★青いソラ白い雲(2011年・日 3月31日公開予定)
平成「ガメラ」シリーズや「デスノート」シリーズで知られる金子修介監督が、3.11後の東京を舞台に描いたライトコメディ。3.11後の東京に帰国してきたプチセレブのお嬢様が体験する出来事を、さらりと描いている。3.11を意識した映画は、ドキュメンタリーを含め何本か見ているが、当方にとっては、これが一番しっくりくる作品だった。東京で3.11を経験した人間の感情に最も近い作品ではないかと思う。確かに登場人物もエピソードもセリフも、ことごとく表面的だ。しかし、その表面的なところが、3.11後の東京を端的に表している(もともと東京はそういう街なのだが、3.11以後、ますます表面的になった)。と同時に、震災と原発事故を身近に感じながら「被災」という言葉を発しにくい不自由さをも、本作は表現してくれている。3.11当日、情報が寸断され、帰宅困難者になって歩き続けた人々は、帰宅して東北の被害のすさまじさを知り、「被災」という言葉を胸の奥にしまわざるを得なくなった。続いて起きた原発事故にいたっては、それが自分たちの使う電気を送り出す発電所だったために、加害者としての後ろめたさを感じてしまった。昨春、そんな東京人にできたことは何だったのか。とにかく、自分たちだけは元気を出すこと。それがどんなに空しいことであってもいい。やけくそでも前を向く。この映画は、そんな心情を表現してくれた。その意味で、震災・原発事故映画として、より多くの人に見てほしいと思う。
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