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ruka126053のブログ

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第22章

第22章―楽園に真実と正義の名前、君の名前はきっとない
              1

≪七星剣≫
ズバァァァン。アリスが剣をふるまう時、大地が割れ、地面が揺れる。青の女王の剣はすべての命を守る剣だ。
「やったぁ」
「さすがはアリス様だ」
感嘆の声が上がる。

「・・・・不思議じゃないんじゃないの」
「え・・・・」
「君は人間なんだから、迷って、間違えて、それの何が特別なの」
無神経といえば無神経だ。
「あなたにはわからないわ」
ひどい人、カイザーから奪って、こびて、卑怯で。だがシエラは目の前の少年の何を知っているのだ。

「やっぱり、お前が行けよ」
「駄目だよ」
「まあ、邪魔するのもおかしいしな」
だが、真の理由は人間嫌いではない。彼はおそらく誰も傷つけたくないのだ。
「ダヴィデって、ゴットヴァルト君が好きなのって、シエラに似てるから?」
「似てねえよ」
「え?」
「共通点が多いからって、同じとは限らないだろ」
「理解しているんだ」
「そこそこな」
定義すれば簡単なんだろう。男の俺が女のシエラの近くに、ブレアの近くにいる理由。
「お兄ちゃんばかり構うのってさ」

アンネリーゼはアンネローゼの善の人格か、別人か。
「なんですか」
自分の視線に気づいて、大きな目をぱちくりさせる。
「別に」
頬が赤くなる、「そうですか」ってなんかもじもじしているが。
「わたくし、最近、彫刻にこっていまして」
「はぁ?」
「まあ、そのですね、先生曰くなかなかの出来でして、ええ、わたくしの世話する庭でバラが咲き始めまして、いや、誘ってはいないのですが、ですがないわけではなく」
このとき12歳。穏やかで何もない時期だ。
すべてが起こり、僕ががんばっていた時期だ。
いいやつでも人格者でもない僕には、目の前の美しい女の子が神様だの吸血鬼が真実でも、それらが人間の振りしているようにしか見えなかった。育ちのせいだろう、好かれている。けれど僕は、その目の前の生き物が自分に関係あると思えなかった。性格がもう歪んでいて治せない。
「いいよ、行くよ」
「よかった、私、あなたに断られたら生きていけませんわ」

「あんな言い方って何かな」
「少し、やり口がずるくないですか、オルグやヘレネにしても、ブレアやシエラにしても、人の関係を悪化して、かき乱して何の意味があるんです」
「いつものことよ、あの子はね、結局上を見上げることしかできない、あの子とあなたでは捕えているものが別物なのよ」
「それなら、それで誘導するくらいできるでしょう」
「ねえ、ダヴィデ君、君はさ、あの兄弟たち見て、だれかたちに似ていると思わない」
「いきなり、なんの」
「本当に自分がほしいものがわからなくなった、あの二人よ」
「似ていませんよ、全然」
「そうかな、私には失敗を何とかとりつくって、自分に都合よく他人も世界も巻き込んで、今をしのごうとしているしか見えないわ、特にヴォルフリートはね」


「クロ―ディア、お前」
リウォードが追いかけてきた、テオドールとともに。春の気配、多くの臣民の明るい声とともに。
「行くのです」
女神教会で、最高司祭にヨハンは言われた。生まれたからには価値がある人間になれ。力があるなら、誰かのために。知恵があるなら、悩める友のために。
「-貴方はいつも、こんなことをしているの、ゴットヴァルト」
「コウモリですから」
心臓が脈を打つ。
「・・・・どうして、武器を捨てないの」
「答える義務はないね」

シルヴァ・クロスに入れば、パンドラの怖さを教わる。
アーデルハイトもリーゼロッテも、名門に縛り付けられ、名声だけで判断されるのはディートリッヒには受け入れられないものだ。けれど勉強と、実際彼らに遭遇することはまるで違う。
「嘘だろ」
すべて、アテナの剣に反旗した悪魔属の武力主義が一夜にして、灰の町に変えていた。

「・・・・・何のことかな」
グレンは階段の下から僕に銃口を向ける。
「あの惨劇はお前が起こしたことだろう」
幼い少女が僕を見ている。コウモリのみんなもグレンの唐突な行動、発言に困惑していた。

自分の中の大切なものが壊れていく。守ると決めた姉も、尊敬していた兄たちも苦手な父も、ディートリンデも。
「違う」
「何が違う」
こいつはヴァガットの仲間だ。
「お前はそんな嘘で俺とカイザーの絆を壊す気か」
違う、ありえない。
「業というべきだな、お前は真実というものがよほど見えないらしい」

「お前は自分を捨てられない」
「師匠・・・・」
地面にたたきつけられたアルヴィンを、フランシスは冷たく見る。
「すぐ死ぬタイプだ」

かわいいな、とブレアは思う。宝物なんだと思った。
「彼のことを思うとね、心が温かくなるの」
クールビューティー、性格に高慢さと何かと敬遠されがちな彼女が年相応に頬を染め、胸の上で手を握る。
「そっか」
けれど、それをテオドールとともに見るダヴィデに特に変化はない。
けれど不安が残る。それは本当にシエラの恋なのだろうか。
「ずっと、私を知っていてほしい」
彼女の世界にはもうヴォルフリートのことはないのだろうか。
心を温めてくれた、正直口を開けば残念なことばかりで。ダヴィデもミントにももう、カイザー・クラウドのいた世界はない。

「・・・・本当はこんな力なければ」
カイザーはその魔法力に反して、精神は繊細で傷つきやすい。いつも弱気なアルバートを導いてくれるのに。

パンドラハンターのワイバァン隊とアテナの剣には罪を犯さないものには手を下さない。そんなものがある。
「僕が恐ろしいか、アルフレート」
「いや・・・」
本物の鬼属だ。
「僕達も伝承や何やらで迷惑しているんだ」
「まるで最初から殺人鬼になる、僕らにも性格というものがあるのに」

そこは同じなくせに、できないことをやる。セラフィーナはそのだめな剣が嫌いだ。キモチ悪い。青の騎士も同じ。
敵のトロール兵は死のうとしている。キモチ悪い。醜い。それにしは目をそむけたいもの。
頭がおかしい。
「貴方に女神の祝福を」
手を握り、トロール兵の瞳には意思の光が浮かぶ。
幻術を発動、ペルソナで痛む時間を弱くしているだけ。
そして、抱きしめて、何かをささやく。

