にどきりとする。
「いざべら・・・」
「ごきげんよう」
「・・・ああ」
皆でいることは好きだ。テオドールにとって仲間や家族は自分を作るすべてだ。困っている人がいれば、悩んでいる人がいれば助けたいし。
苦しみを分け合い、晴れやかに生きてほしい。自分らしく、自由に。


集熱の魔女(フーガ・ウィッチ)の力をピジョンクラウンは遺憾なく利用していた。鎖の魔女(チェイン・ウィッチ)は緑色のショートヘアに眼鏡、愛らしい顔立ちに均整のとれた身体を持ち、研究に明け暮れている。
・・・ヴォルフリート。
戦闘力、ペルソナを奪われ、行かされた屈辱は今も少女の心を暗く、濁らせている。あの憎き、女王の国の亞人兵(パンドラ兵)をすべて殺しつくせたものを。いまわしい記憶は時々、鮮明になってピジョンクラウンの中でよみがえる。
驚いたようにバーバラスが、カイザーを見る。
「お優しいんですね」
「当たり前のことをしただけだ」







               3
―二年前、テオドールは銀の頂の塔で修行していた。
フーガ・ウィッチが、異界からウォーロック、最悪なブレイクエッグの軍団を連れて現れたのだ。目的は不明。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああ」
悲鳴が鳴り響く。

ヴォルフリートの全体のパーソナルをネフィリアは見る。
「・・・・・貴方、化け物ですか」
「ナイトメアが最初から最高値なんだけど」
アレ、二人が俺を見る目が変わったな。ヴォルフリートは使い魔を呼び出す。
「カウントですか、帝国が与える天魔落ちの監視役の」
「俺の友達だ」
冒険者とともに前に進む。

要するに利用されただけだ。ヴァガットは自分を最強だと、己を世界に刻みこみ、敗者の自覚もないピジョンクラウンの一味に興味はなかった。力の誇示なら小さいものでもできる。彼女の器はしょせん、辺境でお山のサルを気取るだけ、自分ならもっと上に行ける。
「さすがですわ、ピジョン様」
シュヴァルツウルフで予想以上に力を発揮し、いくつかの拠点を奪う、けれどピジョンクラウンは魔術師のクラスまで求めていた。
故にヴァガットは彼女を利用することにためらいがない。
「君とはいい同盟仲間になれそうだよ」

「・・・・・君は時間というものに余程嫌われているようだね」
銀の頂の塔の出身、カリスはゴドウィンと仲間たちにそういった。女王の国の機密機関、そこに幼い少女がいる。
「そういうなよ」
亜麻色の三つ編みを帽子をかぶり、学者風の衣装に身を包むが、ゴドウィンに引くことはない。

剣を握ることは、当然誰かの命を奪うことだ。
だから、アルベルトのように善や正義の死者のようにアルフレートはなれない。
「ありえねえ」
「なんなんだよ」
命に区別をしてはならない。
―優しいんですね。
いつか、助けた港町の法術士が自分に言った。
【大気】【勇敢】【善】、光属性、幻惑魔法や雷の魔法が天敵といえる。青の賢者の塔の出身であり、王宮騎士付近衛騎士団に所属した後、16歳でワイバァン隊に所属する。いうならば、パンドラハンターとしての経験は少ない。世間知らずのお坊ちゃま、愛想のない優等生、兄や親の七光り、Aランクの剣士であり騎士。
学園ではそれなりに頼られて、クールだのいわれているが、媚びへ釣るものは相手にせず、親しくしてくれるエレンやシャルロットはうまくいかない。ワイバァン隊では、オルフェウスの従士だが、オルフェウスは隊舎にいることが少ない。女性関係は、幼馴染がいるが、モテるものの、アルフレートはそういうのが苦手だ。
秩序を重んじ、隣人を大切にし、使命感に求める。頼る人間は仲間にいるが、同格の人間はいない。
不幸ではない。だが、みんなが言うように自分は大人でもない。兄に認めてほしい、姉を守りたい、カイザーを助けたい。目標は立派なもの。卑怯者や嘘つきは嫌いだ。逆にそういう奴もアルフレートは嫌いだ。だが、そういうのを超えても人を引き付ける、何もしなくても人に求められる人間はオルフェウスや二人のカイザーだ。
嫌いで嫌いだ。相性だろう、価値観も主義も違う、だがゴットヴァルトは自分が嫌いなもので造られている、だれもが彼とは距離を持っていた、だがあいつは自分を曲げない。怠惰で嘘つきでいい加減でマイペースで自己中で、傲慢で、虐められてもうとまれても当然のことはするし、妥協や譲り合いはしない、いらいらする。世界は自分が中心というべきで強いものに媚びるいやな奴。
学校の成績も隊でもあいつは好きなようにする。冷たい奴、へらへらした奴。だが、奴が好きな人間もいるのだ、あいつがまともなのは外見だけだろ。
オルフェウスはカイザーにはそれなりなのに、ゴットヴァルトには甘い。彼の嫌いなタイプだろうに。悪いところが、好きな人間には美点に見える・・・なのだろう。
「犬みたいに言われても」
セアドアは笑う。
「お前はよく平気だな」
ルベンティ―ナ、アルフレートの姉だ。彼女は今ライナーの元にいる。魔術戦争のために。彼女は唯一、家族では味方だった。
≪天空・魔神≫
二節の呪文を唱える。敵が逃げていく。
≪ブリッラ―レ・ティラール・・・ッ≫
街の人々が歓声を上げた時、敵は光の渦に巻き込まれた。

ヴォルフリートは正義を大義を守る。でも、残念、相手が類まれで不幸な少女だろうと、思い知らせないとわからないこともある。テロリズムに屈しない、これ国際常識ね。同族意識?何それ、おいしいの?門を守る門番、彼女のやりさえなければ、攻撃力も下がる。レベルからいえば、ハーフヴァンパイアでブレイクエッグの僕はユニコーン属よりは下、だがメイン級の実力者、戦闘員でも完璧な完全無欠な生き物ではない。ブレイクエッグは大量生産のアタッカー、敵を引きつけるモンスターなので、扱いが面倒だ。
「貴方、なにを」
早めに行動がベスト、ネフィリアを皆の前で叩きのめす、作戦にかだが初印象が大事なので槍を奪い取り、ペルソナの源である角を折り、無力化する。同時にハーフヴァンパイアの力を使い、最大限に得意技を放つ。ただし一度きり、後で大量に消耗する攻撃魔法。
【ラストインパクト】
これを三度、少女に解き放ち、抵抗する気をなくす。巨人に頭上から正面殴られたような、コウモリと紫と黒が混ざった異空間が質量と重量とともに襲うので人間なら一度目で死ぬ。色々、魔法が使えるような合成タイプのクルーエルやブレイクエッグは無敵艦隊に見えるが。
【ラストインパクト】
「ちょっ、まっ」
試練や成長、偉大なる静かな英雄を作るのが大好きな帝国は僕らで試し、最強のモンスターを生みだし、踏み台にした。

捕捉、正しヴァンパイアが持つ僕は膨大な魔力とへなへななブレイクエッグとしての力でいつも大変。
「紋章霊石の最高級品をが場飲みしているぞ、あいつ」
他にも隠れスキル、必殺技、属性はあるが、というか僕みたいないたいけな少年に色々詰め込みすぎだ。クラウド家の魔術遺伝子がなければ多分死んでる。
「協力はしますが」
ちらっ、と恐怖した目で見られる。後はあきれたとでもいう感じだ。
が、女性冒険者のように見限ったわけではない。パンドラでは、彼女にしたことは悪でない。それはまるで、物語の英雄譚の光景を見ているようだった。
聖者の威光――、またこの目で見る日が来るとは思わなかった。だがマルス・モアではない。
「ぐはぁぁ」
ヴォルフリートのレベル、全体のパラメーターが上昇する。
ただ体力がないので使うたびに消費が激しいが。
法術士がヴォルフリートをはじめとした、後衛、アタッカーをその法術で上げていき、風の精霊が敵の居場所や情報を救世主に教える。
「少しは自分の身も気を使えば」
ヴォルフリートを守りながら、片手でレッド・ローズの壊れた卵を細切れする。
「うるさい、俺はもともと頭脳労働が中心何だ」
「役立たず」
「何だと、いや、まあ否定しないけど」

