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南カリフォルニアの青い空

2019.10.07
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 息子が高校生の頃、夏休みに近所のピザ屋でアルバイトをしていた。多くの従業員がメキシカンだったのでその内のカーロスというバイリンガルの子と仲良くなり、初めての給料をもらったとき息子の車で三人でティファナに行こう、と言うことになった。白人一人、メキシカン一人とミックスの息子の三人である。前夫は大のメキシコ嫌いで、不潔だし危険だから行くなととめたが、男三人であること、カーロスはスペイン語が母国語であることでまあ、大丈夫だろうと思ったのだろう、しぶしぶオッケイした。

 ところが、「警官に有り金全部ひったくられた!」と憤慨して帰宅したのだった。今でもメインの道をそれると、ガタガタ道で、細い道の両側から木の枝が垂れ下がってストップサインなど見えない場所が沢山ある。アメリカなら、それでも道にも大きな文字でストップと書いてあるが、当時のティファナはそんなものもなかったから、息子はストップサインでストップしなかったのだ。そこに警官が隠れていて掴まったわけである。

「どこにストップサインがあるのですか」とカーロスが聞いたら、
「ここだよ!」とポリスが垂れ下がった枝を持ち上げたのだそうだ。つまり、荒稼ぎをするためにわざと枝をきらなかったのだ。

今、その息子は48歳になってるから30年前の話である。そのころは、メキシコの経済はかなり悪かったからスリ、たかり、ゆすり、恐喝などざらにあった。その経験から、旅するときお金はあちこちにバラバラに隠す事を覚えた。でも、この20年に可なり良くなっていったと思ったのだが。。。

 話かわって

グレッグと一緒になってもう23年になるから可なり前の話になるが、巡り合って早々にティファナに連れてってくれた。ある路地にきたとき、
「昔ここで後ろから鉄のパイプで頭を殴られ気を失って、気が付いたら血だらけになって財布ごと盗まれていたことがある」と言ったので、何故そんな所に来たがるのだろうと思っていた。彼は絵描きで、社会問題を題材にし、そういう場所にたむろする人々を描くからであった。

 その内にひょんなことからグレッグの個展をティファナの市民会館でやることになって、そこから美術学校からも個展を頼まれ、次々と美術館やカルチャーセンターで個展をやる事になった。最初から、アメリカの画家の展覧会だといって、新聞社が大々的にとりあげ、行く先々で新聞にのり、ラジオやテレビのインタビューもあって、ある日Palacio Municipal と言って、ティファナの市役所で大きな個展をやることになった。

市役所といっても、いわゆる県庁みたいな町で一番大きくて立派な建物で、その中に議員室あり、警視庁あり、郵政省あり、ソーシャル・セキュリティーの事務所ありで兎に角街のお偉いさんたちの集まる場所であった。その真ん中に室内広場があり、そこで展覧会をすることになったから、テープを切る開会式にテレビ局も三局、いくつかの新聞社がきて、市長があいさつ、次に警視長官があいさつ、そしてグレッグがスピーチをすることになった。その時、市長や警視長官が「困った事があったら、ここに電話しなさい」といって、私とグレッグに名詞をくれたのだ。

 街中をあるくと、「あんたをテレビニュースで見た」とかいうひともいた時代であったが、そのころ、先にのべた路地の辺で私はグレッグの画題になりそうな写真をとっていた。シャッターを切った時に、後ろから警官が呼び止め、「今、俺の写真をとった」というので、
「グアダルペの教会を写していた」といっても聞かず、派出所まで連行されたのだった。

その時代は、まだ、特にツーリストを恐喝して金を巻き上げる警官は大勢いて、派出所までつれていかれると十数人のポリスがいるから、かなりいちゃもんをつけられても、誰も文句を言わずにだまってお金をだすらしい。グレッグは、恐ろしい顔して「だまっていろよ。口答えするなよ」といったが、悪い事してないのに、お金を取られるのは悔しくてならない。

そのころは、デジカメでなくフィルムのカメラだったから、まず、警官のボスが、そのカメラを手にとってながめ、フィルムを抜き取った。私のスペイン語はツーリスト用語くらいだが、簡単なフランス語がわかるので何となくわかる。
「禁止区域で写真をとると、大変な罰金だとしってるか」と言った・・・・と思う。すかさず私は、

「ロシエント(すいません)ミ・エスポソ・エス・アルティスタ(夫は絵描きです)」というと、
「余計なこというなと言っただろう!」とグレッグの目が怒鳴っていた。
「アイ・エクスポジション・ア・パラシオミニシパル(市役所で展覧会やってます)」といって警視長官の名刺をみせ
「エス・ポッシーブレ・テレフォノ・ミ・アミーゴ?(私の友達に電話できるでしょうか)」といったつもりだった。携帯の無い時代である。

その警官のボスは、その名刺を何度もひっくり返したり読み返したり、その名刺でトントンと机をたたいて3分くらい部下たちを眺めてどうしようかと考えていたようだが、その名刺を私に返しながら、英語で、
「Okay, Go! No photo next time」と言った。長い3分だった。

何年か経って、ドラッグ・カーテルがのさばりだし、ツーリストが途絶えたころグレッグはまた一人でティファナにいった。夕方までには戻るはずなのに、零時すぎても戻ってこず、やっと朝の4時頃もどってきた時はほっとした。

「昼頃、税関の列に並んでいたから、3時には帰宅できるなとおもっていたんだけどね、急にドラッグ・カーテルと軍隊の撃ち合いが始まって交通止めにはなるし、人々は逃げ回るし、ポリスが皆隠れろとメガフォンで叫んで、戦争みたいになったんだよ」と、ひょうひょうとした顔で言ったのだ。

それでも、グレッグはティファナに行き続けるだろう。私は、そういう男と暮らしている。








最終更新日  2019.10.07 14:15:46
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