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ruka126053のブログ

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第4章―銀の牙結成



この日も当たり前に、アヴァルツデュア軍女性士官は上司のたわごとを聞き、敵対勢力の制圧や偵察、訓練、事務仕事といつも通りの日常が流れるはずだった。転属願を出して後方の方に回ろうと。

首に付けられたアヴァルツデュア軍の服従の証。支配される人以下の生き物の証だ。昨日までは中学に行き、馬鹿みたいに遊んで喧嘩して、恋をして、親とけんかして、でも重厚の支配者気取りの侵略者の紋章が入った扉が開く。
騎士を思わせる大型の巨人―皇帝陛下なる泥棒は英雄だと、勇者という呼称を付けた。どんなセンスをしているのか?

ーなんであきらめないんだ。
シレン・アオイはかつての名前をギリシャ、帝国支配領となったスクエアー12で事実上亡霊政権ともいえる革命政権で指導者フェヴリエのために、シオン・葵が独自開発したユーロさんのシュヴァリエを改造した機体(青の賢姫)に乗り込んでいた。
それは醜悪な青いカニのようにも見えた。いかつく、それでいて優美な帝国の勇者。シレンたちには殺戮者の機体でしかないが。
貴族や選ばれた者だけが載ることを許される量産型でも改造型でもない機体は恐るべき破壊砲弾と数本の剣、ビームライフルを装備していた。
まるで牧羊犬に襲われる牛の気分だ。
「ふふ・・・」
帝国にはこんなのは日常の一こまでしかないのだろう。事実、王子の名のもとに圧倒的不利と言っていい基礎的な戦術や機体数。だが王道を究めれば、それは武器にもなりえる。

ただ慈しむように育った花は結局は外の世界で生きていけない。最愛の妹アーデルハイトは過保護なように見えて、その実徹底的な実力主義の姉の元、帝国最強の一人とされる騎士こうに勇者の操縦を受けていた。
―誰も傷つけあいたくない、みんな仲良く。
それが皇女アーデルハイトの願いだが学生であり、同時に軍の指揮もとらなければいけない。目標地点では病院や学校、この国の民衆だっている。
「・・・続けますか?」
相手となる騎士は心配そうにアーデルハイトに尋ねる。
「いえ」
ピンク色のパイロットスーツには皇族の紋章が刻まれている。バイクに乗るような体勢で皇女はテロリスト殲滅のための戦闘教育を受ける。
無論カレン、優美、地合いが形度った少女だ。普通に恋にあこがれ、学園に通うことも可能だ。だがアーデルハイトは今が特別なのを知っている。
・・・・ルードヴィッヒ、シルヴィア。
日本で死んだ異母兄弟は今生きていたら勇者のパイロットになっていたのだろうか。


お兄様、お兄様。
優しいルードヴィッヒお兄様。
クロノスを強奪するとき、世界に挑むことをシルヴィアは決めた。こうも世界が理不尽を自分たちに与えるなら。
「私が世界の嘘を暴く」
炎のような感情がシルヴィアの中でほとばしる。常識やルールなど知ったものか。
「クロノスよ、皇を目覚めさせなさい」

力によるものの平和を歌うネットアニメをカインは眺めていた。
勧善懲悪。正義の帝国と、悪行を重ねる各国のスクエアーに潜在するテロリスト達。主人公は名門貴族の三男坊で、騎士だ。彼は今、かつての日本で正義の味方とうたわれたニューフェイスの謎の男オーディンへの対策に追われていた。悪徳政治家や腐敗した貴族、彼は宣伝通り、剣による正義を貫く。

いかなる暴力にも屈しない。武力による平和。それがアヴァルツデュア帝国の理念であり、ルールである。エリザベートの部隊に所属していた女性パイロットは今スクエアー9において、長年アヴァルツデュアを苦しめてきた抵抗勢力との交戦の中にいた。誇り高き、正義の騎士は剣をふるう。

断固せん滅。
それがエリザベートの信念だった。力なきものに価値はない。
分かりやすい考えはたくさんの騎士たちを励まし、叱咤する。
「全てはアリスのために」
「騎士団出撃」

ライデンは今、関西方面で大掛かりなテロリスト殲滅戦に追われていた。


「どうせ、ヒーロー気取りだろう」
「放っておけ」


俺一人では勝てない。ならば軍を、コマを。
「騎士・・・」
瓦解した組織は束ねるものが必要だ。



「私の力はわかっていただけたか、坂城」
「いや」
「キョウトの側近、茎と言った方が正しいか」

「シルヴィア・・・」
「なにかようですか、おお亜実さん」
可愛らしい笑みだが、冷たい。ピシャリ、と冷たい拒絶が流れる。
「あ・・・」
「すまない、人違いだったようだ」

「いけぇぇぇぇ」
オーディンは仮面の下で、唐突に飛び込んだアヴァルツデュア帝国の期待に、予想外の新型兵器にまたも計画を狂わせる。
ドガンッ。

「オーディン、お前はなぜ混乱を起こす」
「白銀、お前はなぜいつも俺の邪魔をするっ」
ライデンのパイロットはその技に一瞬見とれる。


「認めるよ」
「・・・ルチアっ」
「私はあんたの下につく」


ブラックモアは成り上がりの下級貴族であり、企業家の一族でもあった。だが、ジーンは優秀な弟がいたため、特に期待もされず、この国では軍人が重要視されていたため、勉強よりは体を動かす方が得意だった。
「別にそんなにとげとげするなよ、使い捨ての靴だと思えばいいだろ」
「苛立ってなどいない」
ジーンは困ったように手を上げる。
「銀の牙ね・・・」
コスプレってやつ?奇抜な服装だ、これで意表をついたつもりなんだろうか。


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