宝探しして、トラップを見つけ破壊、結界を壊し、厳重な警備や扉を解除する。異常な身体能力と回復能力。メインの人間を補助する役割が狂った卵や壊れた卵と系統されるパンドラだ。
そんなもの、優秀な魔術師や聖騎士、パンドラハンターが作るはずもないのだが、悪魔の手の使いすぎの上、細かい多重化されたトラップ魔法や幻惑魔法を解かないといけないので、ペルソナの消耗が激しい。
そう、目の前の勇者、生まれながらの英雄様が中途半端なマナと破壊力なので僕が無意味な疲労に襲われている。
へなへなと女性冒険者が敵の女性のチェス兵とともに、うっとりした表情で戦意を消失している。
「何」
「お前は意外と女たらし何だな」
何でハムスターみたいに頬を膨らませているんだ?
「敵の兵力を半減させて、目標に近づきやすくしたのに」
「別に俺には関係ないが」
何か知らないがすねている。これで途中で帰られたらまずい、僕がフォボスの元に帰る時間が延びる可能性がある。
「まっさか、僕女の子にもてないよ、地味だしオタクだし、嫌われているし」
なぜか周囲の男の、特に16歳から20代前半の冒険者の目が冷たくきつくなる。「え、でも、さっき」
どんな弱い吸血鬼にも備わっている誘惑の術、本能的に持っている力だ。フレイヤの呪いとも呼ばれているという。
「吸血鬼の魔力だよ、僕個人の血からじゃない」
「…お前、その魔法で悪い子としているんじゃないだろうな」
「不潔」
捕虜の青紫のロングヘアの少女がなぜか後ずさる。
「していないよ、大体女性だけを一時的に戦意をそぐだけなんて使い勝手が悪いだろ」
「・・・でも、いくら貴族でパンドラハンターの名門だからって、エルフのメイドを傍に置くのは風紀に乱れるんじゃないか?」
ネフィリアが睨んで、気のせいか視線の温度が下がっている。
「誰から聞いてんです、それ」
「へへっ、これでも俺は、その道に詳しい貴族さまのつてがあるんだよ、坊主、お前さん、メイドをマリエルって呼ばせてんだって」
敵の姿がないからって、何で楽しいお話タイムでいるのだろうか。一級トップAの戦士の余裕?
「マリエル?」
「うちのメイドだよ、同じ家に住む」
「・・・大人の女性何だろう?」
「いや、同い年の女の子だ」
ヴォルフリートが目を見開く。
「何?休んだら、また次の扉にダッシュだけど」
あの子、ネクラだからまた別のチェス兵しこんでるだろうし。
「同い年の女の子と・・・、エルフって美形が多い種族なんだろう」
「・・・ああ、まあ、王侯貴族には受けがいいんじゃない、品がいい顔だし、美人の種類には入るけど」

「裏切り者ォォ」
「何が」
「お前は女性と無縁だと信じていたのに」
冒険者が、正気に戻った女冒険者とともにいきなりの展開に顔を見合わせる。
「はぁ?」
「可愛い女に子にメイドなんて、いくらなんでもそんないやらしい真似まで」

「別に何もしてないけど」
と答えた。
「まあ、マリアベル様を見ていれば、わかるものね」
「オルフェウスのような親戚がいれば、傍に女性おいても同じことはしないか」
・・・何か知らないが、嫌われているな。
「あんなご両親がいて、気の毒に」
あの人は分かるが、エ、アマ―リエ様?いつもお茶飲んで、たまに自分の方を見て哀れみと同情の目で見てくるイメージしかないけど。すると救世主様は鈍器で殴られたような、ショッキングな事実を裁判官から告げられたような表情をした。
「お前…どこまで…悪逆非道なんだ」
イメージ悪いな…、まあ嫌いだから別にいいけど。
・・・そもそも、僕、吸血鬼の魔力がなければ、女性が怖いから近づきたくもないんだけどな。
「いや、ヴォルフリート様僕しらんだろ」
「この外道がっ」
何で、エルフの女の子をメイドにしたこと、剣術の稽古の相手させたくらいでそんなこと言われないといけないの。
「お前、立場弱い女の子を日夜働かせて、まさか夜まで、人として恥ずかしくないのか」
「いや、ちゃんと夕方までですし、他のメイドと同じスタイルで働いてるけど」
大体庶民にそんな権限ないだろ。
「ケダモノ、悪党、冷酷、悪魔っ」
「メイドは一般的な仕事だろ、君はさっきから何を言ってるんだ」
「だって同い年の女の子と同じ家なんておかしいっ」
「?僕一応、今子爵の脳内設定で貴族の一人だし、パンドラやとう権限あるし、・・・・自分の騎士とどうこうとか、本気で言っているわけじゃないだろ、あの人じゃあるまいし」

ロイにとっては、ヴァガットともにお飾りの旗頭、赤毛のジャンヌといわれるソールの革命組織の剣姫リュクレースは頭が痛い問題である。ヴァガットはあらゆる抵抗運動のもとにいる。
彼らは今、ソールの中心都市近くに本拠地を控えている。イフリート隊の人間として、今、彼らの軍勢の前にいる。
だが、ロイの妹は、今、泣いていた。アントワネット、彼女はハートオブクイーンのもとにいる。
「救世主様が――ッ」
赤い髪の少女―アルメルがヴィントの足に取りすがる。少女は14歳といったところだ。魔法銃を手に危険なパンドラや魔女をヘンデルとグレーテルとともに各地を回っている。
「しつこい」
本来は勝ち気で生意気で、才気あふれる少女だが見る影もない。
「お願いします、ぜひにぜひに」
「いいかげんに」
ルーティもヴィクトリアも茫然としている。
「何でもしますから」
「その言葉に騙されるほどガキじゃないんで」




「奇妙な男だな」
「ははっ、よく言われるよ」
どうせ趣味だろう、アレクシス達のグループは仲が良く、戦闘の時も抜群の戦闘力を発揮する。ピジョンクラウンの手下もあっさり、アレクシスにほだされてしまった。世間知らずのお人よし、アレクシスは自分を保護すると言ってきた。フェリクス家やワイバァン隊の仲間達は反対した。
「ここは僕に任せてくれないかな」
噂ではアレクシスの父も変わり者だとか。女が放っておかない甘いマスクで、権力に興味もなく周囲からの人望もある。実際、ヴィネッサも心が乱されそうになるが、どうにもウソ臭い。直感というか。


「ようは最初から捨て駒か」
呆れたように忠臣といわれたピジョンクラウンの手下ガッシュは、オルフェウス隊に寝返った。
「早く殺したまえ、無用な情けはお主には不似合であろう」
「ずいぶんと大物何だな、それとも諦観か、お前らお得意の」
ずかずかと少年隊士が前に出る。
「隊長がお手を出すこともありません、そんな奴、俺が」
「下がれ、マルクス」
「ですが」
少女隊士が前に出る。一見少年にも見えるが。
「止めておけ、隊長の命令だぞ」
そんなつもりはないが、男所帯というべきオルフェウスの隊ではこの少女は自分を立てようという考えが強い。
だが男装、普段からも男として過ごすというのは恐怖心がこの少女を支配している。「お前もだ、アスカ」
「・・・はっ、失礼しました」
彼女も彼もそのほかの隊士、少年軍人達はあこがれのまなざしをオルフェウスに向ける。
ピジョンクラウンもガッシュもホルべノクも所詮、黒狼の捨て駒だ。だが、彼らと自分はやっていることは同じだ。本来なら、彼らは守るべき未成年、魔獣などと戦わせてはいけない。
知り合いの妹も同じ目をしていた。
「素敵です、アデルお姉さまv」
「うわ・・・」
「こわ・・・」
オルフェウスもマリウスも引いていた。
―割り切れよ、でないと壊れるぞ。
「ネルケ、フェリスはアードルフ達につかせている」
「はい」
「ガッシュ、お前の死はあの女に聞くか」
「・・・少々なら」
まるで軍人のようだな。

3
「もう、なんなの」
ズガン、ズガン。
「そういうところだよ」
「はぁ・・・・」
「もう」
まあ、ルーティの気持ちはわかる。白魔術師や法術士、シルバー・クロスは本来、アルトメルデ軍での後方支援というか、今のようにパンドラハンターのような集団ではない。ブレイヴは戦う司祭、つまりはルーティもシスターではあり。
「へええ、君がブラン・レジ―ナのね」
本場の魔術師、黒魔術師、まあ、古くからの血筋ですべてを決め、新しい一代の魔術師はそれに従う。銀の頂の塔の魔術師はなめていた。
「ええ、協力を」
「まあ、してあげてもいいが」
「うちも色々大変なんだが、うん」