「セラフィーナ、ゴットヴァルトと何かあったのか」
フロイデとしては恩人であるし、アルヴィンのこともある。
「・・・・あのものは秩序を壊した、ブレイクエッグでありながら、女王陛下に」
コウモリ。フロイデも冒険者として旅しているとき、軍隊にそんな組織があるとは聞いた。野望に燃えた、血に濡れた成り上がり者か。
「かばうわけではないが、本人がそうだと言ったわけではないだろう」
「ヴォルフリートをはめた、ルチアと同等の人間をかばうのか」

当然だが両者が話し合う場なんてない。エミリアは神も見たことないし、悪魔属が本当に悪魔だという証拠もない。それでもだ、ジャバウォックは、彼女が膝を折るあの人の探し求めたものだ。魔法騎士、精霊騎士、黒魔術師。
「これがドラゴンの、神の右腕」
ガラスケースにそれはある。軍人はエミリアくらいの娘がいそうな年齢に見えるが、魔術の世界に身を置いた時があるという。
「なぜ、これを?」
「軍をもうやめることになったんでな、君にこれを処分してほしい」
「私が約束を破る人間に見えます、悪評くらい聞いていますよね」

「メアリー・ジェーン」
「もう君はいつもぐずだな」
金髪の少年はウサギの耳がついていた。

「よう、サミュエル」
聞き覚えのある声だ、振り返ると、漆黒の剣の塔への潜入任務を遂行したバッハの姿が目に入る。
「時間に正確な君にしては珍しいな」
「イヤミか」
木陰で何かが揺れる。
「今の」
「ああ」
「どんな人だったの?」
シュテファンにリーゼロッテはそう質問した。過去のデータを見たのだろう。
「本当に同じ人なのかしら」
アーク隊の黒髪の剣姫ティファニー・フォン・アレクシア・シュヴァーンが「そうね」と続ける。
「僕からは何とも、アデルはオルフェウスの方が詳しいと思うよ」
モルトウイ・キング―凶皇ノースデゥ。
ディアーブル・プリンス―悪魔大公メルトロイ。
そればかりか、強敵の大魔女を手にかけ、陰から帝国を守ってきた魔女殺しの戦司祭で、皇帝のクラスを持つアデル。
「ジ―クベルト達は教えてくれないし」


ダンジョン内の探索任務で、大型の魔獣を殺したハルトヴィヒは、大勢の冒険者の中、「アルバート?」
冒険者の恰好はしているが、どうみても。
だがおかしい、今日はあいつは帝都にいないはずだ。それもこんなところに。
「気易く触るな」
パンッと手を乱暴にはじかれた。
あいつの記憶だが間抜け面はいやおうにも嫌いな女の顔が思い出される。
「でもあそこにどれくらいいたんです」
「・・・・二時間程よ」
先ほどから全然目を合わせない。まあ年下にいきなり離せないよな。
「まあ問題がありますよね、仮にも大貴族の令嬢があんな姿だと」
「そ、そうね」
肩が揺れたが気分が悪いのだろうか。
「姉さんは一度決めたらきかないからな、親友にまるでこそどろみたいなまねさせて」
はぁぁ、とため息をつく。
「アリスは知らないわ」
「そうなのか、アロイスには練習付き合わせているから」
がたん、がららら。ジュースがこぼれた。
「ヘレネ様?気分でも悪いなら医者に診てもらったほうが」
「いいえ、体調はすごくいいわ」
顔色が悪い、まあお嬢様だし男友達とかいないんだろうな。
「まあ、もう少し信じてみてくれません、姉は姉なりに頑張っていますし」
「知っているわ、いつも見てるもの」
「姉さんはまだ主役はしてませんけど」

「・・・・アルバートに兄弟いたのか」
「お前はいつまで俺についてくる気だ」
「いや、友達に双子の弟がいるなんてなぁ」
「ばか丸出しだな」

露出がいくらか多い、飾り気のあるメイド2人、尖った耳の少女がいた。店の中で。けれど特に嫌悪感もない。誰もいやそうにしない。
漆黒の髪の美しい少年が出てくる。赤毛の繊細そうな少女とともに。怪人や鬼属、黒魔術師、魔術革命組織、悪魔属、怪奇事件。
表と裏。
「リーゼという女の事を考えているのですか、いやらしい」
「そうだな、最近会ってないな」
「フェリクスやお前のような男は、表向き好色な最低男よりも立ち悪いです、豆腐で頭がぶつければいいのに」
意外にこの子、潔癖だよな。
「さすがに、戦争中に、色気づく豪気はないよ」
「心配ですね、あんな世間知らずに帝国の未来とは」
「まあ、彼自身のというより、あれはまあ、呪術か何かだと思うよ、君なら解けるんじゃないか」
「以下に天才で超美少女の清楚な私でも無理なのです」
「それ、王宮の魔術士でも無理なのか、大変だ」

「性格悪いって、お前言われないか」
「悪いな、これも任務、帝国を守るためなんでね」
くっそ、はめられた。
こぶしを震えさせるがゴットヴァルトに不思議と憎しみの感情は浮かんでこない。

「ミハエル様」
「ミハエル様」
学園ではアルバートは、ほほ笑みの天使と呼ばれている。天文部に所属し、騎士団にも通う。
「一一相手にしないの」
「そうだよ、キリがないよ」

「・・・・気にすることない」
「何がだ」
後からついてくるパンドラのチェス兵。
「今回、お前は大きな勝利と成果を得た、お前は正しいんだ」
「・・・」
多くのブレイヴ、スパロウ卿の姿、その手下たちもいる。けれど、ラ―スが知る限り、ここに兵士はいない。正しいことを責任を遂行していると思っている。

その光景は異様にも見えたが、歪んだ美にも見えた。
リリは、セアドアに手を伸ばすが、それでも朝日の中、美しい死神のように見えた。
≪ソンブル・アヴァランチ≫
その呪文が放たれた瞬間、黒と紫の広範囲操作起動魔法が帝国の反逆者であるパンドラに襲いかかる。
「貴殿の協力には感謝する」
セラヴィーナは次の瞬間、アルフレートの頬をたたいた。
「だが、今度から仲間や貴方の味方に不安を抱かせるような作戦は控えていただこう、軍事はお前達の出世のためのものではない」

