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月浮かぶそら、輝くひかり。 -静かな夜空の小さなトモシビ。

第十五章-時期はずれの転校生-

ガラガラガラ・・・という騒音と共に開くドアはいつも必ずといっていいほどクラス中の注目を浴びせてくれる。・・・どうにかならないものだろうか。
注目と共にクラスの至る所から『おはよー』というやる気のないようなあるような声が聞こえてくる。無論、第一章では考えられなかった状況だが。
『おはよー』
と僕らも返し教室内に入る。・・・ただ一人を除いては。
「おい涼哉、挨拶ぐらいして入れよ」
「うるせぇ・・・」
少しいじりすぎたか。次からは気をつけなくては。
「司、そろそろSHRはじまるよ」
「お・・・?もうそんな時間か。サンキュ」
数分後。
「おっしおまえらー、SHRはじめっぞー」
「センセー、微妙にテンション高くね?」
「ああ?今からお前らが驚く顔を想像するとワクワクしてな」
「妄想乙」
「なんだとこら?」
・・・久々に不良vs教師の喧嘩を見た気がする。
読者の皆さんお忘れかもしれませんが、不良というのは第一章に出てきた村雲孝太のことです。
「起立、気をつけ、礼。着席」
「よっし。まずはさっき言ったサプライズについて説明する」
「サプライズってなんだろ?」「担任解任とか!?」
クラス中から色々な噂が一瞬立つ。しかし担任解任はないだろ・・・。
「誰だー、今担任解任とかいったやつ。転校生だ転校生」
『転校生!?』
先ほどの噂話ではなく今度はクラス中の人間が以心伝心したかのように全員がハモった。
「おう、転校生だ。はいってこーい」
ガラガラガラ・・・という音と共に、小柄な女の子が入ってきた。
身長約145~150cmといったところか。
金髪交じりの、腰あたりまで綺麗に伸びたロングの黒髪に赤渕眼鏡。委員長体質といったところだろうか?いや、この場合図書委員系か。
眼鏡がよく似合う、可愛い子だった。どこかの某少女とは違いますよ?
「とりあえず、一通り自己紹介をしてもらおうかな」
「・・・・・・」
「えーと・・・?」
「・・・。小日向凛です・・・よろしく」
「んだー?無愛想なやつだな」
「黙れ不良」
お調子者の孝太を、いつものように担任が一喝する。
「あー、とりあえず、綾羽の横にでも座ってもらおうかな」
「・・・僕ですか」
「ああ、よろしくな」
「わかりました」
僕が了解すると、ツカツカと音を立てながら小日向さんが向かってきた。
「よろしく、小日向さん」
「・・・・・・」
「・・・・・・?」
挨拶するも、小日向さんからの返答はなかった。
「とりあえずSHR終わるかー。あんま反応なくて先生は残念だ」
「きりーつ、気をつけ。礼」
「あー、言い忘れてたが綾羽。お隣さんついでに学校案内してやれ」
「・・・僕ばかりですね。僕に恨みでもできましたか?」
「ははは、いや、お前は成績良いからな、適任だと思ってな」
「・・・要は決めるのが面倒と、まあ良いです。わかりました」
「頼んだぞー」
休み時間。
「司、私もついてくよ」
「お、サンキュ」
「よろしくね、小日向さん」
「・・・・・・」
またしても返答はなかった。僅かばかり頷いたようにも見えたけれど。
僕の彼女への第一印象は、可愛いけれど、無口な少女となった。


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