冒険者ウラヴァは混沌の魔女に意識が奪われていくのをじわじわと感じていた。それは水路、甘美な声とともに、すべてをゆだねていきたくなるようなもの。
どこにでもいて、どこにもいない。理想的で、最悪な。
「あああ、愛している、愛しています、この地上のすべてが崩れようとも、貴方の栄華を、あらゆるものがあなたに膝まづき、愛を求めるでしょう」
アロイスはその女を知っていた。愛の本質をする女。故に誰も彼女を必要としない。
「大好き、大好き、ああああああ、神よ、感謝します」
その時、黒髪のハーフアップの少女の意識は狂気の魔女に支配された。

小さいころから何もかも持っているものはどうすればいいのだろう。折られた、奪われた命が蘇ることはない。優しく親切、けれどアロイスの前だけ、アルベルトはほほ笑みを消す。アーデルハイトは自分が同じ道に行くことを望む。五年前の大規模な叛逆事件は自分の父とレオンハルトが治めた。
≪サントテ・ウラガ―ノ・・・・≫
その剣戟は大地をゆらし、巨大な七色の引き裂く光の刃を、騎士団のものと力を合わせることで効果を発揮するものだ。けたたましい音、肉を引き裂く音が聞こえ、森や廃屋が敵とともに消える。
「やりました」
「さすがだな」


ヴァルベルグラオ家の屋敷。ウラヴァの肉体を手にした女は軍人たちを招き入れる。混沌の魔女はもともと人間から魔女となった数少ない魔女だ。
そして、ア―ガンスに、そのすべてにカイザーがクラウド家ではなく、血濡れたローゼンバルツァーのものであることを、いかにも正義感にあふれた元の人格のふりをして、証言する。
「オーダー、ごめんなさい、黙っていて」
「じゃあ、あいつは」
「彼は卑怯なローゼンバルツァーに利用されたんです」

現在、混沌の魔女はオーダーと行動していた。 イシュタルの金の十字架は、すべての迷える羊の祈りの場であり、女性を崇拝する傾向にある。コインの表と裏、野蛮な帝国と違い、パンドラも救う対象だ。
「えげつねえな」
オーダーは、彼女のブリジット信仰を知っている。慈母のようなほほ笑み。体中の術式の文様。まだ14歳。でもそれが悪だとは、変態だとは思わない。彼女が男嫌いになるには、十分だ。ム―デとの抗争で、彼女は父親に捨てられた。二ケの肖像の元で暮らし、タナトスでは自分と組む。
「ウラヴァ、今回は余計なことをするなよ」
「ひどいなぁ、いつも仲間のこと思っているのに」



・・・ジュリアは変な女だ。
「行きましょう」
法術師と聞いていたが、信じていいのか。
アルメルは光鳴石がついたグローブから、案内役の小精霊を取り出した。
最初から見方を助ける気はないか。パンドラたちはフロイデ達の活躍で地面に伏していた。
「冒険者様、エリクサー奪われました」
「はいはい、泣くな」
女性陣、目がきつくないか。
「さすが青の騎士」
「女性を破滅させる技術は基本スキルなんですね」
だから何で冷たい目でにらんでくるんだよ。
「で、どんな奴なんだ」
「風使いのアウィンです、目が怖くて凶暴でとにかく盗まれたんです」
「そうか、運が悪いな、ところでピジョンクラウンがどこにいるか、この先のトラップや魔物の居場所、できれば近道を教えてほしい」
少女の冒険者はよほど恐怖を味わったらしく、抱きついてくるのを強める。



軽蔑という言葉は生ぬるい。装備や情報が不足、そもそも現状を解決しなければ、もとより正義感が強い少女だ。ヴィントに冷たいまなざしを向ける。
「あんた、あんな女の子からエリクサー、武器と防具、あらゆる装備を根こそぎ奪うとか罪悪感ないの」
でもヴィントには、たかが一少女の個人的な言葉でしかなく、さらりと言う。
「お前も止めなかっただろ」
胸の奥が痛んだ。ああっ、もう。
「うっ、それは非常事態だから仕方なく」
ドォォォン、ズガぁァァァン。
「何だ?」

「お前爆弾使うとか頭おかしいのか?」
冒険者たちは敵の手下が次々に襲い、トラップも発動、リッチも出てきた。土地勘があるのか、すごい勘なのか、呪術を発動させ、クナイを敵に放ち、的確に殺していく。ヴォルフリートほどそんなに常識とかこだわらなかった。
「安全には気を使ったでしょ」
ボールほどの爆弾である。結構重い。カイザーは血の気が引いていた。
ぐぅぅん。
「・・・壊れてないな」
「まあ、ピジョンクラウンねちっこいから」
右にある鳥が翼をあけたような飾りにゴットヴァルトは触れ、前に押し出して、文字盤が描かれたコンソールを取り出した。
「何か言葉を入れないと動かないからくりらしいね、そこの鬼、暗号か何か聞いている?」
「私の役目は、あの場所を守ることですので」
「何だ、仲間じゃないのか?」
カイザーは純粋に聞く。
「あの方はだれも信用していません」
「ルーン文字にラテン文字、なんだこれ、いちいちパネルを動かすのか、最高魔術暗号機能もある、暗号解読は僕の担当じゃないんだよな」
二つの頭の漆黒の狼がほらあなから飛び出して、カイザーにネフィリアに襲いかかった。
「俺が守る」
「なめないでくださいっ」

≪レガリアの呪枝≫
ネフィリアが窯を振り下ろし、魔物を倒し、ナイトメアで完全に消滅させる。
遠くから予備の悪魔族の軍勢が襲来する。
「助けなきゃ」
でも――。
「放っておけ、自分から面倒事に巻き込まれることないだろ、門があいたらあいつらを始末してピジョンを倒すぞ」
「でもカイザーがいるのよ」
「どうせ死ぬ命だ、代わりなどいくらでもいる」

「ありがとう」
「貴方を助けたんじゃありません・・・」
「解けた」
そこでヴィントが前に出る。
「お前達、カオスの鎧を装備してるな、すべておいてこの場から去れ、ピジョンクラウンの賞金は俺がもらう」
「逆らえば、風で殺す」
「まった、こいつは殺さないで」
「手柄を奪われてもいいのか?」

その時、ワイヤーが、先端に武器をつけたものがヴォルフリート、ヴィントの間に投げ込まれ、ヴィントはよけつつ、邪悪なペルソナの気配に意識を集中させ、相手が呪術をしかけたと同時に、先制攻撃、呪符を放つ。
「面倒だな」
聞き間違いだと思った。二度と聞くはずのない伸びやかな、涼しげな声。かすかな陽光が差し込み、ヴィントはその少年の姿をとらえる。邪気を放出させながら、粘り気のある光の粒子を漂わせ、幼さがかなり残った、整った顔立ちの少年が死神のような斧を取り出し、頭上から襲いかかる、茶色のくせ毛がちな髪を揺らして。
ドォォん、ヴィントはすぐに決壊を張り、後ろに下がる。
「外したか」
ヴォルフリートがその少年を止める。
「待て、誤解だ」
「何が、すぐに殺さないと」
そのまなざし、振る舞い、まとう空気は全然違うがその顔はどう見ても。

「うーん、たぶん幻影草を浴びせられたかもしれませんね」
現在、フロイデがいる城塞都市はアーデルハイトの軍や帝国軍によって大慌てだ。臣民はもとより旅人のことなど気にかける余裕もない。薬屋を襲撃した暗殺者は黒魔術師によって、罪を暴かれている。冒険者である以上、必ず戦闘グループを作る必要はないが予想以上に魔女の裏工作で、結局フロイデはフォルトゥス、裏社会の人間に頼り、パンドラの女騎士、妖精博士のロゼッタ、ぼっち商人のケイ、暗黒騎士のダークエルフの少年(10歳)と行動することになった。スナイパーのマエストロに絡まれ、賞金稼ぎに追われ、魔術師の警察に追われ。
「トラブルメーカーですね、兄弟」
「ム―デ時代の習慣かしらんが、その言い方辞めろ」
「いやー、自分どこ行っても嫌われるんで」
エルフや天使は優遇されると聞くが、・・・まあここで差別意識は無意味だ。
「おい」
「何でしょうか、ご主人様」
顔が引きつるのがわかる。環境が終われる生活のせいか、自分は凶悪な顔しているとか。動物の耳に天使のような翼に尻尾。
「サアラ、従者だからってそういういい方はしなくていいんだ」
彼女はパンドラで少女らしさと女性らしさを持つ、14歳の少女だ。耳や翼がなければ人間にしか見えない。これもパンドラの特徴らしく、極端な美形か怖い外見かで分かれるらしい。
「?」
サアラは清楚系美少女というか、かなり整っている。胸はまあ、これからだがスタイルもいい、性格もよく、言うことを聞く。
「ご主人様、気分でも悪いのですか?」
「いや、いい」
暗殺者は過去の夢を見ている。
「止めろ、近づくな」
暗殺者があとずさる。
「僕はあなたを信じます」

