第七章キョウト事変1「大輔、こいつ」 人々は散っていく。 「ああ・・・・」 割れたコンクリートの地面。あちこちに散乱した公園の草花。光は非現実な光景、温度のない空虚な瞳にティルモンとともに一瞬目を奪われかける。正体不明、敵だ。少なくとも信用できる存在じゃない。人間の子供に見えるが違う。 京は大きく目を見開く。賢は、緑色の爽やかな長い髪が散らばっていること、金色の瞳がこちらを眺めていることを気付いていた。 いきものは怪我をすれば、血が流れ。その感覚を八神光や賢は知っていた。ゼロはデジモンとテイマーに攻撃され、右足を損傷した。 「あ、動かないで」 だが、ゼロは光を気に留めることなく、地面を身体を引きずりながら、移動する。 「お前光ちゃんが」 ずるっ、となり。空が動く前に太一は思わずゼロを抱きとめていた。 包丁の音が鳴り響く。 「すごいわね、レイちゃんは」 「問題はない、次の食材を頼む」 「あはは・・・」 光は困ったような笑顔を浮かべる。 「料理上手ね、お母さんに習ったの?」 「イエス、世界一優秀な教師と確定してよい」 「もう、かっわいい」 ピピピ。 「・・・・朝か」 だが次の瞬間、アグモンではなく、ゼロが見下ろしていた。 「な、なんだよ」 「命令、八神夫人は八神太一が次の段階にシフトするのを昨夜9時に自分に要求、現在7時5分、速やかに顔を洗い、髪を整え、制服装備せよ」 「ごめんね、大きいお兄さんなのに起きるのが遅くて」 イヤ、警察とか連れて行けよ。 「問題はない、未完成の個体の世話は馴れている」 慌てて、母の元に向かう。 「何で受け入れてんだよ」 「ああ、あのしゃべり方?そりゃあ個性的だけど、きっとまだ日本語慣れてないのね」 「光の友達だけなら、家に帰せよ」 そのあと、怒られた。お父さんの手伝い、日本に留学しに来た子を冷たく扱うとは何事かと。学校は怪我が治り、家に戻ったら行くとゼロは両親に説明したらしい。 ―それに、太一になついているみたいだし、寂しくさせないよう、かまってあげるのよ。 オヤジはおやじで息子が一人増えたみたいとか言っているし、釣りに連れていくな、けが人何だろ。 あれはなついてるではない、じーとみられている。俺は虫かよ。 そして、今もタブレットで自分を観察しながら書き込んでいた。 攻撃する気もないらしく、アグモンが気を使うという妙な光景を目にすることになった。 「太一・・・」 「えー、あー、ヤマト菓子でも食うか」 リビングだ。だが、まあ、ヤマトは逃がしてくれないだろう。 「何で、敵かもしれない奴をお前は自分の家に入れてるんだ」 「・・・・ええ、まあ、怪我してるし」 ヤマトが空に視線を向ける。 「空」 「え、ええと、まあ、うん」 空はゼロを見る。ゼロは気付き、ぎぎぎと首を無表情で傾け、そのままゆっくり自分の方へ傾け、じっと見てきた。 「・・・・」 野菜じゃないんだけど、今やおやのスイカの気持ちがわかった。 「ええと、菓子でも買ってきてくれないか」 「了解、八神太一」 ゼロはそのまま、出ていった。 「・・・・お前、なじんでるんじゃねえよ」 銀の円盤に乗る天使型デジモン、ルーン文字が書かれた赤い法衣と鎧を身にまとったエンジェアリアンモンは運命のロッドを手に拓摩を見送る。 「本当にここに残るのか、アーニャ」 「ええ」 「セカンド、あなたってつまらない人ね」 そういった十三月の月の精鋭メンバーの一人が氷と雪のエリアでユキクマモンに連れられ、そういった。 「エリアの調整、デジタルワールドの秩序」 「それ以外に考えることないの?」 デスウォーグレイモンとリリスモンの対立は、第二世代の選ばれし子供たちの世界をかけた戦いより古く、静かに激しい。ダークエリアで牙をむきあい、争いは人間世界の子供達まで巻き込み、褒美を与え、今のような世界に姿を変えた。 桜吹雪の中、相馬撫子と宗一郎は舞を踊る。 優しい両親に、厳しい祖母。伝統と歴史の純和風の家。期待されない三男の立場。 宗一郎の環境はそんな環境だった。 ぶつかり合う拳。レパードモンは神殿エリアを敵の来襲を撃墜させるために、宗一郎への不信をくすぶらせたまま、定らまないフラッグに足を預けながら、放棄してしまった誇りのためにセイバーズの精鋭の戦士として戻るために戦う。汗が額に流れる。 不条理だった。宗一郎はこの混乱の原因であるオ―ブを奪還するためにガウルモンとともに突進していく。占拠された神殿エリアの中で、操られたエンジェモンの亜種がミケモンに、光の剣となってその槍を突き付ける。 「ミケモン!」 「故、わかってる!」 戦闘中だというのに宗一郎は息の合った二人のテンポに目を奪われずにはいられなかった。その時、足元の大理石が割れ、地中から点数稼ぎの故の喧嘩仲間、石神真が、窓からは体格のいい天神卓が、テイマ―ズのトップを目指してパートナーデジモンとともに襲い掛かる。 自分達は同じ階級の腐った人種だ。バカバカしいほどの単純な思考。今更、親の決めた張りぼての平和に、あの塾に戻る気はない。 ・・・本当は認められたいんだろう。 カチューシャをかけたクラスのいい子ちゃん、委員長。 大神君、仲良くしてください。 能面のような表情、冷え切った友好のセリフ。 美登里の憐れむような笑顔が今も忘れられない。お前もあの母親と同じか。 「ミケモン、進化を―」 「ああ」 「皆のために!」 「うん、ずっと待っている」 「必ず、迎えに行くから」 十三月の月第9番隊隊長冨羅我とセイバーズ精鋭部隊所属コマリはキョウト御所の中でお互いの恋の記憶を忘れる呪文をソロモン響団のテイマ―、リリーシャとパートナーデジモン、神獣型ドラゴンタイプのオウリュウモンに唱えられながら、身体を寄せ合い、離れようとしなかった。 2 ロシア・モスクワ。黄金の宮殿の中でナビゲーターファイブのジャッジのもと、クリスタルに閉じ込められた太刀川ミミを奪うべく、同じ名門バスケ部のチームメイト同士、親友同士のフェルナンド・カールセンと井上透。 「どうしてだ、なぜ無抵抗の人間を彼女をバトルに巻き込んだ!」 だが、フェルナンドの顔は固く、その瞳は冷たく閉ざされている。 「お兄様を解放しなさい、偽物の勇気の少年!」 相馬宗一郎の許婚、小学三年生の青龍島碧子が暴走する機関車の上で、タクトと真剣な表情で向かい合う。 「お兄様をかどわかし、無粋で野蛮な戦争に巻き込むなど、誰が許しても私が許しません!」 「ええっと・・・」 困ったな。 ―友達を助けたい。 「頼む、俺にタクトを助ける力を!!」 こんなことになるなら、あいつの言う通り、まじめに修行すればよかった。 カラン。その時、何かが崩れる。 「・・・」 レミモンはじっとランドモンを見る。 やはり、彼は苦手だ。 「ヒよモンはアーマー進化した・・・」 |