11月22日(日)第5回上津江産業文化祭が開かれた。
日田市上津江町のふるさとまつり「上津江産業文化祭」が22日、同所の上津江振興局前広場などであった。
あいにくの雨だったが、住民らが集いにぎわった。
地元農産物が並び、品評会やせりによる即売会などがあった。
「上津江うまい米コンクール」最優秀賞の早川照夫さん(町内若林)の米のおにぎりも振る舞われた。
イノシシ肉をアレンジした「猪(しし)バーガー」=食彩工房森林木(もりのき)=や、シイタケたっぷりの「しいたけのステーキ丼」=いこいの館、揚げたてかき揚げがのったうどん、手打ちそば、ジャンボいなりなど地元の団体やグループの手作り料理や加工品がずらり。
体育館では上津江小学校児童の太鼓や、津江中学校音楽部の演奏、プロ演歌歌手のコンサートなども。
似顔絵サービスや、風船パフォーマンスも来場者を楽しませた。
(大分合同新聞 2009年11月23日 転掲)

超高齢化社会の上津江には珍しく美人(?)が写っているようだが、よく見るとうちの会長(愚妻)ではないか。
大分合同新聞さんも、余程被写体に困ったのだろうと想像できる。
田舎に来てよく思うことは、過疎化で活力が無くなったとよく言われるが、こういうイベント、いわば「ハレ」の日の圧倒的パワー(高齢者が多い)は目を瞠るものがあるという事だ。
なにしろ来場者よりも、出店者(一部の業者さんを除き、ほとんどが上津江住民だ)の方が多いのではと感じる程で、例えば昼食は一人当たり5食分位食べないと準備した数量が消化できないのではと思えるのだが、それでも殆ど完売の様子は摩訶不思議という他はない。
ここで、ついでに「ハレ」と「ケ」について見ておこう。
「ハレ」と「ケ」は共に、日本を代表する民俗学者・柳田國男(明治8年~昭和37年)によって唱えられた、日本人の生活リズムを表現した言葉で、時間論をともなう日本人の伝統的な世界観だ。
漢字で書く場合ハレには「晴」、ケには「褻」の字が当てられる。
柳田は、かつての日本人の生活にはハレとケの二つの時期があり、両者ははっきりと区別されていたとし、「ハレ」とは、神社の祭礼や寺院の法会、正月・節句・お盆といった年中行事、初宮参り・七五三・冠婚葬祭といった人生儀礼など、非日常的な行事が行われる時間や空間を指し、そしてハレ以外の日常生活(普段の労働や休息の時間・空間)が「ケ」であるとして、両者の違いを明確にし、このハレとケとの循環リズムから日本の生活文化が分析できると唱えた。
兼業農家が多くなり、又社会情勢の変化により、その世界観の維持も相当困難な情勢になっているが、それでも田舎にはまだ日常から解き放たれる「ハレ」の日のパワーは色濃く残っていたのだった。
非日常であるハレの日は、単調になりがちな生活に変化とケジメをつける日でもあり、この日には人々の衣食住に大きな変化が表れ、例えば特別な日にのみ着用される「晴れ着」を着たり、家や部屋には普段とは違う装飾を施したり、酒・米・魚・餅・団子・赤飯・肉・寿司といった普段の生活では口にする事のない食物が供せられるなどし、非日常的な世界が設定された。
中でも、ハレの場における酒は、味を楽しむためというよりも、酔う事によって異常心理を経験し、共同体を構成する人々が集団で共に酔って連帯感を深める事が目的であったと柳田は述べている。
今でも使われる「晴れ着」「晴れ姿」「晴れ舞台」などの言葉は、いずれもハレの概念に基くものだ。
一方、ケの時空とは、普段の生活そのものを指し、朝起きて食事をして昼間は働いて夜になったら休眠する、という日常の状態の事であるという。
柳田は、このハレとケの循環の中に稲作を基礎とする民族生活があった事を指摘しながら、近代化と共にその両者の区別が曖昧になってきている事を指摘している。
事実、江戸時代後半以降は普段でも酒が飲まれるようになり、魚食や肉食も日常化し、人々の服装も色鮮やかになっていくなど、ハレの日常化は着実に進んでいたとしている。
仕事柄もあって、15年間お酒を常飲していた(今は週1回の飲酒となったファーマータナカはまるで仏様のようだが、内情は経済的事情に負う所が多い)が、飲酒とはまさしくハレであり、特別だった訳だ。
1970年代に入ると、多分に構造主義の影響を受けて、「ハレとケ」の関係に新たに「ケガレ」という概念を加味するべきではないかということ等の議論が起こる。
日常生活を営むためのケのエネルギーが枯渇するのが「ケガレ(褻・枯れ)」であるが、この3つは相互間が対立概念であるとの主張や、それに対して対立ではなく循環論だとする立場等様々な論争がある。
ハレ・ケ・ケガレに関する代表的な論争としては、葬式はハレなのかケガレなのか、という論争があり、読者の方々も一度考えて見られたらおもしろいのではなかろうか。
一般論はさておき、延々と続く悲惨な日常、「ケ」状態のみのファーマータナカに必要なのは、正しく「ハレ」の日であることだけは間違いない。