「・・・・・・性格悪いな、お前・・・」
背がたい、黒衣の青年が急にそう言ってきた。
「ヴォルフリート、後ろに」
「はぁぁぁ」
だが青年は攻撃態勢を解いた。
「・・・・何のつもり?」
風のエレメントの気配がする。かなり強い。
眼光が鋭い男にヴォルフリートが近づく。
「俺を覚えているか、ヴィント」
「カイザーだろ、寝ぼけてんのか」
ゴットヴァルトは知り合いらしいことは気づいたが、ヴィントを近づけなかった。
「なんだよ、怒ってんのか」
「君は冒険者かな、どこに所属している?」
心臓が脈打つ。
ああ、もう面倒な。
「カイザーッ」
「ヴィクトリアッ」

「・・・・ハトコ」
「ああ、俺が知らない間に他国にいったウルリヒの兄だ」
誰だろうか、それ。何やら僕を見ていつくしむよう見てくるが、気のせいだろう。ズゥゥゥン。
「・・・・で、ヴィクトリア様もクラウン退治に?」
「ええ、貴方はなぜここに?」
「大イベントの打ち合わせだよ、花火も出る」
おお、オタクの。
「この人、君の護衛かパーティーメンバーなのか」
「いい加減他人のふりをやめろ、お前にはそういう遊びのセンスは欠けているだろ」
ずかずかと来たが、意地悪そうなあんちゃんかと思えば笑えば人懐っこい。
「・・・・初めまして、ゴットヴァルト・クラウドです、ヴォルフリート様のパーティーに今だけ所属しているものです」
しかしよほど似ているんだな、その人と僕。
「ああ、俺の相棒だ」
なんか嬉しそうだが、自分の立場わかっているんだろうか。


クルーエルエッグに、ダヴェーりゃの少年騎士はすべて奪われた。大事な姉も、町も友達も、故郷そのものが。
「・・・・・理想にまだこだわるか」

「正しく、優しい人、そんなフレッドさんもそうじゃないですか」
「くそ真面目の間違いでしょ」
ウルリヒとコーデリアがそう言って去っていく。

「本当にそううまくいくか」
「ダーウィンさんはまた」
「オーダー、君はどう思う」

「関係ないこと、天気まで考えるな」
ローザリンデが壁にリヒャルトにめり込まされていた。
「は、はい・・・」
豆腐メンタル、それがローザリンデだ。

「・・・・くっ、まさか囲まれるなんて」
エリザベートは膝を折り、精霊魔法で対抗し、ピジョンクラウンの元へ走る。

「すまない。アレクシス」
「いいよ、他の騎士団のみんなは?」
オルグはぐっ、となった。
「はぐれたんだな」
「方向音痴だもんな」

二度と哀しむ人を作らないために。多くのものが、精鋭の精霊騎士が、暴走した悪魔型のパンドラ、デスタイヤ―ルは毒を含んだ炎の弾を牙だらけの口から出す。
―水の精霊はすべてを守る大精霊ではないのか。二つの短銃タイプを持ちながら、北方の伝説が多く残る場所クレーヴェル・ドゥイハ―二エ出身の青年は三人ひと組となって、作戦通りに戦力を四つに分断させ、敵を倒す目標の局面に突入していった。
・・・純粋だね、みんな。
何ともコワク的な唇だ。第12部隊隊長ウラ―ノの趣味は知っていた。
「場所と時間は選べ」
誇りとすす、金属同士がぶつかり合い、容赦なくペルソナの分断された力が北方の帝国軍前線基地、ルぃーズぃ港に流れ込む。後方支援の結界術士の少年が全体を強大な結界、攻撃するパンドラの攻撃を半減化させ、不可視のアーチャ―ガいるかごとく、連続早打ちで撃ち抜いていく。
結界は、ストリリぇ―ツ・ディメンションという。女性である。
「すみませんすみません」
主戦戦力の剣士や戦士を支える魔術師、敵の居場所や情報を探す風使い。だが、それでも戦うことは哀しみを生むものだ。副隊長パトリシアはひたすらに謝っていた、第13部隊隊長、強面で体の大きい、沈黙を愛するアルフに。
「キャンディわからないな」
副隊長キャンディーは雨を食べながら首を傾けていた。


4
「混沌の魔女、お前は崇拝者を使い、メシアからすべて奪った、何が狙いだ」
「フォルクマ―ル様は気づくのが早いですわね、もちろん、王子様を英雄にするためですわ」
眉間にしわがよる。
「それが策略ならまだ救いがあるな」
「それにあの予言、わたくしのヴォルフリートが英雄になるには大いに便利ではないですか」
「ピジョンクラウンたちがシュヴァルツウルフから追放されるのも計略か?」
「それは別の方の遊戯ですわ、私が求めるのはただ一つ、全人類をブルー・メシアのもとに膝まづかせ、彼に愛されることです、乙女らしいつつましい夢ですわ」
「お前達は俺達を恨んでいる、真実か」
「さぁ、そんなうぶな方はいるでしょうか」

ビ―ッビ―ッ
警報が鳴り響く。
逃げだすことは、北の大女帝の、救世の神巫女メルヴィは、背中の兵士たちも皇族にも民にも許されない。

≪コロッサル・アッスンツイオ―ネ≫
ルドガ―の前でアーデルハイトが究極条件発動術式を、神聖な光とともに発動する。
「おお・・・」
「ブラン・レジ―ナの光だ」

「くっ」
「次はないぞ、アルベルト」
聖騎士のエースにアルベルトは額の一部をマナで斬られた。
「出すぎた真似をしました」

「アルトゥルは真面目だな」
「・・・・貴方、本当に王宮の騎士の一人ですか」
そういいたくなるのもわかる、爽やかな緑のぼさぼさ頭におしゃれ眼鏡、来ているものもカジュアルだ。
「まあ真実は残酷だから」
アルトゥルは顔を覆いたくなった。

「・・・・また、お前ですか、グレイ」
「いいだろう」
「お前が来るとトラブルの種がついて回るから嫌なのですか、そんなにメシアが恋しいですか変態」
「僕がそんなにじゅんそうに見えますか」

「不変の魔女・・・・」
マリアベルは、イングリッドとともに柱や壁と一体化した女性を見る。女神だ。事情が知らないものが見ればそういうだろう。


「レガ―テ・・・・」
女王の国、ヴェーチェナイトのレが―テはウォーロックの侵攻に立ち向かう。心配する赤い鎧の少年がイーグル。


「ウルリヒか・・・」
アルベルトが顔を上げる。
「あいつのことは気にしないでくれ、君が嫌いなんじゃない、一部の貴族に苦しめられて」

マリー・アンジェが手に抱く細剣・・・剣銘ル―ナル・クレッシェーナが、神々しく光り輝いている。アリシアが太陽的な美しさの少女なら、マリー・アンジェはまるで一級のビスクドールのよう。抱きしめれば折れてしまいそうな、三日月と純白の和服を思わせる荘厳な礼装のドレスを着る少女の全身から放たれる攻撃的な闘気には叛逆者オリオンの刃の当主も押されそうになっていた。
「秩序を乱そうとは愚かな」
精鋭の兵士たちもたかが15歳の小娘の言葉に肩を震えさせた。

殺してほしい。殺してほしい。
ゴッドスレイヴ実験で、少女は何度も笑いながら目の前の白衣の男たち、軍人を見る。
しにたい、いいよ、今なら何だってしてあげる。
観客席にいる魔術師の有力者、錬金術師、貴族たちは反対先のパンドラの国民を見る。余程目の前の人道的ではない光景が陰惨を極めても興味がないのだ。

だが少女はそれでも、この先パンドラや天魔落ちとされてもかなえたい夢がある。
―ラ―ス。
あいつは、帝国の人間なのに軍国の人間の振りして、三年も自分達をだまし、兄さんと故郷を奪った。今も帝国は我が国に侵略している。軍を大きくし、牙を向けている。
レオンハルト・フォン・ヴァルベルグラオ。
兄さんの同僚を、罪もな痛みを手に掛けたあの悪党は惨殺されたという。
・・・・天罰だ。
戦争で、軍人は自国を守る義務がある。少女は理解している。
ざまあ見ろ、悪魔め。

