2013/08/29(木)00:24
最後に愛は勝つ
ちはやふる
かみよもきかず
たつたがわ
からくれなひに
みつくくるとは
(上の句)
お相撲さんの竜田川関が、「ちはや」という女性と「かみよ」という女性に言い寄る
も、二人とも、聞く耳を持たなかった。
(下の句)
数年後、落ちぶれたその片方の女性が、竜田川関のもとに現れ、「おからでもいいから
めんでください」というものの、当時のことを恨んでいた竜田川関はこれを拒む。
それを苦にした女性は、井戸に身を投げた。
当時中学生だった僕はそんな覚え方をしており、このフダが唯一上の句のみで反応出来る
フダだったわけだが、時代が今ならば瞬時にヲタク認定されてクラスのみんなからハブら
れてしまうわけか。世知辛い世の中だ。
六月某日。
京阪大津線。
「きょうは ほうむきょく まで しょちょうさん の おつかいにょ! 」
とか某グッズショップのキャラクターみたいなことを考えていたら、やけに目に付く
色の電車が、ホームへと走りこんできた。
おいおい、ちょっと待てよ、「おけいはん」って言ったら、あの芋臭い緑色のツートン
カラーが目印だろうが、なんだよこのパッションフルーツカラーは?
などとおもいきや…
「なんだよ… コレに乗れってか…」
とか、
「そういえばこの手のラッピング電車やバスに乗るのって、何気に初めてだったり
するよな」
とか思ったものの、周囲にいる地元民、学校帰りと思しき学生などは、まるで動じ
た様子も無く、すでに見慣れた風景となっている模様。
なんとも複雑な気分だ。
その車内も同じく、「ちはやふる」の作品がフューチャーされた内装となってはいた
ものの、地元の方々にはすでに見慣れた風景となっている模様。
窓の向こうに見える琵琶湖を見ても、何の感慨も沸かないのと同じようなものだろう。
多分。
ならばその車内の内装とやらも写真に収めるべきか、とは思ったものの、一応社会人
的な格好をしているということや、周囲の視線を気にして自重した。
いやあ、オレも丸くなったもんだ。
ちなみに「ちはやふる」がどんな話なのかは、全く知りません。
さて。
大津市法務局ということで、降り立ったのは島ノ関駅。
時間は11:00を過ぎたあたり。
湖岸道路側のホームから、反対側へと渡って改札を出ると、視界の先に琵琶湖が見える。
だが、琵琶湖が問題ではない。
道路を越えた、反対側の歩道。
このときの感覚を申し上げると、「呼ばれた気がした」。
そこに見えた青色に、白を染め抜いた文字。
何と書いてあるのか、まではこのときしっかり読まなかったが、確かに僕を呼ぶ何か
は、そこから発せられていた。
その青い看板にはなんとく見覚えがある。
何となくそんな系列の店だろう、と思った僕は、時期的な気温の高さと、強烈なにん
にくの臭気を懸念して、法務局方面へと足を向けたのだった。
仕事を終え、やや遅めに昼食にするか、とコンビニに入り、コーラとおにぎりを調達
したそのとき、再びその看板が目に入った。
ああ、なんだ。
やっぱりそうだったんだ。
「呼ばれ」てたんだね。
屋号からして、どう考えても僕が、僕らが行かなければならない系統のお店じゃあ
ないか。
しかし今の僕は、かつての無茶食いとは遠く離れた生活を送っている身、ましてや年
を追う毎に暑さの耐性が低下している。
こんな状態で、「肉食堂」なんて銘打った店の暖簾をくぐり、果たして無事に帰還って
くることが出来るのか…!?
否、出来ない。
そもそもこれ以降の仕事も残っているし、なまじ美味かったりしてみろ、きっと二度と
来ることもあるまいこの地に、そんな美味を見出してしまっては、後々思い出すたびに
もんどりうつことに成りかねない。
そう判断した僕は、コンビニで買った昼食を手に、琵琶湖の湖畔で遅めのランチタイム
とシャレ込んだ。
そうだ、見なかった、聞こえなかったことにしよう。
昔の僕ならいざ知らず、今はもう、意味も無く戦う必要なんてないのだ。
いやあ、オレも丸くなったもんだ。
(つづく?)