「なぜだ、なぜ約束を破り、女性を撃った」
ディートリヒの問いかけに、アテナの剣の元アサシンは、奇妙な生き物を見るようにディートリッヒを見る。
「当たり前だろ、自分の命より大事なものがこの世にあるのか」
「そんなチビを殺して、自分だけ助かるようにすればいいのに、使えねえ」
「いいじゃねえか、なに格好つけてんだよ、お前らもいらないだろ、弱い屑なんて」

「まずお前らがその生において最初にぶつかり合うものは、どんな生物においても存在する親だろう、神が与えた平等な愛、権利、自由だろう。だがお前らにはそれは適用されることはない。怪物たち、お前らが他の種族から最初に受けるのは殺意である」
「憎悪、隔絶、自己満足の上からの慈悲である、お前達の王たる臣民はお前らを人間と同等とは見ない」
「何で僕らが守るの、サタンの使いじゃないか、それだと」
「神と初代国王がお決めになったのだ、お前らはまず変身魔術を覚えるように」
「悪いことだろ、兵士でも悪い人でも殺されれば、警察とか騎士とか」
「お前らの死は、破壊されることと同義にされる、お前らは兵器なのだ」

「・・・・パンドラハンターの超名家」
時臣は、飾られた肖像画、勲章に思わず目をやった。
「くそ・・・っ」
これからどうする、牢獄に戻るか。祖国に帰るか。
話し声が聞こえてくる、声変わり前の高い声だ。

「・・・・・すごいな」
「ああ」
某学園では、ヴォルフリートがルードヴィッヒといるのだが。
「女性が寄ってこないな」
「…いつものことだ」

「まあ、でも多分勘違いじゃないかな」
「そんなわけない」
だが、嘘をつくが、ゴットヴァルトはどこかシエラのような正しさ、偽りのなさがある。そういう部分はあこがれている。
「彼女は正しいから、誰にも正しくあろうとする、傍にいるならわかるでしょう」
「嫌なのかよ」
オルグとシエラ、アリスとこいつ、両者は違うのに重なる。
「僕に資格があるかわからないよ」
「そんなの・・・」
「全てさらけ出すのは恥ずかしいのはわかるでしょ」

「・・・・お前、戦闘中とキャラ違うな」
間抜けな顔でフォースナイツの騎士が自分を見下ろしているが、なんでこうも馴れ馴れしいのか。
「家でそうしろと言われてんのか、それともそれがお前のもてるテク?」
「あの、いいかげんに・・・」
「ハルトでいいって、お前意外とテレやだな」
何やら背後でミリアムやダレンが不満そうだが、何だというのか。
「近い、あつぐるしい」
「フレッドを悪の道に進めるの止めて頂戴」
「・・・ええと、誰?」
フェリシアはむう、と頬を膨らめる。
「あくまで本気を出す気はないのね、ゴットヴァルト・クラウド」
街中だ、それも往来だ。
故にいきなり、ストロベリーピンクの髪の女の子に喧嘩を売られるのはなぜか。
「私の幼馴染を変な道に誘惑しないでよ」
おいマジかよ、名門貴族で騎士でイケメンで気品があって背が高く、美少女が幼馴染って。
「ちょ」
「よけるな」
短剣で二段構えとか。
「すばしっこい、男なら正面から立ち向かいなさい」

へえ、フォルトゥナ騎士団って、すごいんだ」
「だからお前従士だろ、何で興味ないんだよ」
アガットはゴットヴァルトに掴みかかるがへらへらしている。
「だって、僕運動とか喧嘩嫌いだもん、それにやろう同士がはあはあしているの見たくないし」
ヒュウウウ・・・。
飛行艇がやってくる。

オリバーに言わせれば、悪人だろう。ダヴィデはだが、割り切れなかった。では無自覚の悪意ならいいのか。アリスは正しく、仲間思いだ。
ずいぶんな話じゃないか。
「・・・」
では、今日までの彼の行いも評価されるべきだ。なのに誰も感謝もねぎらいもしない。当然だと思っている。彼が好きでしている?
くらり、となった。
勿論自分はゴットヴァルトという人間を全部は知らない。何で、そんな簡単に諦めるんだ、何でお前らが決めるんだ。

それはあたかも暗く濁った何かを、今まで散々傍に置いたものをぐつぐつと暗く濁るマグマに似た悪趣味な何かに吐き捨てる行為に見えた。大輪の花を咲かせるため、余計な枝をハサミで丁寧に切り取っていく、ひどくグロテスクな行為に酷似していた。
「あ・・・あぁ・・・・ああああっ」
ジュウ・・ウゥ・・・・。
「ひいひい」
身体から煙が上がっていく。かすかな音をたて、その小さな怪物は床に転げ回る。
「続けるぞ」
「・・・うぇ・・・」

包帯まみれのそれと目を合わせた時、マーガレットはぎくりとなる。呪術とマナ、錬金術、黒魔術。ここにはそんな実験隊のパンドラがいくらでもいる。

スカイレッド、怒れる侯爵夫人、サーウィンの一大名門。え、マジ。
「行くぞ」
「あ、うん」
アルフレートはすごいな、山や谷、森、これ全てが王族と縁戚の貴族の敷地だとか。
護衛の黒服、猟犬。
時空の魔女の崇拝者とか。
扉を開けると、鎖で縛られたアンジェロの女性の像が中央に置かれていた。アルフレートが閉めた。
「間違いなようだ、戻るぞ」

「失望したか」
「・・・・いいえ、貴方は変わりませんね」
闇夜、二人は帝国首都を高台から見ていた。
「背も伸びて、世界が広がって、帝国の外はどうでした」
「別に、好みの女がいていやな奴がいて、だまして殺して好き放題で来て、世界は正義と嘘であふれている」
「フェニックスの巫女は天界に後悔なく生きましたよ」
「うん・・・」
「貴方は吸血鬼ハンターとして、帝国の人間として、そのまま生きるのですか」
「まあ、正義や友情はもう飽きてるから」
「会えますよ、捻くれた貴方でも、貴方の使命を神を」
「神はいない、いても虫けらに感情なんて持たない、死んだら無だ」
「では彼女の後を?」
「死んだ奴の後を継いで、誰かと幸せに、そういう奴は俺たちみたいな奴をなにもわかっていないのさ」

「・・・・殺したの、自分の両親を」
サイトシーでの庭園。そこで手下とともに血まみれのベルンホルトがいた。レオンハルトは大きく目を見開く。
「お前、実の父親を」
「ああ、もうそれはいい、子爵家は私が継ぐのだから」