三人組に囲まれるゴットヴァルトの前に、エリザベートが氷の結晶を具現化して現れる。
「それ以上、彼に対する暴力は許さない」
ヴォルフリートは思わず凛々しいその美しさに目を奪われる。
「誰だ」
「私が来たからにはもう大丈夫よ」
エリザベートがゴットヴァルトを守るように前を出る。


「アースラ・マリア、そんな奴をかばうというの」
「やめろ、クリスタル」
「話して、アルヴィン」
じたばたと暴れる。
「こんなやつ、こんなやつがいるから」


「この技・・・」
きっ、とピジョンクラウンが睨む。
「アレクシス・ヴィルフリート・フォン・フェリクスか」
「躊躇はしない」
私をエデンに送ったあの時の。

カイザーは、騎士達を指揮し、ピジョンクラウンの使い魔を殺すアレクシスと出会う。
「皆ひくわよ」
「イエッサ―」
厳しい表情のアレクシスは、状況を把握し、あたりを見渡した後、剣を下ろし、
「ヴォルフリート、奇遇だね」
と言ってきた。
「俺のこと覚えている?」
「・・・え?」
アレクシスもまた幻術にかかっているのか?
「あの、アレクシス、俺のことわからないのか?」
「うん?ヴォルフリートだろ、青の救世主の」
「違う、俺はカイザーだ、お前のクラスメイトの」
アレクシスはきょとんとするが、
「・・・ええと、ゴットヴァルト、彼は何か戦闘中に事故でも遭ったのか」
「ヴァルベルグラオ家で起きた事件で記憶が混乱しているんだ、そのうち冷静になるよ」
「そうか、ヴォルフリート、君も大変なんだな、それで何で君がここに?また、ピジョンクラウンを討ちに」
「友達があいつに連れ去られて、それで・・・」
「君に友達が・・・、ヴリル達とのことは・・・、いや、いいか、今は」
「アレクシス様も彼女を討ちに?」
「君もだろう、君は困っている人を放っておけない優しい人だからな」
「後ろの女の子は君の護衛なのかな?」
「いやいや、こんなネクラ美少女が護衛なわけないでしょう、ピジョンクラウンの手下だよ、今は僕とヴォルフリート様の捕虜、案内役」
「そうだ、アレクシス様、せっかくだし、ピジョンクラウン討伐、一緒にしましょうよ」
「冗談だろ、アレクシスを戦闘に巻き込む気か」
「それは君が望むことなのかな?誰かに命じられたのかい」
「は?極光のフェリクスの力を借りたいだけですけど、まあ、最初の前衛くらいは僕とそのパンドラがしますけど、青の救世主と貴方が組めば簡単でしょう」
くす、とアレクシスはほほ笑む。
「ヴォルフリート、変な感じだね」
「何がだよ」
「すごくうれしいんだ、俺、最高の気分だよ、ゴットヴァルト、君の期待にこたえるよ」
「お。おお、何か笑顔がさらに輝いてますね」


「本当にいいのですか」
「あいつが凡ミスをしたのはこれで何度目だ」
ドレッドヘアの少年は、最後の救援要請を発していた通信端末を切った。希望を求め、高らかにイカロスという少年は天空に自由を求めた。
スィリィは銃弾が飛び散り、血が、内臓が飛び出す、光の槍が地面を削り、ほとんどウォーロックの独占場になった場所で飛行しつつづけていた。
茫然とした影が近づく。大気の振動とともに現れるのは帝国、すべての人類の敵ウォーロック。


路地裏で三人組のごろつきに構われた。
ついてない。だがフロイデは仕方ないと立ち向かうことにした。

「見てみなよ」
「これは」
「不幸な子供なんて、どこでもいるんだよ、ヴォルフリート」

「リヒト」
「・・・ああ」
「お前は正義を行ったのだ」
しかし、ゾフィーのいった通り、皆ハッピーエンド、誤解が解けて、自分は彼らの思いを守った。


「かわいそうだから魔獣を殺すな、正気で言っているのか、ヴォルフリート」
「俺に権利があるはずだ」
「このまま生かせば、こいつはすべて食らいつくす巨大なモンスターになる」
「命を軽く扱っていいはずがない」
「正気とは思えないな、マリー・アンジェ、貴様も同意見か」



5

自己犠牲、他者を思う心。アレッシオが自分をみる。その眩しさに心を奪われながら、アウレリアヴィーナはヴォルフリートに恐怖する。
「行こう」
「・・・ええ」

「化け物かよ」
「アレクシスの圧勝か」

上には上がいる。ハルトヴィッヒがそれを自覚したのはブレイヴの一人だった時。ラインハルト・フォン・ローゼンバルツァー、単にマナや剣術ではない。初めて加護を得た時、鬼属と味方に無意味な被害を出した。

「まだ、泣いているの?」
露出度の多い、ピンクのボンテ―ジ風のドレスを着たお姫様ヘアの少女がディートリッヒの前に現れる。
「ここはどこだ」

「あちこちの村や町にアテナの剣の戦闘員が出没して、人々を襲っているそうですよ」
「酷い・・・」
「許せない、平和な市民の生活を恐怖で支配するなんて」


「そもそもの原因は何なんだ?」
トラブルしかない国だな、帝都の奴絶対、辺境というか田舎の方は手を抜いてるだろ。
「ご主人様、女性には優しく」
「何で?」
銀の十字架や軍も向かっているが現時点でバドォール家がメインでピジョンクラウンとの戦闘に冒険者やパンドラハンターで対抗しているという。レベル12のチェス兵で、すぐ倒せる壊れた卵ねぇ。
「それでその冒険者様、助けてくれるんですよね」
「話聞いてからだな」

「おい、これがレベル2の壊れた卵なのか」
シュウウウ。
「全部倒せましたね」
結構ピンチだったんだけど。
何というか、レベルが二つほど上がるけど、これで最下位の底辺のチェス兵。回復能力も逃げ足も速く、凶暴性も高い。サアラに言わせるとこれでもか弱いものらしいが。
ギルドの奴、すぐにレベルが上がるとか、適当なこと言ってんな。
「ああ、ループエリアを抜けるぞ」
幻影魔法を何重も仕掛けて、魔物を適当に出現させる。
「行きましょう」
「ロゼッタ、お前は下がっていろ」

「解けて消えて行きましたね」
「目くらましのチェス兵だったような」
黒狼の狙いは、一体。
だが、自分はアーデルハイトの剣である。帝都には親友のアリス、大事な人達がいる。
・・・エスト姉様。
姉弟子は今、何をしているのか。

アーロンは驚いたようにデスティネとともに目の前の光景を見ていた。どれだけ手下をばらまいているのか。
何でヴァガットの仲間がいるんだ。炎に抱かれた太鼓のような紋章は帝国を恐怖させるある革命組織の紋章だった。
「な・・・んだ・・・」
ヴィクトリアは禁呪の呪いを受けた左目が血を流していることに気付いた。兜を身につけていたヴァガットの一味の騎士。
赤い髪、冷たい自分と同じ色の目の少年。その顔はどう見ても。
「私?」


≪イリニ・アンドレイア・・・ッ≫
能力、マナを一時的に通常まで引き上げる技か。
「行くぞ」
エルネストは、合流エリアまで向かう。

ワイバァン隊は、治安の意味でもブレイヴと手を組むことが多い。
「ここにはゴットヴァルトはいないのか」
「コウモリだからな」

「たて、ラインホルト」
「くっ」
「今いったことを撤回してもらおうか」







「そもそもこのたびの魔術戦争の褒美の賢者の石は我々錬金術師には過去の遺物ですし」
「年に一回、集まると決めていますが、マンネリ化しますね」
敵対する魔術師の塔のトップは会議の間でため息をつく。

炎によって、悪魔の下僕から神側に戻る。
「お前の幻術魔法か」
紳士服の男は床に腰を落ち着かせている。けれど目が腐ったような、暗い瞳の少年は、ヴィッターを特に気に留めていない。女性の体が半透明となり、消えていく。


「・・・・・魔女の烙印」
「あんまりじろじろ見ない」
アーロンは二ケの肖像の少女に袖をつかまれた。確かにシャ―リぃは背が低く、年齢よりかなり幼くみられるが15歳の少女だ。
「悪い・・・」

