第30回中津江ミュージックフェスティバルの大物アーティストは加川良のほか、大塚まさじと中川五郎であった。
大塚まさじといえば、「ザ・ディランII」時代の超有名な楽曲「プカプカ」がある。
本家の彼の独特の歌い回しにファーマータナカ、又しても涙か?

(「プカプカ」等を歌う大塚まさじ)
「プカプカ」 作詞・作曲 象狂象
俺のあん娘は たばこが好きで
いつも プカプカプ~カ
体に悪いから やめなって言っても
いつも プカプカプ~カ
遠い空から 降ってくるっていう
幸せってやつが あたいにわかるまで
あたい たばこをやめないわ
プカプカプカプカプ~カ
俺のあん娘は スウィングが好きで
いつも ドゥビドゥビドゥ~
下手くそな歌は やめなって言っても
いつも ドゥビドゥビドゥ~
あんたがあたいの どうでもいい歌を
涙流して わかってくれるまで
あたい スウィングやめないわ
ドゥビドゥビドゥビドゥビドゥ~
俺のあん娘は 男が好きで
いつも HuHuHuHuHuHu~
オイラのことなんか ほったらかしで
いつも HuHuHuHuHuHu~
あんたがあたいの 寝た男たちと
夜が明けるまで お酒飲めるまで
あたい 男やめないわ
HuHuHuHuHuHuHuHuHuHu~
俺のあん娘は 占いが好きで
トランプ スタスタスタ~
よしなって言うのに オイラを占う
オイラ 明日死ぬそうな
あたいの占いが ピタリとあたるまで
あんたとあたいの 死ねる時がわかるまで
あたい 占いやめないわ
トランプ スタスタスタ~
象狂象とは西岡恭蔵のペンネーム。西岡恭蔵の愛称はゾウさん。
それにしても特に男どもが一度ならず歌いたがる名曲だ。
桑田佳祐、大槻ケンジ、つじあやの、福山雅治、奥田民生、原田芳雄、桃井かおり、泉谷しげる他たくさんのアーティストがカヴァーしていることからも詞曲共支持が厚いのがよくわかる。
何故こうまでも共感を呼ぶのか。
副題に「ミナミの不演不唱」とある。
「不演不唱」はブルースと読ませる。そうこれはフォークではなくブルースなのだ。
「ミナミ」とはジャズシンガー「安田南」さんのことだという説が有力だ。

いかにもという感じの女性だ。
フラッパー(死語か!!)女性というか、だけどその不思議な魅力に男どもはついつい惹かれてしまうのだ。
1943年生まれで缶ピース100本吸うチェーン・スモーカー。
煙草、ジャズ、男、お酒、占い、演劇と怒涛の如くたたみかけて、そして本当に現在消息不明とか。
普通の男女関係とは違う関係、それもまたよし、しかし男としては立場として上位でありたい、いやせめて対等でありたいと背伸びするが、そのじゃじゃ馬ぶりや、「あんたがあたいの寝た男たちと夜が明けるまでお酒飲めるまで」との啖呵に、虚勢を張るしか手立てはない。
実体験がある数少ない男も、あるいは無い多くの男も妙に憧れてしまう不思議な情念がこの曲、そして安田南の魅力なのだ。
東京の貧乏学生であったファーマータナカは、法律、政治、思想、学生運動、音楽、映画、演劇、本、酒、ギャンブル、ビリヤード、アルバイト、煙草、ファッションそして男女関係と、全てが中途半端な閉塞感と焦燥感の中で、声にならない呻き声をあげていた。
そこに「プカプカ」は流れていたのであった。
「プカプカ」は昔も今も男の、そしてファーマータナカの琴線を振るわせる。
それにしても40年近くも中途半端と貧乏だけは不変というのはどういうわけだ・・・。
追記:西岡恭蔵はクロちゃん(奥様)の三回忌の前日である99年4月3日に自ら死を選んだ。
享年50歳。
25年間を共に過ごした人生の同伴者を失った西岡恭蔵は、「愛は生きること」と歌っていたけれど「そう言うけど"僕は生きたくない"という方が強いから、歌っていて矛盾するからつらい」と語っていたそうだ。