おいろーぱ野郎

先週の金曜日、PM7時にOfficeを出た。まだ明るい夏の夕空に幾つかカラフルな気球が飛んでいる。ドイツではAugsburgの近くの平原を抜けるアウトバーンでよく見た風景だ。暫く走ると随分渋滞している。のろのろとラウンドアバウトを縫って走り、高速道路へのジャンクションへ左折しようとした時　パトカーとパイロンが入口を封鎖している。大きな掲示板に＞M3　Closed＜の文字がある。
Londonを囲む環状線M25まで20マイル以上あるのにClosedとはひどい。腹も減ったのでピザ屋で時間を潰し、一時間後に再度トライ。結局Closedは継続中で仕方なく一般道を進む。

日暮れ時に突然の渋滞に巻き込まれた身には何も説明がないため事情を理解できない。一般道は上下ともに大渋滞。しかも１車線づつの対面通行ときている。完全に暮れた日の中、夥しい車の静止したライトがお互いの対向車線の列を照らす。ここまで何時間かけてきたのだろうか、車中の人々は疲労し困惑している様子。自分も11時近くになっても解消しない渋滞の中　無性に眠くなり、道路沿いの安宿に泊まることを考え始めた。

しかしUK人はこういうときに文句を言わない。障害に慣れっこなのだろう。不自由が当たり前の社会を生き抜く知恵は生活の中から会得される。南ドイツでも時々アウトバーンで缶詰状態になるが人々は文句を言わず渋滞に耐えている。
（程度はともあれ耐えるという点では日本人も負けていない、ただ最近もそうと言える自信は無いが。何せサッカー会場に入れなかったなどという　ただそれだけの理由で警備員に食ってかかり突き飛ばしたりする猿人がそこここに居る訳だし。）

より正確には、ドイツ人は耐えているわけではなく、単にルールを守るのが好きなだけのようだ。例えばアウトバーンの無制限区間が終わり、街へ向かって60kM制限が始まるとそれまでどんな恐ろしい運転をしていたポルシェでもあっさりとスピードを落としFiatと肩を並べる。
赤信号ではきっちりと停止するし（違反監視用カメラは所々の交差点にあるが）交差点では必ず歩行者を優先する。出張中のUK人達はその紳士ぶりに感嘆する。

ところが、一旦規制がなくなると手がつけられなくなる：
元同僚BのBMWに同乗した時、自分では見た事のない位置を示すスピードメータの針を目撃した。これはちょっと速いねぇ、とやんわり釘をさすと　Bは”大丈夫だ、260kmになるまで空は飛ばない”とさらりと答え　なおも針は回りつづける。パラシュートでも隠し持っているのだろうか。

昔仕事をしたことのある初老のL。OldFoxと異名をとる彼は250km程度しかスピードを出さないが、そこから急ブレーキを踏むので同乗者の評判がすこぶる悪いらしい。ルール違反じゃないだろうけど、ちょっと死に急いでないかい。

かように、日本では若造だけが御執心になる車のスリルは　ドイツ人男性を老若問わず捕らえ離さない。

今日になって判ったが、どうもM3の上下両線で玉突き事故が起き死者が出たらしい。犯人特定のため疑わしき事故車を確認するための高速封鎖だったとの事。燃料電池も大事だけど事故が起きない車も早く普及して欲しいものだ。車のスリルを楽しみすぎるドイツ人には作れない？＝チャンスだ日本人。