エルフリーゼは得意技の一つ、フェアリーアローを、襲いかかってきたジュラールに放つ。
「馬鹿、誤解だ」
防御魔法クリア・ウノスの呪文を唱え、対処する。




「リタ・ユーディアオール」
春の女神に愛されたような、薄ピンクのおかっぱ状の少女だ。また各地に銀の十字架を布教していたらしい。ある事件でエルネストに救われ、巨大な霊力を両親の死をきっかけに目覚め、アリスの守護もしている。
「お久しぶりです」
アーク隊所属であり、もう主翼戦力である魔術師のお傍づきとなっている。
「ヘレネも着ていたのか」
背後にはハルトヴィヒや光の騎士団のおもだったメンバーがいる。
「ええ、でも」
スィリィは目を開けているものの、心を失っていた。



6
「・・・・・ウルリヒ、エリザベート、お前らに私の命もやるものか」
「やめっ」
「この絶望も痛みもすべて私のものだ、人の心を安売りするな」

≪軌道・光・舞えよ≫
そう、すべては帝国の秩序、守るべき臣民のため、アリ―シャの足元に結晶が浮かび上がっていく。半透明の金橙色の光が風を吹いて、浮かび上がっていく。
威力が解放される。

「笑いながら息絶えているぞ」
「一体。何が・・・」
「最期まで彼は道化として生きたわ」
「帝国を守るために」

「忌々しいな、あんなものを使わなくてはいけないとは」
アンソニーは困ったように隣の少年を見る。
かっての名前をヘンリー。本名はフォルクマ―ル・フォン・ローゼンバルツァー。ラインハルトの長子である。
彼は現在魔術戦争で、生命の石を求めていた。
王宮騎士の一員であり、銀の十字架にも協力している。
「君の妹じゃないか」
「止めてくれ、あれは妹じゃない」

「つくづく、トラブルメーカーだな」
「うるさいっ」
エミリアは大きく抗議する。

「おいおい・・・」
オナシス家の紋章。
「兄貴、何で隠れるんです」
隣はフェリクス家か、人数少ないな。
「お前は黙れ、大貴族が何でこんな片田舎の事件に突っ込むんだ」
次はローゼンバルツァーか。贅沢だな。
「また、影から動くしかないのか」
すると、ケイの使い魔のフクロウが飛んでくる。
「フロイデクン、救世主がピジョンクラウンの本拠地にパンドラと向かっているそうですよ」
「救世主・・・、青の女王の相棒か」


「もう、あんたは」
アルベルトを抱きしめる。
「壊れる前に何で頼ることを覚えないの」
「頭がいいのに馬鹿なんだから」

「アンネリーゼ」
「ヴィルヘルムお兄様」
「あまりドウドゥ卿の意見に惑わせるな、あいつはお前を利用して二ケの肖像の実験握りたいだけだ」

「・・・・あそこは、何なの」
カミラの中で、パンドラたちが集う都市を見る。光に満ち溢れ、笑顔で、温かい場所。
「ただの町のひとつですよ」
「はっ」
私は魔物以下か。




「あぁら、こんなところで時代の救世主様に出会うなんて」
双翼の紋章、魔女卿の信者か。
「オルトロスの一族」

「・・・・馬鹿だ、ロザリンド」
「決めたことですので」
エレナは拳を握る。
「そんな価値、ないのに」

「ダーウィン、君か」
「相変わらずおふざけが好きだな」
「悪いが君の相手する暇はないんだ」
「もうやめたらどうだ、お前が変えても元に戻るだけだ」
「イヴだね、アサシンか…、全く、正気を疑うよ」


フィリベルトの家に伝わる宝剣は陽炎を意味するイフェメラを生みだし、黒狼とは別に帝国の平穏を揺るがすマルスの目の討伐に白梟の騎士団の副隊長であるフィリベルトは追われていた。
「グレイ、来てくれたか」
「まあ、主を守るだけが任務ではないからな」
白の騎士団は集まり、新たな作戦タルナ―ダ作戦に入ろうとしていた。
・・・イザべラ。
グレイとイザべラの目が一瞬合う。白の騎士団と銀の十字架は同じ団体だが、白の騎士団はパンドラだけが相手ではない。軍と協力し、王宮騎士と協力し、教会と王の名の元、正義を示すのが役目である。ローゼンバルツァーの聖騎士、魔術師も数多く在籍する。


ラインホルトは、歪んでいる。そういうものもいるが、それはディートリットにはねたむ者たちの切り取った部分だ。彼は奪われたことがないと心ないものが言う。ヴィルヘルムやフィリベルトが帝国への留学を決めた時、生意気な小僧を追い出せたと異種らる貴族は喜んだという。
「くだらないが、大いに油断させてやろう」
名前だけは少し似ている王子、ラインハルト。アレスター・フォン・レーヴェ。いずれも敵が多く、その責任を革命におドロされた、後続の権力争いに巻き込まれた一族の反乱、帝国の王宮にラインホルトの姿があった。


「・・・・はぁぁ」
オルグは深くため息をつく。優等生気質で完璧主義、エステルは別だがまじめで正しさ、それゆえに予想外なことは得意ではない。
ヴィクターはあれはあれである人物の忠実な下僕で最強無比の魔法騎士だ。

0
「優しいんですね・・」
「そんなことねえよ」
ヴィクターは視線をそらす。

「謀ったのか、ゾフィー」
「君に教えておこう、約束とは親しい間柄で行うものだ」
魔術省の人間はゾフィーの無茶にまた巻き込まれ、橋は壊され。怪人は、川に落ちた。

ハンターの男は第一部隊のリーゼロッテやアザールにふっと笑顔をこぼす。
「ソウルスピリットか」
ウルリヒをかばうように、ピュシス属の唯一の生き残り、パーンシャルール、ルーク・シャルールが槍や剣を手に前に出る。
「もう、火あそびはやめるさ」

「だが間違いは間違いだ」
ディヴィドはエミリアの提案に明らかに難色を示していた。
「法は守るものだ」


「ダブル・グレンツェ」
「はぁ?」
アガットは思わず間抜けな声を出してしまった。
「複造構造の魔術のようですね」
「ああ」
「・・・わかっていました?」






7
その国は高い壁で覆われている。中は、自由、博愛、秒度い、この世のあらゆる幸福が恒久的な平和を約束され、自分の好きな自分になれることを約束された臣民と王族、貴族がいた。

退屈な第一区が出来上がる前、吸血鬼との長い戦争があった。すぐそばに王侯貴族、天翼属やエルフ、ドワーフの高級住宅街、白い巨大な宮殿のような静寂に満ちた場所がある。ユーディアオールはローゼンバルツァーの騎士として、第一区に住む男爵の貴族である。
第七部隊隊長ヒラソル・ユーディアオールはテントの中で女好きの性格を、お気に入りの少女達を囲って、陰気さを漂わす副隊長トリ―ゴに見せつける。第八部隊隊長アキアーンと副隊長ラグナと協力体制だというのに。
「ため息が大きいな」
「いつものことです」
第9部隊隊長ファレーズと副隊長メアラ―は西方遊撃部隊の補佐か、不運な。

ヒラソルはそもそも権力ゲームに興味がない。多くの貴族には専任の騎士がつく。伝統と歴史の国とは聞こえがいいが、女王の国や北の大帝国もそろそろ戦争ゲームをやめるべきだ。白の騎士団のように国家や国王のために、王宮騎士のように気高く、享楽主義で現実主義のヒラソルは人生は短い、なのに何で他人のために頑張らないといけない、皆自分の娯楽のために生きるべきだ。
彼がそうした思考になったのは、幸運に貴族の生まれ、長男だからと言いきれるだろう。ずっとマーガレットはあの双子姉妹に冷汁を飲まされてきた。それであの事件だ。本家の人間が死んでもその栄光が消えるわけではない。
「ヒラソル?」
ヒラソルは堕落した青年貴族だが、同時に毒殺や暗殺、黒い傘を応援する貴族だ。個人よりもローゼンバルツァーを壊そうとするものをつぶす。
娯楽に明け暮れる一方、タナトスにも二ケの肖像にもスパイや刺客放っている。
「何でもないよ」
そうたたき込まれている。
・・・アーディアディト、ヴォルフリート。さてさて、あの美しい人形はどんな毒に育つんだか。
マーガレットにあ使いこなせるのかね。

―シクレッツァ・ランス―・・・。
アリ―シャのどんな魔法も一時的に無効化する無敵のシールドがアリスの周りに展開する。
「大丈夫?」
「あ、ありがとう」
「ここで待っていてね、すぐにけりをつけるわ」
ライバルというものが存在するならエレナにとって、だれを言うのだろう。
一番先に思う浮かぶのは、エレクか。パンドラとして、アテナの剣の手先となり、現在平和を守る騎士団に所属する魔法騎士となった自分か。
「守るべき相手がいない剣はただの暴力だ」
「師匠、しかし・・」
守る相手はアリス。本当の家はすでに縁が切れている。
「君は生まじめすぎる」


