2008/01/09(水)22:48
桜花と鳩の宴:眞葛香山展(3)
今回の展示品の中で、一番心を惹かれたのが これ ↓ 高浮彫桜に群鳩花瓶一対高さは7,80cmもあろうか、豪華な一対の花瓶である。花や鳩の細工の精緻を極めていること、驚くばかりである。 香山は、明治21年家督を息子の半之助に譲り、新しい釉薬の研究に没頭し、大正5年、75歳で死去した。半之助は二代香山、その息子の葛之助は三代香山を名乗り、跡を継いだが昭和20年の横浜大空襲で、三代香山とともに窯場も消失してしまい眞葛焼きの命脈は絶えてしまったという。作品の大部分が海外に売られていったことも影響し「眞葛焼き」「眞葛香山」の名は、いつしか忘れ去られ、「幻の陶器」の名のみ残った。ここに、運命の邂逅が起こる。由比町出身の田邊哲人氏が、横浜に居を定めたのである。奇しくもそれは、香山の窯場の近くであった。昔ここに「眞葛焼き」という窯場があり、沢山の綺麗な作品を作り出していたしかし、その製品はほとんどが海外に流失し、残っている物は少ないため「幻の窯」となっている、ということを聞いた田邊氏はどうかして手に入れたいと願い、やっと入手したその作品の美しさに打たれた氏は、海外のオークションや友人たちの人脈からの情報をつてに以後40年にわたる眞葛香山の作品の収集を始めるのである。この邂逅なくしては、眞葛香山の名は、幻のままに終わったであろうそう思うに連れ運命の不思議さと、田邊氏の情熱に、深く敬意を表するとともにできうるなら、このコレクションを公共の場で常設的に展示できる場を設けていただきたいと、切に願うものである。