イザべらがその隊長の少女に勝利を勝ち取ったことは数えるほど。退屈を嫌い、戦争を恋人する少女。
「サファイヤエルだと」
「自分の名前さえ忘れたか」
エリザベートを守るように抱くサファイヤエル。リウォードの胸はその光景に並々ならぬ荒波の予感を感じていた。
「さぁ、たて」
「いいかげんにしろ」
第19部隊隊長(ナインティーン)は武力主義であり、苛烈な性格に耐えきれず、副隊長をやめたマックスは奇妙な組み合わせだなと思った。
「―ああ、国王のこまね」
だが駆けつけたバーバラスは、少女の鎧や衣服が傷ついていないことに気づく。
「貴方にとっては友人の国の人間は消耗品か」
「お前にそう見えるならそうなのでしょう、もういいかしら、城に恋人が待っているの」

「ええ、やだよ、エストカラス卿と組まされたら、マジで戦わされるし」
「だよなぁ」
本当、頭殴るか、とフレッドの従者は心方思った。

「頼む、フレッド、セアドアを救って」
「リリ」
「彼は、ワイバァン隊に騙されているんだ」

「バーバラス卿、こんにちは」
カーテンの裏にそれはいた。
「何をしている」
「ああ、マリアベル様のパパがけがらわしいんっていうから、陰から覗こうかなって」
「貴方の父上だ」
「いや、よく見て、僕のどこにあの人の要素あるよ」
まあね。それはね。
「息も吹きかけるな、一族近づくな、下民が近づくなだし、難儀な人だ」
「いきなり訪問するからだ」
「だって電話もメールも無視するし、手紙は破るし、他にどうしろと」
「近づくのはやめたらどうです、また殴られるだけだ」
「大丈夫、僕は痛いのも罵倒されるのも否定されるのも日常だから、いらないとは言われたけど死んでくれとはまだ二回しかいわれてないし、あと少しで相手も折れる」
「・・・」
「というわけで、アルバートのぱぱにまた蹴られてくるね、じゃっ」
嫌な息子だなぁ。嫌がられても諦めないのか。

「へえ、エストカラス卿ッてそんなすごい家なんだ」
「なぜ貴様はフレッド様のことをそうも興味持たずにいられるのか、その頭にはスポンジしか詰まってないのか」
ラインホルトは数人の崇拝者を連れて、帝国軍本部を歩く。
「また、あいつ」
「目障りな」
「カイザーのおまけが」

「ドクターカエサル」
「また、君かい、小さなマドモアゼル」
「教えてほしいことがあります、あなたがおっしゃっていたゼロナンバーのオットー伯爵のことについて」
「あぁ、それか、意外だね、もう忘れたのかと思っていたよ。なにせ、私は妄想壁の変態のマッドな科学者だからね、オタクの」
。しかし、犯罪者なのだろうか。漆黒の剣の魔術師、
「彼の調書ではあなたの診察を受けたとあります。先進的な・・・」
「ああ、可愛いお嬢さんが思うような暴力的でも洗脳的なこともしていないよ」
「良心が痛まないのですか?」
「オットー伯爵は僕たちが彼に与えた地位と名前だよ。ひどく気弱な子でね、私も手間取ったものさ、彼は常識的で同時に悲観主義でもあった」
「やめようと思わなかったのですか?」

「ショタコン」
ガラス越しにオ―ガの実験体をみる。優しい両親に可愛い妹、温かい家。だがシュテファンは幸運にもそんな家ではなく特別な子、魔法使いの子だ。ツヴァイトークで、オナシス家、エステルの家ほどではないが名門のエレメントの家の養子となった。実の両親は女神教会の崇拝者だ。
17歳。やっと、帝国の裏の、エデンの裏側を見る。
自分はヘレネの婚約者だといい渡された。8つも下ということは9歳だ。だがあくまで候補、たぶんだが未来はオナシス家と婚姻をさせられるだろう。
「何だ、いきなり」

「気持ち悪い・・・」
セラヴィーナがアルヴィンの横でそういう。
「誰のことだ」
フォボスか、彼女は悪い、冷酷な奴が嫌いだ。
「コウモリの死神よ、エレオノ―ル様の御子と同じ顔を似せるなんて」

「本当に甘い人」
メルは、ヴォルフリートに剣を向ける。
「冗談はやめろ、一体」
リリは驚いたように変装と化粧を解いた少女に驚きの表情を浮かべた。
「マイン様?」

「タナトスに寝返ったというのか、エルフの姫、セラヴィーナの」
「私はそんなものじゃないわ」

「頼む、俺だけにしてくれ、銀の十字架の姫よ」
「どうか、どうか」
だが映像の中の可憐な姫は。

コウモリ、それ自体は名前だけ知っていた。半分だけ同じでもう半分は。嫌われ者。卑怯な奴。
「貴方は立ち入る必要はない」
ルーランはダヴィデにそういう。露出度の強い女性が二コルに腕を回すが、甘さはない。テロリスト、革命家、皮肉にもイフリート隊にいることで、ナイチンゲール家とかかわることになる。
臣民を暴力で恐怖させる存在。彼らは姿を変え、隣人の振りをする。ウ―ウルフの変身を思い出す。彼らが変身するのは悪を働くためじゃない。だらしないようで、どこかつやめいた横顔。
「なぜなら貴方は一人なのでしょう?」

「ちょっと、ミザリー」
くすくすと甘ったるい少女の声がローザリンデの部屋の前で鳴り響く。ベッドの陰からふわふわの髪の毛の少女が現れる。

「では、オーウェンの娘、我らはどうすればいいというのだ」
「正しい場所で国王陛下に提言するんです」
リーゼロッテは、ソフィア達候補生の前でそういった。

「みっともない」
ヘレネの言葉にアルヴィンは振り向く。だがヘレネは表情を変えない。
「まるで男に捨てられた女そのものじゃないの」
かぁぁ、と羞恥で頬を染める。通りがかりの人々の声が焼けに響く。
「ばか、ちげえよ」
「顔をよく見なさい」

「何だ、その顔は」
「えっ、あ・・・」
「うちの女子達といい、今日は様子がおかしい奴ばかりだな」
「恥ずかしくないんですか、そんな」
「何が」
フレッドは取り巻き連れて、「助けに行きます」といい立ち去る。