「勝ち続けるって、辛いわね」
「え?」
エルフリーデが顔を上げる。
「追いつめて、追い詰められて、苦しくて、それでも前に進むのだから、独りぼっちでも誰も助けてくれないし」




7

フランティスカ・フォン・オウルはヴォルフリートをにらみながら、愚鈍なまでの自己犠牲ブリをついあの人と重ねてしまった。
「あなたはどこまで愚かなのです、ヴォルフリート」

「にい・・・さん・・・」
だが、ジ―クベルトはカイの姿を見ても興味を示さず、そのまま仲間と共に去ってしまった。セラヴィーナがカイを見る。
「今のって」
「俺の兄です」
「え?」
「行方不明になった・・・」



トラブルメイカー、その言葉をエルフリーデはフィーネに感じることが多い。
「何だ、このマナの量は」
「ありえん」


「無論、ひくわけがありません」
映像にアーデルハイトの映像が流れる。
「帝国の平和を脅かすものは何があってもうち滅ぼすのみ」
そういって、アーデルハイトは映像を切った。

遠方の景色や情報、状況を知るため、洞窟内に送り込んでいた魔女部隊の少女にエルネストは伝令のため、契約している聖獣クルーンとリアクトして、映像でそこにアレクシス達が向かっていることを知る。
えっ、なんで、あいつが?




「はきます、はきますから」
「命だけは」
ヴィントはにやりと笑う。
「言うことを聞く子は好きだぞ」
8
ピンクと白といった感じで、ウサ耳のような赤いリボンに、イブニングドレスのような衣装。年は十代前半といったところか。
「あなたはだぁれ?」
「・・・・これは、夢なの」
アーディアディトは震えるような声でそう言った。

「…嘘だろ・・・」
コーデリアの胸には、魔女の禁呪、幻惑の魔女の紋章である矢と竪琴とハートが刻まれていた。
魔女部隊の少女たちもお互いの顔を見合わせている。
「酷い・・・」
少女たちの誰かが言った。
「イルネス・・・」
ヒュウウウウ。
乾いた風がベルクウェインを高原を支配する。
「来てくれると思わなかったよ」


「クラウド家の少年騎士のようですね」
「滝が壊れるとはな」
道もめちゃくちゃだ。
「迂回するしかないですね」
「なあ、サアラ、このままいくの辞めないか」
救世主や貴族も動いているし、という意味で言ったのだが。
「臣民を守るのは冒険者の役目です、他力本願はだめですよ」
暴力と武力の象徴であるパンドラに言われると思わなかった。
――青の女王の騎士なら、ひくか?
弱いものを守る高貴な女性と聞く。思い出がない以上、他人の情報から判断するしかない。パンドラも吸血鬼も等しく扱う神様のような女性。
彼女に再会した時、俺は目の前の困っている奴を見捨てる奴でいいのか。
「そうだな・・・」
「何かフロイデクン、妙なこと考えてたでしょう?変でしたよ」
「うっせ、行くぞ」


村の少女とともにリリーシャ、アルヴィンは国境沿いの内戦状態の西の森に来ていた。
帝国首都やその周辺は軍や騎士団が守り、帝国は平和な国だ。だがどこの国でもやはり革命家や危険分子はいるし、持つ者と持たざる者がいる。
パンドラは侵入し、人を襲う。だから本当に平和な国など存在しないのかもしれない。残虐な軍国との戦争が終わり、武装が解除される。それだけが帝国の人間の共通認識だった。
「何で、あいつ怒ってんだ」
前には二人の9歳ほどの少女がいる。親とはぐれて、うろついていたところをアルヴィンが発見し、保護した。連絡したクリスタルがなぜか不機嫌になり、リリーシャもさっきから怒っている。人を女たらしだの、色情狂、スケベだの散々言うが朝食を抜いたのをまだ怒っているんだろうか。
「理由は明白だと思いますが」
サイドテールの少女が鋭く思わせる声でそういう。
「あ、何だよ」
「いえ、早く村に戻らないと・・・」
不愛想な少女だと思うが少女はいらいらしていた。家族がまだ残っているのだろう、それもアテナの剣の脱走兵に占拠されている。猟犬みたいだ、と思うが女の子は女の子だ。きっと、不安と焦り、恐怖がその薄い胸に渦巻いているのだろう。
「今は駄目だ、まずは合流地点まで行かないと」
「私はあそこに戻らないといけないのです、家族が・・」


「ロード・・・」
アルフレートともに、ピジョンクラウンを裏から操っていた領主の部屋に騎士達を連れて、マリウスと同時にディートリヒは現場に飛び込む。
「ロード・グルント、観念しろ」
屋敷の全体をフェリクス家の騎士隊が囲っている。
ディートリヒはその呪術にぎくりとなる。
「死神と契約したのか」


「閃光剣ッ」
アルベルトが敵に得意技を放ち、ディートリヒが中核のボスに得意技の一つ、
「龍閃剣」
そう叫びながら、一撃で敵を撃滅していく。
ズゴォォォン。





4

「赤の王、お前が魔女達を救うとはな」
「大教主」
「ヴァガット・・・」
「何、我らが主が目覚めるまでだ」

王制と武力主義が共存する国からは、エルフリーデの天敵である(割と多い)ラングヴァイレ大尉が外交の手段として、試合の選手としてきていた。紛争と銃、その土地ゆえに争いに巻き込まれる太陽の国からはウォーロック殲滅のためにディネロ大将とその部下が。
太陽の国では、いくつかのファミリーが紛争を繰り返し、流血と銃弾があふれている。

マフィアたち、盗賊、地元のチンピラと悪い奴が目白押しだ。
「エルフリーデ、あんた今度は何をしたの」
「トラブルメーカーみたいにいわないでよ」
「この前も旅のパンドラと山一つ壊したでしょ」
「不可抗力よ」

―アーク隊所属、リック・ト―ヴは正義と真に帝国を愛する少年だった。だがピジョンクラウンは。
「そうか」
ルードヴィッヒの前に騒乱から、助けを求めに魔法騎士と精霊術士の妹が、傷だらけの軍人とともに駆けつける。無理はない、彼らは生まれてこの方、こんな本格的な討伐戦は経験がない。魔女やウォーロックとの戦闘、街中での小規模な戦闘、加えて光の騎士団やアーク隊はお飾り目的であり、汚れ仕事など当然回ってこない。
「わが隊から叛乱軍の刺客がまぎれるなどこれまでなかったことです」
平和な帝国に革命やパンドラの嵐が起き、人々は恐怖と不安の日々に包まれている。守らないという意識と実力はあるが、経験がない。
「あのようなけがれたイーグル隊やワイバァン隊などと手を組むなどありえないが」
騙されること、だます人間いること自体、彼らは慣れていない。正義を愛する、それゆえに読みやすい思考。裏切られた気分なのだろう。
パンドラに、吸血鬼に。これまで仲良くしていた相手が裏切り、悪に走っている。

アルメルとアントワネットは下級魔術師の家に生まれ、幼少時は別々に別の名前で育てられた。アルメルに関しては血のつながりもない。だが、彼女の父は血のつながりというモノにこだわらず、実力を持って跡継ぎであり、アーク隊の剣士であり、近く白の騎士団団長の従騎士になるロイの妹とした。
「で、どうするんだ」
「何がだ」
ロイはエルネストの数多くいる友の一人だった。
「敵打ちするのか?」
「まさか」
彼らは今だ、ロイの遠いところにいる。

「ああ、赤の王、いつか御前に」
そういいダークエルフの暗黒騎士はリヒャルトの前で息絶えた。
「何者なんだ」

「俺は・・・」
ルードヴィッヒは、壁を叩く。
「ジ―クベルトを止めることができなかった」
「行動するとはそういうことです」

仮面舞踏会。
「さぁ、踊りましょう」
明らかにエルフリーデとは違う、大人びた笑みを浮かべる赤いプリンセスラインのドレスを着た少女。
「君は――」

「使者を蘇らせる盾ね」
「あ、あんた、助けなさいよ」
「やっとトラップから抜け出したのかよ」
「ホラ、なに座ってんだ、行くぞ」
死んだと思って泣いているように見えたのは演技か。
「いい性格してる」
アルトゥルは深くため息をついた。

「君の尊い犠牲は忘れない、じゃあな」
ヴィッターは蹴り飛ばされ、赤いチェス兵の前に転げ落ちた。
「げ、外道・・・・」
「バドォール伯爵、アヴィスのところに行くぞ」

