2007/03/10(土)14:57
船乗りのユメ:アルフレッド・ウォリス展
高知--東京間の飛行機の搭乗時間までに微妙に間が空くため、寸時を惜しんで美術館めぐりをこころ見た。 まず、初日は、東京都庭園美術館の「アルフレッド・ウォリス」展。 http://www.teien-art-museum.ne.jp/ 庭園美術館は、旧朝香宮邸を東京都が美術館として使用している、全館アール・デコの意匠に包まれた歴史的建造物で、これ単体を見るだけでも価値のある館。 正面玄関を入って、すぐに迎えてくれるのが、ルネ・ラリックの手になる板ガラスの女神たちの群像。その他、全室がアール・デコの気品溢れるインテリアで飾られていて、ひと時優雅な時間を過ごすことができる。 しかし、今回は、11時30分までに羽田にいかなければならず、涙を呑んでウォリスの絵に集中して、観覧する。 アルフレッド・ウォリスは、長く船員や船具店をしていて、海と深くかかわって生きたと人。この人が70歳になって初めて絵筆を取り、「記憶の中でかってあった姿で、何もかも変わってしまった今では、もう二度とそれを見ることのできない」風景を描き出したのだ。 http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/wallis/index.html その作品は、オーソドックスな絵画理論を学んだ人から見れば、デッサンや遠近法といった規範からは逸脱したものとしか見えないのかもしれないが、彼の記憶の中にある情景を、生き生きと描き出し、決して裕福とはいえない彼の生活が、しかし普遍性を持って、「夢見る力」の大切さをわれわれに訴えてくる。 独学で絵画を学び、ピカソに見出された画家にアンリ・ルソーが居て、このイギリスでの相方ともいうべき画家が、彼、ウォリスであるという。 庶民の生きていく力の力強さをカンジさせてくれる展覧会であった。20分で駆け抜けなければならず、非常に心残りの多い観覧の仕方であったが、それでも尚、心に多くのことを残してくれた、すばらしい展覧会であった。