きっと、彼は覚えていない。ブレア・アリ―ズという人間を。真実を求め、若者は天に昇り、地上に落とされた。青の救世主、天魔落ち。預言された運命の少年。真実なんて言えない。お姫様は常に一人だ。特別だ。王子様に選ばれるのはただ一人。私は自分の弱さを見たくなかった。醜さを自覚したくなかった。あざとさを彼に気づかれたくなかった。そう、私達は彼を地上に落とした。
カイザー・クラウドはこの世で彼一人なのだから。そう、私はお姫様ではない。そこに終わりはない。
いつだって、自分が大事で友達に対して臆病だった。
罪を犯せば、許しを請えば、救われる。彼は、救世主と違う。そんな期待なんてあさましい。救われたいのは自分の方。いつだって卑怯者で嘘つき。ダヴィデは許すだろう。一人で問題に対抗するだろう。薄っぺらい私は、幼いころの彼とした約束にしがみつく。
永遠の絆、それを口にしながらそれさえも私は信じていない。

「無理だよ、生徒会に立ち向かうなんて」
「そうだよ」
アルバートと二人で止めるが、横暴なアリシアのやり方に風紀委員の連中と立ち向かう気らしい。
「行くわよ、パトラッシュ」
「同調を強いる奴は悪だよな」
この学園では生徒会が王様だ。イベントを行い、教師達もいいなりで。自由な校風。
アリシアはやり手だ。マリアベルと二大巨頭だ。王様で、ヴィクトリアやシエラがよく犠牲になっている。アレクシスは学園の天使だ。アルバートとコンビを組み、切れ者のカイザーが生徒会をまわしている。さぼりまだけど。
文化系連合。シエラの取り巻きのオタクがつけたらしい。友達が一人しかいないくせに、ただし俺は覗く、数で正式に抗議らしい。
その情熱を貧弱な体に充てればいいのに。そうすればあいつが好きな男子達にプレゼントをもらう係から解放されて、修行ライフに戻れる。
「親友を一人にする気?」
「依存をたつのも親友の役目だろ」

ブレアはつくづくダヴィデの修業に付き合いつつ、理解ができない。
「2人ってよく、二人だけの世界作るよね」
なぜ、趣味の話ではなく、恋愛の話を振るとダヴィデは宿敵に会った顔をするのだろう。
「お前らの脳って男の事だけなの?」
一人が好きなのは、貴族の家と関係があるのか。叔母の家で今生活しているとか、前は寮で生活してたとか。
「むう、ダヴィデだって女の子大好きじゃん、一人好きなくせに」
なので、連絡先も家も教えてくれない。食べ物やスポーツ、犬が好きとか。甘いコーヒーが好きだとか。
「本能に従うのは自然だろ」
そういうとモテている人みたいだが。
「でも、動物の生態を見るのが趣味ならサ、クラスの友達と触れ合いを」
「俺は警戒心が強いんだよ、大体何で俺がお前らに俺のこと教えないといけないわけ」
「素直じゃない、まあ皆聞かないけどさ、同じ部員だし私くらいいいじゃん」
そうだ、女の子がだめなら。
「じゃアルバートにしよ、私連絡先知ってるし」

しまったとおもう。ああいう手愛はえさを与えれば、際限なく誘いに来るものだ。移動しながら、錬金術の実験に、戦闘技化の訓練室に同じクラスの生徒ともに向かう。周囲がざわめく。
「カイザー様だ」
「ラインホルト・・・」
皇帝かよ、お前ら。親しくもないし、あっちも路傍の石に興味もない。家柄も外見もいいが、プライドも高い。生徒達は道を開け、後ろでアレクシスが笑顔を振りまき、グループの男子を連れている。だが彼らを悪と思わない。世界というのは優劣をつけ、階級、ランクをつけ、群れを形成する。魔術師は古い家であればある程優遇され、下は彼らに媚びる。
批評家ブルとブレアはいう。所詮弱い犬は吠えるしかないという奴らがいる。人類、兄弟とよくいったもの。恒久の平和、この世の楽園といわれる国でさえ、引っ張りあい、醜い素顔をさらし合う。
アレクシスが微笑みかける、つい頭を反射的に降ってしまった。そうそう、真の悪とは自然にしたと認めさせる、真性のいい人である。カイザーではない。最後尾に、何でお前いるのという、注目しなければ気付かない隠れアイドルがいる。
つい最近、価値が下落し、だが奇跡のスターダムの登るゴットヴァルト君がいる。
あの忍者の才能というか、不可も可もなく周囲に認めさせる才能はすごい。自分に気付いたのか、軽く会釈してきた。アレクシスは無意識で生徒の一人、ゴットヴァルト君は意識してだ。
「お、おう」
中等部の女子か、つい声が裏返る。

「彼を知っているのか」
「誰だ、不愛想な奴だが」
「うん、隣の部活の男子」
カイザーはため息をついた。
「説明になっていない、お前は、フレッドと同じ、お前の友達か?」
「仲直りしろ、俺の同胞だ」
ラインホルトのは命令だ。
「ただのクラスメイトですから」
                 2
つまりは、ゴットヴァルト君はただのオタクの子息どころかやばい奴らをパンドラを殺しまわる、切れた奴で、学園での奥手ブリは全部演技だったというのか。スパイで暗殺者だというのか。中二病ではなく、マジで・・・何で。
アデレイドもコレットもお嬢様達もあいつに騙されていたのか。
頭が混乱する。あの愛くるしさも、少女と見間違うばかりも、相手を欺くための。
彼女達はアルバートの偽物であいつを一度諦めて。だが、双子の弟なら跡継ぎだ。
何もワイバァン隊に入れ、何で表舞台に立たせないのか…出自か。アルバートとゴットヴァルトは立場が違う。魔術士系貴族。つまりは駒として後継者を見る。争いが多く、暗殺も多い名門だ。予備はいくらでもあった方がいい。同時にそれが汚れた存在であってはいけない。母親は高貴な女性、あるいは表に出せない立場。監視役に訳ありの貴族の子息を入れて・・ああ、いやだ。
つまりはあの醜い魔術戦争の中にいるのか。本来は一緒にいる双子を別々に、一人は貴族として、一人は教導院としてスパイとして磨きあげる。

オルフェウスの朝を従士の二人が起こす。
「隊長、朝です」
「まだ、少し」
アルフレートはどうしたものか、とゴットヴァルトに目くばせする。
「暴力は止めろよ」
ベッドではまだ横たわっている。一応隊長なので個人で部屋がある。自宅もあるが、多くの時間はここで過ごす。ネルケやフェリスも来ないようにしている。
「隊長、起きてください」
どちらに入れるか、フレッドはラフォール隊に一応いるが。アルフレートは近づくゴットヴァルトに疑問を持つ。

