おいろーぱ野郎

2005/10/30(日)00:41

SeanPenn主演の連作を: "The Interpreter"

das Kino(5)

 この夏、NicoleKidmanとSeanPenn共演の映画 The Interpreter を例によって日本行きの飛行機で観た。  アフリカ某国の大統領をNY国連本部で暗殺する謀議をたまたま耳にしてしまった通訳(Kidman)が命を狙われ、USテロ対策Teamの腕利きSecretService(Penn)が彼女の護衛を行う。クライマックスの暗殺計画に向けて起こるいくつかの犯罪を通じ、通訳自身の過去と現在を含めて、計画の背景と真相が徐々に明らかになる というのが大枠のあらすじになる。  アフリカの小国で起きている虐殺とそれに伴う政治運動、および国連ロケという二つのKeyPointを除けばストーリー自身に目新しいものは無い。  Interpreterと銘打ちながら、実際にはCommandoといった感じの作品展開、そして観客受けを意識した幾多のありえない設定や(=バス爆破後の被害状況、アフリカ内で白人の政治ゲリラ活動家は目立たないでいられるのか、等々)、様々な事件のDetailの非現実性。これらが観た後に釈然としない残滓となるが、誰かと映画館に観に行く娯楽映画としては充分元が取れる出来になっている。Kidman Maniacならストーリー展開の最初、眼鏡姿の知的な職業人の役柄にきっと息を呑むだろう。  それだけなら敢えてここに書き残す必要はないのだが、一つだけ特記したかった点がある:この映画はSeanPennのものだ。  高い演技力については噂に聞いていたが、彼の出演作をみることが無いままに過ぎてきた。元々Madonnaとの結婚や傷害事件など、ゴシップが飯の種のような廉価芸能人という印象しかなかったのだが、時間の経過が恵みに働いたのか、本作の地味な男の役柄は、演技ではなく現在の彼の”地”であるように感じる。  終盤、川沿いの公園のなかで膝ほどの鉄柵に腰掛けながらKidmanと向き合って語る場面がある。  錆びかけた太いコイルばねが じわじわと蓄えた歪み。中心線から2-3度ほど撓んだ軸心が復元する契機のこの短いシーンで見せるKidmanとの会話。乾いた笑顔の裏側に残る、男の内面の機微。  孤独なUS人を、役柄を通じ(または地の演技で)見事に表現したSeanPennを同設定の連作としてもう一度観てみたい。  興行収入上Kidman抜きのSequelは有り得ないと承知しているが、それでも期待してしまうなんて、やってくれるとしか言いようがない。ある意味絶滅種のような男達を観ていたいこの気持ち、地域と人種を越え、この時代にどこまで通じるものだろう。 [追記]  固有の軌道を周回する二つの遊星が じわじわと限りなく近づき、そ知らぬ顔で互いを通過する。鈍色の鋳物細工に滴下され、表面を伝う人肌ほどの暖かな液体。鋳物の温度が液体のそれに達することはないのに、そう信じそうになっていた事を不意に気付かされ、照れ隠しの笑みが浮かぶ。軽く曲げたまま痺れた掌の中を、ひらひらと舐めるようにゆらぎ、すり抜けていくシルクのスカーフをただ眺めているような無力感。  スクリーンを通じてそうした記憶を増幅できる人であれば、淡すぎて色すらつかない場面の中に、自分だけの隠れた色彩を見つけることができるはずだ。 そして、体に馴染むこの淡さ加減を 書かずにいられなかったという事になる。 *** 補足 *** + The Interpreter

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