―それは、希望の欠片なのか。
アーロンは村長から、うっとりした忠義の女剣士を見る。
「で、どんなイケメンなんだよ」
「その何と言えばいいか・・・・」




「やぁ」
【王座】【誓い】【救済】、光の術式が一斉に行われる。
「なん・・だと・・・」
「誰であろうと、これ以上彼と村人への暴虐は許さない」
腰のさやから細身の剣を取り出す。栄光の加護が、ヴォルフリートのマナに魂の形となって具現化する。
「なぜ、お前がここに」
アレクシスはパーティーとともになじみの陣形を保ち、後ろの兵も合図を待つ。
「ベルクウェイン卿にこの地の鎮圧の任を任されている」
「皆、一斉にかかってくれ」
掛け声とともに、一斉に攻撃に移る。

スゥゥゥ・・・。
「この地のけがれを浄化しました」
「よくやってくれたね、ありがとう」
「いえ・・・」
戦司祭は頷き、後ろに下がる。



5



6
「アリ―シャ様・・・」
故意はない。故意はないのだ。
「どうしたの?きつく結びすぎたかしら」
第二魔法部隊の魔法騎士、アリ―シャは岩を丸ごと要塞したピジョンクラウンの用意したダンジョンの外側にいた。
「あのできれば離れていてほしいと」
「駄目よ、貴方だって納得したはずでしょ」

「君が来るのは、十日ぶりかな、ヴァイオレット」
じゅうさんくらいの長髪の少女が赤い目でヴァイオレットをとらえる。銀の十字架も戦司祭ばかりではない、精霊術を入れた医療魔法の専門家、武器を作るものと様々な場所がある。
「ええ、ロキ元名誉司祭長どの」
鳥かごだ、それも豪華な、だが半透明な牢屋であり、白い部屋には少女とインテリア、ベッド以外なにもない。エデンの重要人物で、この世の春を天翼属とともに生きていた。
「皮肉か、君も言うようになったね」
だが少女は少女で会っても、少女であらず。最大の阪大社で最高の魔術師。ロキは自分の親族の娘の体を戦闘で死にかけた自分の体から魂を抜きとり、その娘の体を奪い取った。
「僕はまだ14になる小娘だから、そんなことできないよ」
多くの命を狩り取、おのれの魔術、マナの糧にして、秘密結社をつくり、捕まる。
「女性であることに違和感は」
「さほどないね、なに、これから時間はいくらでもある、前と違って面倒な手順も儀式もなくこの身体は新たな個体を作り出せるからね」
「貴方は死刑になります、それは叶いません」
「何、ありふれたことだ、私が消えても、私みたいな人間はいくらでも生まれる」



                     7
                     8
ハルトヴィヒはアントワネットを胸に抱き、おいおいと悲鳴を上げたくなった。何だって、こんな超A級の魔獣がいるのか。
「ハルトヴィヒ様」
アントワネットは戦う気らしく、精霊を呼びだす呪文を唱え始める。


                 9
エイルは、白梟の騎士団として、多くの仲間とともに、王宮前広場に手侵入者の相手をしていた。
「エル・ゴレムの崇拝者・・・」
だが、相手は催眠魔法、それも中流魔法クラスの強力な幻惑魔法、身体能力とマナが本人の力も超えて、上り、狂喜の狂戦士―バーサーカーの剣を向ける。

「おほほっ、ばかな人間達」
ピジョンクラウンの前に三人の強敵の家臣たちがナイトハルトの前に立ちふさがる。味方の兵士たちはすでに倒されている。
「こんなもので勝てるわけないじゃない」
ここに先輩がいれば・・・。

                 10
アルベルトもアレクシスも戦場においては乙女が近づけるような、いや、軍人や兵士でさえ近づけない殺戮者であり、帝国の剣となる。
「くっ、帝国の駒が」

「えげつねえ」
「相変わらず敵には容赦ねえな」
エルネストは肌を震えさせた。
「なぜそんな必要が?」
「わかっているよ、残った手下のパンドラを倒せばいいんだろ」
「僕は黒狼の方を追う、こんな馬鹿騒ぎに付き合う気はない」


「それは君の美点であるが、最大の欺瞞だよ」
アリ―シャは修業時代の先輩、ランスが悪魔崇拝者となって敵になった時、受け入れられなかった。
「どうして・・・」
「誰かの筋書きになぜ私が付き合わないといけないんだ」
魔術戦争で、多くのパンドラを自らの駒とするが、ランスは魔物を対等の存在として扱っていた。

「貴方が動けば、おおごとになる」
「ディヴィド、そういうときではないでしょう」
イリスは騎士団の騎士達の元に向かおうとした。
「己の立場をお考えください」
くっ、とイリスはお目付け役の眼鏡の騎士に悔しそうに歯をかむ。
「イリス様、何を」
「皆が戦っている時に戦わないものがなぜ騎士団団長ですかッ」
飛行艇の操縦士を放り出し、イリスは乗り込む。
「救援を、そうでなければ私で向かいますっ」
「わがままもいい加減にしてもらいたい」


カイザーが崖の下へと落とされるネフィリアを追いかけ、手を伸ばす。
「手を」
「触らないで、貴方達人間なんて大嫌い」
まっすぐな目だ。ああ、裏切られることも否定されることも知らず、自分を信じて。
身体が反転して、マグマの中にまっさかさまに落ちていく。
ガタンッ。
「待ってろ、今、助ける」
「正気ですか、どうして・・・」
何で自分何かに。
「俺を信じろッ」
真っ白な手がネフィリアに差し出される。青紫の長い髪が広がっていく。
《闇の焔よ≫
ピジョンクラウンが最後の一撃に、カイザーに攻撃魔法を放つ。
「う、ああああっ」
ヴィンセントがピジョンクラウンに
《炎の槍よ、ひきさけ≫
ゴォォォッ。
「きさまぁぁ」
「カイザー様っ」
カイザーの手はネフィリアの手をつかんだ。
「・・・馬鹿なのですか、貴方は、どうして、私は人を殺したのにッ」
「・・・俺は決めているんだ、全ての人を助けるって」
「・・・・」
ネフィリアは凝視する目でカイザーを見た。
「・・・・させないわよ、鬼、お前だけ、王子様に助けてもらうとか」
ヴィンセントに身体の五感を拘束するペルソナの力を使う。
「・・・まさか、こんな余力が」
カイザーは背中から全身が凍りつくような邪気、霊気を感じた。
《逸れ闇よ≫
ピジョンクラウンに闇の光の弓が数本刺さる。全身に重い何かがのっかる感覚、支配される感覚。
「お前、その技は」
「君が言っただろ、ワンマンプレイは僕の特技だって、ピジョンクラウン、ワイバァン隊の名において君を拘束、逮捕する」
「壊れた卵ごときが」
ぎゃあああああ、と悲鳴が鳴り響く。両手に地獄の焔が落下し、焼きつくそうとする。
「勿論、僕みたいなチェス兵に君のようなA級パンドラを倒す力がない、おいたをしてきた君にはザコパンドラがどういうものか、その身によく味わっているはずだ」
「はっ、それでお前は私達の仲間を殺してきた殺人集団に媚を売るってか」
コウモリたちが次々に落下する。
「君の仲間は抑えた、カイザー、そいつをマグマに落とせ」
「何を言って・・・」
「テロリストには死を持ってその命を償ってもらう、いいね、離すんだ」
ゴットヴァルトはカイザーの体を抱き上げようとして、ぐらぐらとネフィリアを落とそうとする。
「正気か、お前はっ」
「君とその女の命のどちらを優先するならわかるだろ、彼女は罪人だ、罪人は死罪しかない」
「止めろ、お前はそんな奴じゃないだろ」
「駄目だ、彼女はピジョンが一時的に支配してたとはいえ、超レア級パンドラ、放っておけばまたいつ臣民に手を出すかわからない、守るはずの君達に剣を抜いた以上、彼女も承知の上だ」
「・・・・」
「ヴォルフリートッ」
「君がするべきは帝国と国民の平和と命を守ること、誰かにそんなテロリストの欲望なんかのために家族を炎で焼かれてもいいのか、殺すんだ、ゆっくり指に力を抜いて」
「頼む、いやだ、殺すなら俺にしろ、お前はいやいやで今の血に濡れた仕事をやらされているんだろ」
「これは正義なんだ、さぁ」
「離して・・・」
「え」
「一人で死ぬくらいできる」

「ネフィリア・・・」








 










































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