アルバートの目から見てフレッドの様子がおかしい。
「・・・・大丈夫なのか」

交流会という名の張りあい。ラフォール隊と総隊長と鎮圧のためのせめぎ合い。訓練か見回り、会議、それで鎮圧、討伐。一日はオルフェウスは本部に行き、いないことが多い。なのでアルフレートや先輩が治安やら、情報収集、隊員の面倒していた。
僕はコウモリの本部に行き、連携やら愚痴を聞かされたり。正直僕いらないと思うのだ、アルフレート一人で十分だ。能力も人望も、ついでに背も高く色男で剣も魔法も

「お前はまた他人を利用して・・・」
どこまで腐ってんだ。
「いいんだ、アルフレート」
「お前は囮にされたんだぞ、こいつらに、それもお前の家の名も使われて、恥知らずな」
「結果は帝国の勝利、僕はワンマンプレイせず、仲間と協力し、君たちも活躍できた、よかったじゃないか、エストカラス卿様様だな、うん」
まあ、殴るよな、上官として。でも涙ぐむのは演技がすぎるな。
「この腐れ野郎が」
ぐっと胸ぐらを掴まれる。殴られるのか攻撃魔法か。
「?エストカラス卿?」
「アルフレート、今回の事は彼も反省している、僕も罰を与える、それで許してくれ」


ガラっという音がした。ミリアムとフレッドが同時だ。
「・・・・何か、急用でも?」
ゴットヴァルトは紅茶をカップに注いでいた。女性軍人達は楽しくおしゃべりだ。
「すごーい、手作り」
「菓子職人みたいね」
フレッドは状況がつかめないらしく、え、ええとあたりを見回す。
「布巾を」
「ありがとう」


                3
「・・・・そんなにライナーが好きか、マイン」
「ええ、あの人は私を救ってくれたの」
「セアドアと何かあるのか、というか嫌いなのか」
ぴくっ、と肩をゆらす。
「あの人をあいつはいつも独り占めにするの、だから私はあいつが嫌い、あの人に近づく女達も大嫌い、なにも真実なんて見えてないくせに」

「悪いな、うちの奴が」
「・・・・隊長」
いい奴だ、それに優しいし、正直胸が痛む。あふれる才能とかあるが、ただ価値観や善悪というか、人格が破滅している。完璧に破たんしているわけでもないから困る。
正しさの代表格、委員長というのか。セアドアもあれに絡まなければまともなのだ。
というか、あのこ、何で、あんなやばいのに人気があるんだ。
「大変だろ、ほどほどでいい、ゴットヴァルトは適当でいいんだ、本気にするとこっちが疲れる」
「・・・、選んだのは俺なので」
「そうか」
じっとみる。
「・・・・彼はやはり、家でアルバートと区別されているのでしょうか」

貴方は何で、彼にかかわるの、厄介事は嫌いでしょう」
クリスタルとはそんなに関係もない。
「まあ、いろいろ」
部活も師弟関係も解消で暇だから、音があるから、まあ、自分らしくはない。

「ええと、エレク・ビーネアイトだっけ、イフリート隊付の」
「お前は馬鹿だな、ああいう手合いをまじめに対応してどうする」
最近、知り合ったパンドラだ。ブラッディ・ローズのお気に入りで今は姉さんの近くで護衛をしている。

「・・・・・真実なんですか」
アルバートが大きく目を見開く。
「ああ、悪魔が一人だと誰が言った、全ての青の騎士と女王がそろい、世界は災厄から守られた時、パンドラ達は魔女やウォーロックとともに間違いなく神の剣で今度こそ全員滅亡し、人間と赤の王達だけの世界になる」

「私を覚えているか?」
イフリート隊の席にいた男がゴットヴァルトにいきなり変なことを言う。
「行くぞ、ゴットヴァルト」
「ゴットヴァルト、君何だろう、魔女殺し、異端殺し、多くの革命組織を操り、混乱させているのは」
「中尉殿」
「人違いだ、グレン」

「わからないよ・・・」
アルベルトがアロイスの横で、馬車丸ごと崖の下に突っ込んで死んだ男爵と人形を見ながら。
「僕には・・・」

鏡の中の自分を見て初めてもう石を投げられ、殺されかけ続ける日常が終わったと感じた。
でもそれは始まりだった。
「ごめんなさい、ゴットヴァルト、途中までと言っておいて」
「まアルフレート様も遅れていますし」
目の前にはフェリクス邸だ。
「お茶をごちそうするわ」
「え、はい」

「へえ、旧館が再建されたんですか」
「ええ、でもあまり使ってないわ、ここで待っていて」
アリ―シャはそういい、去っていく。
しかし、アレクシスって本当に大貴族なんだ。ソファーに腰掛け、アリ―シャを待つ。
ガタン。
「・・・・お前がなぜ、ここにいるのです」
14歳くらいの少女だ。後ろには彼女の親がいた。
「どこかでお会いしましたっけ?」
「今日は大事な催し物がここで行われる、下賎なものは早く立ち去りなさい」
「え、でも、アリ―シャ様が」

アリ―シャ様に隣の応接間に入れられてしまった。いや、いいけどね。いつものことだし。まあ、用事がすんだら誰か使いよこすと言っているし。
「ここで爆発事故か」
再建したから、まあ家具もカーペットも取り替えているんだろうな。暖炉に絵に、鎧に。大きい壺やら。椅子の下になにか・・。
拾い上げると、ミステリー小説や帝国貴族の年鑑だった。新聞が挟んでいる。
「ふむ」
使用人とか片付けないのか、きらびやかな姉妹のどちらか、あるいはあの上品な奥さんか。まあ、待つ間に読んでもいいだろう。
小説を広げていると、数枚の修道院風の建物と子供の写真がある。フェリクス家がボランティアをしているというのは本当らしい。一枚、張り付いた汚い写真がある。
「アレクシス様のか、うわ、瞬間接着剤でもつけてんのか」
すごく大事な写真かな、祖母とか。後はトリの名前の貴族の名前が裏に、几帳面なのか、何か悪いことしたのか。
そういえば、姉さんとアレクシス様ってどこで知り合ったんだ。僕は仲良くなかったから、再会しても初めましてで通したが。
すると、帝国貴族の年鑑からまた孤児院の集合写真だ。落ちたので拾い上げ、表を見ると、ナイチンゲール家の紋章入りの孤児院だ。孤児たちが笑顔を向けて、ポーズをとって。
「ゴットヴァルト、クッキー食べるかい」
「え、おお」
アレクシスが来たので、ついその写真を背中に隠した。
「今何か隠した」
「イヤ全然」
「怒らないから、出してくれ」
まあ見ただけだし、怒られないだろ。
「ああ、これか、叔父さんがとったんだ」
アレクシスが写真を見せる。だがどこか切なそうだ。
「でも、この孤児院、今はもう別の場所になったんだ、帝国軍の基地になって」
ああ、セアドアがそういえば、一部領地が帝国のものになったとか言っていたな。
「・・・ふぅん、でも孤児院後が軍のものに、なんかトラブルでも?」
「紅茶は何でもいいか」
アレクシスが歩きだす。まあ、この前嫌いと言ったし、仲良くは無理だが、まあカイザーの親友だし、余計な諍いは摘んだ方がいいな。
「・・・ええと、アレクシス様、この前の二週間前のこと、すまなかった」
「うん?」
「その君が心配してくれたのは快く思う、その、だから、僕はなにを担保にすればいいのでしょうか、僕が貴方にできることがあるなら僕ができることで提案してほしい」
何でもは要求深そうだし、いやなんで、僕、天下のアレクシス様にあんなこと言ったんだ。
「もしかして、それは君が僕に謝っているつもりなのか」
「イエッサ―・・・・」
「そうだな、なにをしてもらおうかな、でも、とりあえず、移動しようか、ここは君もいやな思いでしかないだろうし」
なぜか痛ましい、アレクシスが悪いことしたみたいな表情だが、悪いの今、僕だよな。
「セアドアから聞いているんだろ」
「ああ、5年前か6年前にここで爆発事故でしょう」
「・・・・え?」
アレクシスが僕の顔を見る。あれ、またあれかな。僕が話題をはずしたみたいな。
「・・・ヴォルフリートの事、恨んでいる・・んですよね」

「その先は言っては駄目よ、アルヴィンクン」
「クリスタル・・」
臣民と魔術から見の事件を解決する秩序の存在。戦司祭のついでだが。
「リリーシャちゃんもあそこにいる彼女達も臣民なの」

「・・・・そうだよ、そこではさすがに生存者はゼロだ」
英雄となる、ブルー・ローズの特別任務。彼らはエデンに入り、そこで市民権を得て、戦闘から抜け出せる。それがパンドラの輝かしい道だった。
「奴らは最初から魔物にい場所なんて与える気はないんだ」
「・・・もうひとつが魔獣になる・・・そんなことが」

「どけ、そいつはこの世で最も邪悪なモンスターだ」
彼らは自分達の表情を見たことがあるだろうか。
だが助けた事実は変わらない。だが、たとえどんなにアシュラが奉仕しても。

「卑怯者、彼は降伏していた」
「でも先に撃ち殺さなければ、君がやられていた」
キッ、とアリスがヴィルフリートと名乗るコウモリの制服を着たゴットヴァルトに迫る。
「貴方は命を何だと思っているんです、命に上も下もない」
はっ、と笑う。
「お前のような嘘つきのことなど、誰が信じるか」
「結果はアルベルト、君の望み通りのはずだが」
「君のやり方は、非道だ」
白の騎士団の騎士達がゴットヴァルトを囲む。
「いうことを聞かなければ、すぐ権力か、さすがローゼンバルツァーはお偉いだけあるな」
アリスがゴットヴァルトの手を握る。
「お願い、もう罪を犯さないで」
「証拠もないのに俺を犯人呼ばわり・・・これがブルー・レジ―ナのいう正しい手段か」
「どうして、ひどいことばかり言うの、戦うな、役立たずとか、そんなに・・・そんなに武力が大事、自分が大事なの」
「女の君が戦場で行っても、取り巻きさえいなければ数秒で死ぬだけだ、男や臣民の人気取りがほしいだけだろ、正義を飾りたいなら、要塞壁の中で好きなだけすればいい、正直言えば、君は今さら出てきても、迷惑だ、一切かかわることをやめろ」
「誰かが傷つくのを見ていろというの、貴方はいい人だと思ったのに」
「強すぎる力は迷惑な時もある、君の出る幕はない」

体中の血が、ダヴィデとシエラからひいていくのがわかる。妖精という手のひらサイズの少女が見せた映像で行われていたのは、改ざん前のゴットヴァルトの戦闘の記録だった。
「・・・・これ以上、行っても、彼らは態度を変えないでしょう」
「どうして、彼らはワイバァン隊はコウモリは血を流すことを求めるのでしょう」
イリスは理解できない。

「弱虫だな」
笑いながら、カイザーは泣きじゃくる少年を泉から助けだす。
「ごめん、カイザー様」
「いいって」

けれど、値を上げたのはおじさんのほうだった。少し熱くなりすぎたらしい。隙もなく磨かれたトップの剣は僕が盗めるわけもなく。
「あれ、殺さないの?」
瞬きもなく、副隊長の動き、呼吸、リズム、圧倒的な戦闘能力剣術を楽しく見ていた。
床に体が討ち付かれ、これは勝負が見えている。
「貴様は・・・何だ」
身体を起こすと、その副隊長は引いていた。
「どうしたの?そんな表情青くして」
「近づくな、お前は…一体」
剣を拾い上げて、近づく。
「ねえもっと撃ち会おうよ、もっと見せてくれ、本気だして、先輩の剣術もっと楽しみたいですし」
だが一向に相手は来ない。そうか、殺そうと思うほど僕が手加減していると怒っているのか。
「でも意味のない殺人は犯罪だし、よしお互い半殺しで遊ぼう」
よく考えれば騎士団の剣術がいいよな、気遣うポイント間違えた。いけないいけない。
「降参だ」
「え、何で楽しくなってきたのに」
「私はお前に負けた」
「ええ、何で、いじめ?」
つまんない、仕方ない。
「いいや、エストカラス卿、いつも通り殺し会おうよー」
「そうだね」

つまりは仕方ないから、悪いから見捨てるとアズゥ・ナイトもアリスもいっている。正しのは彼ら、武力にこだわるのが悪い。
「きっといつかわかってくれるさ」
「ええ・・・」

彼はお前らの代わりに全て背負ってくれたのにか。
「マイン、それくらいにしておけ」
「コウモリはすべて殺すべきよ」
「命令だ」
ゴットヴァルトから剣を離す。
「大丈夫か」
「セアドア、何かえらいのに目をつけられたな」

オルフェウス達は今、王宮で容疑をかけられ、裁判にかかる。いつか過ちに気付くと誰もが思っている。
「・・・でも、俺は、それでも」
「ダヴィデ・・・」
なら、ヴォルフリート、お前こそあいつの何を知っている。イリス、お前は誰を助けた?
「アーディアディト、・・・俺は、俺は」
卑怯が悪というなら、嘘が悪なら、罪が悪なら、みんなが真実なら。
青の騎士が俺の運命なら。
「お前とともに世界なんか守らない」


「・・・・して」
ゴットヴァルトは本当に意味不明だ。アルフレートも、突然襲い掛かってきた少女騎士にヴァガットの呪いがかかっていることに気付いたが。
「お前ら、とりあえず降りろ」
助けるのはいいが、乗りかかるのはちょっと・・・。
「ゴットヴァルト」
「僕は守るより攻撃の方が得意なのに」
「貴様は従士だ」
少女はラフォール隊の制服を着たダレンを連れたフレッドに気づく。
「・・・・ぁ、ふれ・・・」
ああ、よかった、ご無事だった。
少女は手を伸ばす。自分は操られていただけ、そう悪くない。
少女の視界の隅でゴットヴァルトの怪我が数秒単位で治っていく。オルフェウスを殺せだったが、ああ、だから、あの男は。
「お逃げください、フレッド様、この化け物は私が殺してあげますので」
「・・・・悪いけど、黙ってくれないか」
え?
「今、君の言葉を聞きたくない」
「あーあ、雷のマナで服が解けたよ、また金かかるし、何です、エストカラス卿」
いきなり殴られた。
「自分の上官を危険にさらすとはどういうつもりだ、クラウドッ」
「ちょっと、僕中尉殿に呼ばれただけで完全に責任ないんですけどっ」
「だとしても、不審者がいないかつねに傍に控えるのが君の役目だっ」
「無茶言わないでくださいよ、大体別の隊の人にいきなり殴られる言われないんですけど、帝国では臣民も貴族を訴えることできるんですからねっ」
「お前も両親ともその貴族だがな」
「僕が君が攻撃されて痛まないと思うのか、君は僕がその程度の人間と思うのか」
「?・・・え、ああ、まあ僕は貴方が心配するような人間じゃないけど、何でなくのさ」
「このものは僕が警察に連れて行きます」
「ああ、いいですよ、僕達が連れて行きますし、オルフェウス隊でなんとかしますし」
睨まれた、怖い。

「よう・・・」
「・・・・・何のつもりだ」
すぐ、死なないようにしていた、そもそもあれくらいでは、こいつは死なない。殺さず捕まえる、弟の思考くらいわかる。
「何ただ死ぬだけなんて、つまんねえだろ」
「悪趣味な」
「そもそも何年も一人だから狂うなんて思い込みだよな、お前は正気なんだろう」
「お前は正義感があるように見えないが、国も仲間も何かに依存することも価値がない、そうなのだろう」
「人間、そうそう発狂も自殺もしねえようにできてる、そう、結局は自分大好きで醜いくらいに自分の幸せに固執するんだよ、若くて格好いいから余計に執着が強い」
皆になりたいから、今の自分が認められないから、平凡だがそれゆえにもがく。人間は弱い、だから所属し、愛し合う。皆がいうことだ。
「・・・・・・業だな、そうだな、何年も私はいいわけしていただけだ」
「死んだ者の分まで幸せになる、あれは自分が選んだことだ、本当は死者を忘れたい、幸せになりたい、それが真実だ」
「ならば行え、他者に己を食いつぶされ、私のような馬鹿にならないために」

「-あの少年のためか」
「はぁ?」
「・・・・私のナイトメアは、そういうものだ・・・お前は捕まったのだろう」
「気色悪いこというな」
「暇だからな、一人でいるとそういうことに気づくものだ、だがそれは空虚だよ、捕まらない夢を見つけに行くものだ、出会ったんだな、お前が探していたものに」
「正気でいることはお前には罰だった、もうよそおうな」
「それは呪いでもない、幸福だよ、たとえそれが手に入らないものでも」
「一人でいることが悪、傲慢だな、孤独に皆生まれて死ぬのに」
「嘘だな、お前は卑怯者で傲慢だが耐えられる男ではない、喜びを得るものではない」
「きもいこというな、違うぞ」
「ならば迷わず求めればいい、それこそが生きることだ」
「お前の王を、思いのまま、守ればいい」


「フォボス、武器を捨て帝国軍に投降しなさい」
「君か」

「いやいや、セレアちゃん、あれでカールスも役に立つんだよ、そりゃあ作業は平凡で人付き合い悪いけど」
「本当に?」
ほら、と指差すと、カールスの後に幼女、学生、女性軍人、貴族の奥様がついてきている。
「酷いクマ、ぷっ、ださ」
「髪の毛ぼさぼさ」
「存在感ゼロ」
少し道を歩けば、騎士団の精鋭のお兄様がた、賢者が絡んでいる。
「手を握らないでほしいのですが」
「君は磨けば光る、どうだい養子に」
「素晴らしいマナだ」

「・・・・図書館や周辺は全滅みたいだな」
「イグナス?」

「妙なことをいう」
ベルナールたちを見て、黒魔術師は首を傾ける。
「どうして、無関係の人間をこの私が助けないといけないんだ?」

「・・・・ひどい格好だな」
「うるせえy、フロイデ」
「散々な一日だ」
フロイデとアルヴィンは空を見上げた。

「お前の正体は分かっているわ」
周囲がざわめく。フリッツは眼鏡のお団子頭の少女が群衆の中から出てきたことに意外なものを感じた。
「こんな子供の国に取り入って、いずれは人間や全てのものを支配するという考えだろうけど、お前は――古い」
「何者だ・・・」
「私を三つに分け、記憶も奪ったまではいいわ、でも呪いは解けやしない、お前も私も逃げることはできないの」
「近づくな、輝全はいささか立場を」
「時は永遠だけど、過去には戻れない、貴方はいつもお人形、考えなしの甘えん坊、そんなに欲しいなら上げてもいい、お前にそれが耐えられるなら」
「正しい血統がいつも正解とは限らない」
「私はすべての王、赤の女王だ、近づくな」
「なら、何で3人にした時に殺さなかったのかしら、お前は最も強い血であること、誰にもク屈せず、おのれであること、それすら忘れたのかしら」


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